イイネ

「ただ、SNSで『イイネ』が欲しかったんです。


 最初は頑張ってバイトして、

 可愛いお洋服やネイルの写真を上げて、


『可愛いね』

『ステキー❤️』


 って言われてたんですよ。

 構図とか、光の当て方とかも研究したから、

 すっごく盛れる写真が撮れてたと思います。


 でも、フォロワーそんなに増えないし、

 イイネも頑張って3桁って感じで。


 SNS疲れるなーなんて思ってたんですけど、

 ある日、バイト終わって帰る途中、近所のお家が燃えてたんです。

 火がすっごくて、赤とオレンジがメラメラ燃え上がってて、

 夜なのに辺りはすごい明るかった。


 気付いたら写真撮ってSNSに上げてたんです。


 そしたら、なんかすっごいイイネとかコメント来ちゃって。

 3桁やっとがあっという間に4桁とかになったです。

 フォロワーがめっちゃいるアカウントからもコメントきてて、

 すごくビックリしました。


 こんな簡単なことだったんだなーって。


 それからバイト辞めて、空いた時間は街中ウロウロしてたんです。

 なんか事件起きないかなって。

 でも、そうそう火事とか事故とか、起きないんですね。


 だから──うん。


 なんかホント、馬鹿ですよね、私」


 連続放火犯として逮捕された彼女は、そう言いながら寂しそうに笑った。

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