第56話 3分クッキング





 俺達を迎えに来たアゲハは休んでいた俺に向かって猛スピードで来た。


「シウくぅぅぅん!!お姉さんが迎えに来たぞぉぉぉ!!!」

「変なのが来たぁぁぁ!!!本当に変なのが来たぁぁぁ!!!」


 走ってくるアゲハを見て俺は絶叫を上げていた。

 だって...アゲハさんの着ている服は何故かセーラー服だったんだもん。


「なんでセーラー服なんだよ!しかも髪をおさげにしてメガネまでしてるし!ガチなやつやんけ!」

「シウ先輩!探しましたよ!」

「いきなり役に入ったよこの人!しかも俺が先輩って設定かよ!無理があるだろうよ!」

「うーん…すごくいい設定だと思ったのになぁ…なんでダメだったんだろ…シウくんは後輩キャラの私より先輩キャラの私の方が好きなの?」

「どっちも興味ないわ!!」


 キュリアと姫が周りのモンスターを駆逐し終わると漫才をしている俺とアゲハさんの元にやってきた。


「マスター、どうしたのです?あれ?アゲハさんがいるのです!」(誰なのじゃ?)

「きゃーーー!キュリアちゅゅゅわーーーん!!会いたかったよぉぉぉ!!後でいっぱいコスプr…お着替えしようね?」

「そんなことより!アゲハさんはなんで俺たちを迎えに来たんです?ユーキングからメールが来たけど」


 キュリアに抱きつきながらアゲハは答える。その間、姫は興味が無いのか、香箱座りをして目を閉じ眠ろうとしていた。


「ん?キングがこっちにシウくんが向かってるって聞いたから来ただけよ?」

「は?それだけ?」

「うん、それだけ」

「どんだけ行動力あるねん…それより休憩をそろそろ終わらせてボスがいる橋まで行きたいんだけど…キュリアを離してもらってもいいかな?」


 キュリアを渋々離すとアゲハは俺に


「それなら最速であの巨大キノコを倒してきてね?先に行って待ってるからね?3分待つからそれまでに来るよーに!」


 アゲハさんはそう言うとまた走り出し、聖都の方へ向かっていった。


「まじであの人なんだよ…キャラがわかんねーよ…」

「マスター…諦めが肝心なのです…アゲハさんはもう…末期なのです...」


 キュリアは諦めた表情をしながら首を横に振る。


(ん?もう行くのかぇ?もっと寝ていたかったのじゃ…ふぁ〜)

「ほれ起きろ、にゃんころ。この先にボスがいるんだから頑張れよ」

(にゃんころ違うのじゃ!神々しい猫の姫様なのじゃ!!)

「はっ…ぐーたら姫なのです!そのうちお腹タプタプおデブ姫に進化するのです!!」

(羽ちみっ子は進化しても絶壁のままなのじゃーーー!!)

「何を言うのです!貧乳はステータs「もうそろそろいいかな?!君たちの言い争いはもうお腹いっぱいなんですけど?!」」


 俺は1人と1匹の会話を遮り、ボスが待つ橋まで歩き出した。

 歩いていると川を見つけた俺達。

その川には1本の赤い橋が掛かっていた。


「さーてと、さっさとボスを倒さないとアゲハさんに文句言われてしまうぞ」

「さくっと終わらせるのです!」(いくのじゃ!)


 橋にある程度近づくと戦闘確認が現れ、俺はYESをタップする。

 ボスエリアは橋の上ではなく橋の手前だったのだ。

 橋の手前に2m程のキノコが突然生えてきた。そのキノコの傘は紫、柄は赤という不思議な色合いであった。


 炎毒茸 Lv30


「気持ち悪いキノコだな…名前に炎と毒が入ってるって事は炎属性持ちの毒攻撃してくるんかの?」

「あのキノコは動くのです?」

(不味そうな色なのじゃ…食欲なくすのじゃ…)

「とりあえず…攻撃してみますかね!魔力を込めたパワーショット!」


 魔力の矢を作りパワーショットを打ち込む。炎毒茸に当たると茸は弾け飛んだけど...


「え?まさかの終わり?」


 すると、弾け飛んだ先から赤ん坊程の大きさの炎毒茸が生え始めた。その茸達は足が着いておりこちらに向かって走り出してきた。


「きも?!何こいつら?!キノコベビーなの?!きんもっ!」

「空に退避ですのぉぉぉぉ!!」(ひぃぃ!!気持ち悪いのじゃぁぁぁぁ!!)


 キュリアは光の翼で空に飛び立ち羽で攻撃をしかけ、姫は魔爪でキノコベビーを攻撃する。

 攻撃を受けたキノコベビーは動きを止め紫の炎を上げて光になって行った。


「何こいつら…自爆系の攻撃かよ…1度でも攻撃受けたら炎を出して自爆かよ…てか姫は!あいつめっちゃ近距離?!」


 魔爪でキノコを切り裂くと姫は紫の炎に焼かれる。


(熱いのじゃ!妾の綺麗な毛が燃えるのじゃぁぁぁ!!そして苦しいのじゃぁぁ!!)


