転生や撫子色に染まりけり
おりふた
プロローグ
死そして・・・
――俺は今日、告白をする。
俺の名は
彼女との出会いは小学四年生のクラス分け初日だった。
俺は入学してから三年間クラスに馴染めずに教室の隅でひっそりとサスペンスやホラー小説を読んでいる暗い人間だった。俺も人との馴れ合いなどつまらないと見栄を張っていて友達ができなかった。
そんな俺に転機が訪れる。隣の席になった彼女が話し掛けてくれたのだ。
「おはよう! 隣の席だね。今日からよろしくね!」
「あ、あぁ」
俺はその朝日が透き通るような肌に、恥ずかしそうなそれでいて可憐な笑顔に心を奪われた。
その日から彼女と俺は学校で世間話をしたり家に遊びに行ったりもした。彼女にとって俺は只の友達なのかもしれない。しかし俺は彼女と共に居られるなら幸せだった。
思えば初めてだった。彼女を見るだけで心臓が弾き飛びそうな程に脈拍が速くなるのに、ふとした時に目で追ってしまう。中学校に上がった時、これが恋なのかと気が付いた。以来、高校生になった今でも彼女に思いを寄せ続けている。
夏休み初日である今日、俺は夕日を背中に浴びながら波打つ鼓動を抑え彼女を山に登らないかと誘った。この山は告白をすれば成功すると噂されていた。この山から見る夜景は近隣の街で一番の眺めと言われているからだろう。所詮迷信であり戯言なのだが、俺は藁にも縋る気持ちでここを選んだ。
彼女と俺はすっかり日が落ちた山道を月明かりを頼りに他愛のない会話を楽しみ、山頂へと歩く。ずっと続けばいいのに、と思う。だがそれは逃げであると自分に言い聞かせる。
◇
山頂に着いた。
「今日は誘ってくれてありがとう。こんな綺麗な景色が見られる所が近くにあったなんて知らなかったよ」
「あぁ感謝してくれよ」
(違う。こんな事を言いに来たのではない。俺は今日、告白をする。そう、決めたのだ)
「わぁ、綺麗! こっちに来なよ!」
「柵が無いんだからあまり崖に近づくなよ」
彼女は生返事をし、少し後ろに下がる。
時が止まったかのように木々が動きを止める。
「実は今日、言いたい事があるんだ」
彼女は風でそのロングの黒髪を
――ガサッ
物陰から不審者が現れた。
一瞬だった。彼女は抵抗できず突き落とされる。
俺は
「「あぁあああああ」」
彼女だけは守らなければと思い彼女の頭を腕で覆う。
(畜生、もっと彼女と話せば良かった。もっと早く自分の思いを伝えておけば良かった。俺は死ぬ。きっと彼女も死ぬだろう。胸が締め付けられる。悔しい、哀しい、無力、そんな言葉では言い表せない。どうして殺されなければいけなかったんだ。あぁやり直しせるなら後悔をしない人生を送りたい)
何もかもが遅いと悟り、涙を零す。
――深夜に響く重い衝撃音。即死だった。
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