ミケじゃなくって、ミオって呼んで。

猫野 尻尾

第1話:ミケになったミオ。

芳樹には美緒って彼女がいた。

芳樹にとって美緒はあこがれだった。

中学生の時から、ずっと彼女のことを想ってた。


彼女の名前は「松山 美緒まつやま みお」高校一年生。

で、芳樹の正式の名前は「高松 芳樹たかまつ よしき」同じく高校一年生。


で、芳樹は高校へ入学すると自分の気持ちを美緒に告白した。

美緒はクラス委員だし、成績だってダントツトップ、可愛さもダントツで

トップクラス。


芳樹はダメ元で私にアタックした。

でも、美緒は「いいよ」って快く芳樹の申し出を承諾した。

芳樹は言った・・・え?いいんだ・・僕なんかで?いいのって。


実は美緒も中学の時から芳樹のことが好きだったんだ。

それからだね。

ふたりの世界が始まったのは・・・。

だからハグもキスもした・・・そしてエッチもこれからかなって時に

美緒に病気が見つかった。


何万人にひとりが発症するって言う難病だって。

その病気にかかった人の数が少ないってことで、治ったと言う前例もなければ

対処法も見つからないから治療のしようがなくて結局半年も経たない

うちに美緒はこの世を去った。


芳樹は打ちひしがれた。

これ以上の悲しみがないってくらい。

ご飯も喉を通らないし、眠れない。


そんな芳樹を見て芳樹の母親が心配した。


芳樹はなんとか美緒の告別式だけは出席してたけど火葬場には行かなかった。

美緒と完全に別れるのが悲しかったからだ。


母親からはいつまでも嘆いてたって美緒さんは帰ってこないんだから

悲しみに捉われちゃいけないって言われた。

悲しみから立ち直るったって、そんなのすぐには無理だよね。


で、亡くなった美緒は体をなくて魂だけになって、そのまま天国へ旅立つ

はずだった。

だけど、どうしても芳樹に未練があった私はこの世に留まった。


私は気がつくと、いつの間にか芳樹の家の前に来ていた。


一目でいい、芳樹に会いたい。


美緒は魂だから少し隙間さえあればどこからでも室内に入れる。

芳樹の部屋はもう何度も遊びに来ていたから迷うことすらなかった。


で、リビングまで来るとそのまま二階の芳樹の部屋へ・・・。

芳樹は学校へ行っていたし、親子ふたりの母親はパートに出ていて

家は留守にしていた。


ただひとり、その子だけは家で、寂しく留守番をしていた。

と言うより、芳樹のベッドで気持ちよさそうに寝むっていた。


その子の名前は「ミケ」その名の通り女の子の三毛猫。

美緒とももうお馴染みの芳樹んちの愛猫。


美緒は思った、このまま魂のままいたって芳樹と一緒に暮らせるわけじゃ

ない・・・そこでふと閃いた。


そうだ・・・ミケの体を借りよう・・・。

ミケなら自由が利くし、体があったら魂は留まるから天国へ行かなくて済む。

もし言葉が喋れたら芳樹とも話せる。


「ミケ・・・ごめんね、ちょっと体借りるね」


美緒は迷わずミケの中に入っていった。

そして美緒からミオになった。


猫の目から見た視線・・・これで芳樹が学校から帰ってくるのを待つだけ・・・

そう思ったら私は急に眠くなった。


で、誰かに起こされて美緒は目を覚ました。

そして美緒の目の前で鼻の頭にキスをする、愛しい芳樹がいた。


だけど芳樹から笑顔はみられなかった。

まだ悲しみの捉われてるのかな・・・。


ミオは、ここにいるよって芳樹に告げて心から悲しみを取り去ってあげたい

そう思った。


でも、いつ自分がミオだって芳樹に告げよう・・・いきなりじゃ芳樹が

びっくるするだろうし・・・どうすれば芳樹を驚かせないでミケがミオだって

分からせることが出来るか・・・自己紹介する時期をいつにするかミオは

大いに悩んだ。


つづく。


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