 姫は見事にキノコベビーの自爆攻撃を受けダメージをくらう。さらに毒の状態異常まで受けてしまった。


「燃え猫…毛がチリチリになってやがる…ぶっ!」

「チリ毛の猫なのです…アフロ猫...ぷぷっ…」

(2人して笑うなぁぁぁ!!主は早く妾の毒を治すのじゃ!)


 俺は笑いながら毒消しを姫に飲ませる。

 毒が治った姫はその場で固有スキルの地響きを使いキノコベビーの動きを止めた。

(さっさと蹴散らすのじゃ!妾は近距離でしか攻撃方法が無いのじゃ!だから!早く!笑ってないで倒すのじゃぁぁぁぁ!!)


 俺とキュリアは遠距離から攻撃を仕掛け全てのキノコベビーを消していく。


「こんな楽勝でいいのか?てか全部倒したけどなにも起きない?」

「おかしいのです…」(まだ残っておるのかえ?)


 すると炎毒茸の生えていた場所から再度、炎毒茸が生えてきたのだ。


「え?何こいつ、まさかの無限ループですか?またこれ攻撃したら自爆茸を量産することになるよね?」

「そうなるのです!だから無闇に攻撃出来ないのです!」(もうあの炎は嫌なのじゃ!)


 俺達は少しばかしその場でどう攻撃すれば良いのか考えていた。

 炎毒茸は動くことなくその場で静かに佇んでいる。

 すると姫が提案をしてきた。


(主?氷炎魔法はどうなのじゃ?焼きキノコにしてやったら倒せるのではないのか?)

「マスター!私まだその魔法見てないのです!なんで駄猫だけ見てるのです!!ずるいのですぅぅぅ!!」

「だってキュリアは北のボス戦の時…1人で暴れてましたやん…俺たちを置いてけぼりにしてな!まぁやってみるか、でも最初に氷で攻撃したらまた爆散するんじゃね?なら炎が最初に来そうな氷炎魔法を…これかな?炎蛇氷解!」


 炎毒茸の周りに小さな火の玉が現れ、火の玉は形を変えていき蛇の姿に変わった。

 数十匹の炎を蛇達は炎毒茸に巻き付き始め全ての蛇が取り付いた時、1本の炎の柱が吹き上げる。

 すると今度は炎の周りに氷の結晶が生まれ始め炎と炎毒茸を瞬く間に氷の塊にしてしまう。

 氷の塊に亀裂が入りだし、氷の塊は爆音と共に粉々になっていった。氷が無くなると同時に炎は1匹の巨大な蛇と変わる。その蛇の瞳は赤と青になっていた。

 蛇は口を開け、炎毒茸を丸呑みにする。飲み込んだ瞬間に蛇は再び赤と青の炎に変わり炎毒茸を燃やし尽くした。

 炎毒茸は爆散することなく光となっていった。


『エリアボスを討伐しました。初回討伐ボーナスを獲得しました』


「MPゴリゴリ削られたんですけど…でも無事に倒せましたな!良かった良かった!」

「……蛇怖いのです…丸呑み…怖いのです…」(その蛇をうっとりとして見てる主も怖かったのじゃ…)


 俺は炎毒茸を倒せて満足しており橋を優雅に渡り出す。

 橋を渡りきるとアゲハが待っていた。


「シウくん達はあのキノコについて事前に調べてた?」


 俺達を見るやいなやアゲハはそんなことを聞いてきたのだ。


「え?ボスが居るってことしか掲示板では確認してないですけど?どんなモンスターかは調べてませんでしたよ?」

「それならよく初見で倒せたわね…知らずに攻撃したら自爆茸達にやられるはずなのに…」

「姫が危なかったですけどね!毛がチリチリになってるし…ぶっふぉ!」


 俺、キュリア、アゲハは姫のチリチリになった尻尾を見て笑いながら聖都に向けて歩いていた。




(後で綺麗にするのじゃぁぁぁ!!!主にブラッシングしてもらうのじゃぁぁぁぁ!!!)







 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△



 正しい炎毒茸の倒し方講座


 ①ドライゼンの道具屋にある茸枯らし薬を買います。

 ②炎毒茸が生えている地面に購入した茸枯らし薬を撒きます。

 ③薬の効果が現れ始めると、炎毒茸の柄の根元が白く変わります。

 ④柄が完全に白くなったら攻撃をしても大丈夫です。自爆茸にはなりません。その代わり、炎毒茸が炎と毒を撒き散らしてきます。

 ⑤ひたすら攻撃して下さい。フルボッコして下さい。


 これで炎毒茸は倒せます。以上!

 ※因みに、柄が完全に白くなって根元を綺麗にすれば炎毒茸を採取する事も可能。失敗してしまうと炎を食らっちまうぞ☆


 Byユーキング


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