第5話 ハーレムはできちゃうもんでは無いと思う
桂木が要件は終わったと言わんばかりに解散しようとするのだが、俺はまだ全然状況をつかめていないため引き留める。
「じゃあ悟、うっかりハーレム作んないように頑張んなよー」
「待ってくれ、まだわからん事だらけなんだ。そんでハーレムってうっかりできるもんじゃないだろ」
「それがね新田君、由美ちゃんが言うにはそうじゃないみたいなの」
「え、どういう意味だ?」
桂木はそれがさー、ととある話を始めた。
「気をつけてってのはホントの話だよー。あたしの友達の男子がさー、最初は一人の女子と付き合ってたんだけど……たったの一週間で三人になってたらしいんよー、ウケるわー」
「新手の怪談か?」
「しかもその男子はね、最初はハーレム反対派だったんよー。なのにちょっと合わない間にゴリゴリの賛成派になっちゃってたんだー……」
「洗脳されてんじゃん怖すぎるだろ……」
話の内容は、元々ハーレムを拒んでいた男がたったの一週間で懐柔されたという恐ろしいものだった。どうしてそうなったのかは当人以外誰も知らず、当人もこれまでハーレムを拒否していた事をすっかり忘れているらしい。記憶改竄とかそういうレベルだった。
「うぅ……怖いよ……」
「わかるぞ椎名さん、俺も今鳥肌立ってる。下手な怪談より怖いぞこの話」
震える彼女の両肩を掴んで、安心させるための言葉を投げ掛ける。
「椎名さん、安心してくれ。俺はハーレムなんて絶対にしないから」
「ほ、本当?」
「ああ」
俺はハーレムについては否定的である。お互いが好き合っているという事自体は否定はしない。しかしこの世界に一夫多妻制なんて法律は無いので、最終的な結婚相手は必ず一人に絞られる。そして愛人という言葉はあまり肯定的に捕らえられているわけでもない。
つまり、ハーレムなんていう関係性はいつか終わりを迎える運命なのである。生涯一切の困難なく全員を愛し続けるなんて事は夢物語というわけだ。結果的に誰かが不幸になる上、一時的な幸せを求めるなんてのは俺には考えられない生き方だと思う。よって、俺がハーレムと関わる事は決してない。
「あー、例のハーレム賛成派になっちゃったあいつも同じこと言ってたわー」
「え……」
「止めろ不吉な事を言うんじゃない」
俺の決意に水を差されてしまった。椎名さんの表情がまた曇ってしまった事に腹が立つが、そんな俺の心境をよそに桂木は言う。
「ねー悟さー、ハーレムって主導権が男にあると思ってない?」
「え、違うのか?」
「ハーレムってのはね、女達が始めた戦いなわけよ! 他の女を牽制しつつ、自分が独占するために色々と仕掛けていく争奪戦なんだし! そこに男の意見なんかミリも入ってないから!」
「えぇ……」
衝撃の事実、ハーレムに男の意思は加味されていなかった。全部がそうな訳ではないと思うが、確かに働きかけているのは女側だったかもしれない。
「だから悟がどう頑張ろうがここではハーレムになっちゃう恐れがあるってことよ」
「なんだよそりゃ……。俺は一体どうすれば」
「だ、大丈夫! 私にいい考えがあるの!」
「椎名さん? いい考えってどんな?」
椎名さんは次の言葉がなかなか出てこずに暫くモジモジし始める。桂木がほら唯頑張れ、と背中を押すと、意を決してとんでもない一言が発せられた。
「わ、わ、……私に一途になればいいんだよっ!」
「…………へ!?」
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