7. 尾行
五月の頭にある四連休の二日目、ソラはローテーブルの脇に立って、携帯端末に書いたメモを見ていた。
「じゃあ、調べたことを整理するぞ」
ユイが、ソファーでプリンを食べながらうなずく。休みなので、着ているのは制服ではなく、襟のついたシャツとスキニーパンツだ。ちなみに、ソラは長袖のTシャツとカーゴパンツを合わせている。
ユイは顔立ちが整っていて、ぱっと見は落ち着いているため、私服もおとなびた感じだ。一方のソラは、顔に年相応の幼さが残っているため、高校生らしく元気な感じを出している。好きなものを着ることより、人間にまじっても目立たないことを優先した服装だ。
ユイがスプーンを口に運ぶ。もうすぐ昼食だし、真面目な話をするので、ソラとしてはユイに一度食べるのをやめてほしかった。だが、注意するのも面倒くさくなってきたので、そのまま話を続ける。
「まずは
健人については、ユイが連休前に学校で調べた。
「名前は
ソラは携帯端末をいじって、次のメモを見る。
「ネットで『夜光スミレの
プリンを食べ終えたユイが、ソラに目を向ける。
「ああ。今のところ、とくに得たものはない」
「そういうことだ」
寄生霊魂は、
ソラたちにしたら、人間が死のうが生きようが、正直なところどちらでもいい。だが、寄生霊魂を退治するときは、宿主が死ぬ前をねらう必要がある。
寄生霊魂は、宿主の魂を食いつくすと、すぐさま次の宿主に寄生する。そうなれば、宿主を探すところからやり直しだ。
ソラは、携帯端末の画面をオフにした。
「次はどうする? 俺としては、健人がまだ何か隠してる気がするんだけど」
ユイが、あごに手を当てて考えこむ。しばらくして、すくっと立ち上がった。
「健人の周辺について探る。死んだ幼馴染が気になる」
「でも、どうやって探る? 休み明けまで待つか?」
ユイが、ダイニングテーブルにある時計をちらりと見た。
「この時間なら、健人は部活で学校にいる。帰ることろを尾行する」
ユイの案に対して、ソラはとくに異論はなかった。
「了解」
ソラはうなずいて、ユイとともにマンションを出た。
***
休日の
生徒が最もよく使う校門の前は、歩道のある二車線の道路になっている。
ソラたちは、学校と道をはさんで反対側に向かった。自販機の陰に隠れて、校門から健人が出てくるのを待つ。
何が入っているかわからないが、ユイは小さなショルダーバッグを持っていた。
十分ほどして、学校の中が静かになった。午前の部活が終わったのだろう。
さらに十五分ほどすると、校門から制服を着た生徒たちが出てきた。
ソラは健人を見逃すまいと、生徒たちの姿を目で追った。
(来た! 健人だ)
スポーツバッグを斜めがけしている。健人は友人に手を振って、ソラたちのマンションとは反対方向に歩いていった。
ユイが動き出す。
「行くぞ」
ソラたちは、健人に気づかれないよう一定の距離を保ちながら、あとを追った。
幸い、健人は自転車にもバスにも乗らなかった。大通りを渡り、住宅街をひたすら歩く。
学校からニ十分ほど歩いたところで、健人は家の前で立ち止まり、バッグから鍵を取り出した。
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