7.ついに儀式の日
今日は朝から街の中が賑わっている。それはもちろん儀式の日だからだ。魔法の花火が打ち上がり、魔法で花を浮かび上がらせ花吹雪に。そこら中から音楽も聞こえてくる。街全体で今日儀式を受ける子達をお祝いしているんだ。
「さぁ、準備できたわよ。可愛く仕上がったわ」
「本当だな。うちの子は世界1可愛いな!!」
いつもよりちょっと良い洋服を着た僕。パパとママの言葉にちょっと照れてしまう。
「無事に5歳まで育ってくれて、とても嬉しい」
「そうだな。そしてこれからもまだまだ、すくすくと育ってもらわないとな」
2人が嬉しそうに僕をそれぞれ抱きしめてきて。今の今まで恥ずかしかった気持ちが、今度は嬉しさでいっぱいになった。
いくら街の中で過ごしてきたとはいえ、やっぱり以前魔獣が街を襲ってきたみたいに、魔獣による死亡数が多いこの世界。小さい子の被害も多くて。だから5歳の儀式は、無事にここまで育つ事ができたっていうお祝いでもあるんだ。
僕はパパとママにしっかりと抱きついて、心の中でお礼を言った。ここまで俺に不自由なく育ててくれて、守ってくれてありがとうって。
そしてこれからも、パパとママの手伝いをするよ。さすがに体力面はまだ5歳だから、あんまり重労働はできないけどさ。
そのお手伝いも、授かる力によっては、もっとお手伝いできるようになるかもしれないし。ただ魔法は、訓練が必要だから、もし良い力を授かったとしても、少し待たせる事にはなると思うけどね。それでも将来的にはパパ達をしっかり手伝えるように頑張る!!
と、お礼とこれからのことを考えていると、外からサムソンさんの声が。あと僕を呼ぶカロリーナの大きな声と、それを叱るマーシアさんの声も聞こえた。
「お~い、そろそろ教会へ行くぞ!」
「アーベル!! はやくいこ!! それでおかしみよ!!」
「カロリーナ!! 今日はお菓子が目的じゃないのよ! それに今日はいつもよりも、もう少し大人しくしていて」
「今行く!! さぁ、2人共出かけよう。そうして帰ってきたら、今日はみんなでご馳走を食べよう!!」
玄関のドアを開けると、僕のパパとママもそうだけど、僕達みたいにいつもよりもちょっと、良い洋服を着たカロリーナ家族が、あ~だこうだ言いながら立っていた。
うん。今日のカロリーナは可愛い。いつもズボンで走り回っているカロリーナも可愛いけど、今日のカロリーナはもっと可愛い。頭の花冠も可愛い。
でも……。所々着崩れしているところが。いつものように元気いっぱいにはしゃいでいて、僕の家に来るまでに、着崩れたんだろう。
「カロリーナ、おはよ!」
「おはよ!! あのね、きょうは、とくべつなクッキーがたべられるし、ほかのおかしもいっぱいだから、いそいでいかなくちゃ!!」
「だからカロリーナ、今日はお菓子よりも儀式が大切なのよ」
そうそう。今日は儀式が大事なんだからね。カロリーナも火魔法が強くなりたいって言ってたんだから。授かれないかもしれいけど、とりあえず今は神様にお願いしておいた方が良いよ。
こうしてあれこれ言いながらも、僕達家族とカロリーナ家族で、教会へ向かって出発。教会までは僕達小さい子が普通に歩いて25分。お店が集まっている地区に来ると、僕達が住んでいる場所よりも、更に盛り上がっていて。
お祝いの品を売っているお店に、大道芸をして盛り上げている人達。僕達が住んでいる場所にまで聞こえていた、音楽を奏でている人達で、凄いことのなっていた。
この光景を見て毎年思うこと。もちろん家族は自分の子供が5歳を迎えられて嬉しいだろうけど、他の人はただただお祭り気分を味わいたいんじゃないかって。現に酒場からは朝なのに、酔っ払いの声が聞こえてるしね。
と、それはまぁ、良いとして。僕達は儀式の後に、お店通りを楽しむことになっている。今日は特別な日。僕達5歳を迎えた子は、5つまでなら無料で好きなお菓子がもらえるんだ。
それ用の籠に入れてもらうんだけど。1つ量が半端なくて。クッキー1枚とかじゃないんだ。大袋に色々なお菓子が入っている詰め合わせで1つなんだ。それが5つまで貰えるんだから、何日分のおやつになることか。
それにお店の人が、今日のお菓子はいつもよりも特別な物を作ってくれるから。普段食べるお菓子よりも、とっても美味しいんだよ。なんで5歳の子が貰える特別なお菓子の味を知っているか。
それは余ったお菓子を、お店の人が小さい子のいつも配ってくれるから。それこそクッキー1枚や飴1個だけど。そんなに量は作らないから。でもそれを貰える僕達は、自分達の儀式の日じゃなくても、結構楽しみにしている。
そしてそれだけ美味しいお菓子を、今日はいっぱい貰えるから。だからカロリーナはそれが楽しみで仕方がなくて、さっきからお菓子お菓子って。
「はぁ、儀式の最中に、いつもみたいに騒がないかしら。もう、心配で心配で。儀式の最中は一緒についていられないでしょう」
「大丈夫よ。いつに騒いでいる子達も、儀式が始まれば何故かいつも静かになるし。カロリーナもみんなに合わせて、大人しくしているわよ」
「私は儀式でどんな力を授かっても良いから、今日を乗り越えられればそれで良いわ」
「アーベルも隣にいるし、なんとかなるでしょう」
あ~あ。マーシアさん、授かる力よりも、カロリーナが静かにしていてくれる、の方が望みが強くなっちゃったよ。
でも、ママが言った通り。教会では僕はカロリーナの隣にいるし、何かあったら僕が何とかするよ。……いつも振り回されてばっかりだけど。頑張る!! うん!! 大丈夫大丈夫!
賑わいで道が通りにくい中、それからカロリーナがお菓子の方へ走って行かないように、最新の注意を払いながら、どんどん進んだ僕達。そうして教会のある広間に着けば。そこは今日儀式を受ける子達の家族で溢れかえっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます