第6話朱雀、アイドルに会う

「編集長~最中さなかさん入られました~」


 カメラマンが編集長に呼びかける。

 カメラマンの隣にはとてもかわいらしい女の子の姿があった。

 フリルのついたあからさまなアイドル衣装に身を包んだ女性はというと、


『今をときめくスーパーアイドル!最中ミルクでーす!』


 人間界でかなり有名なスーパーアイドルだった。


 年間オリコン一位や数々の賞を取った現人気女性アイドルグループのセンター、最中ミルク。


 テレビや握手会で持ち前の明るさと、人懐っこい性格で数多くのファンを虜にするグループNo.1人気の女性。


 アイドルに疎い神邏ですら、知ってるレベルのアイドルだった。


 しかし、ここは天界。なぜ人間界のアイドルが……?


 そう思っていた神邏に気づいたか編集長がニヤリとする。


「驚いた様子ね美波ちゃん」


 神邏の表情事態は変わってないが、察したようだった。


「彼女ほどのトップアイドルならね、天界に営業に来ることもあんの」

「……ですが、警察とか、それ相応の立場の人たち以外は、人間は天界の事を知らないはずでは?」


 そう、基本的に人間には天界の事は伏せられている。

 天界軍に協力する立場の者達を除いて。


「つまり情報統制されてるでしょ?となると、報道関係も抑えられてるわけ。だから芸能関係とかも天界を知ってる人は知ってるわけ」


 ニュースなどで魔族による犯罪が流れる事がないのが、その証拠だった。

 天界などの話を報道しようとすれば上からの圧力がかかり不可能。 そしてすぐさま天界軍が記憶を消しにくる。


 だからこそ今の今まで報道される事はないのだった。


 当然テレビ局内でも天界や魔界を知ってる者は少数だが。


「……あのアイドルには教えてよいのですか?」

「彼女は例外。だって天界人だからね」


 アイドルグループなのに、一番人気とはいえ一人で来たのがその証拠。彼女は天界人で元々天界の事は熟知しているから、この仕事を引き受けられるわけだ。


 当然の事だが、彼女からも天界の話を人間界ですることは禁止されている。


 合点がいった神邏。すると編集長が、


「ほら、アイドルとして後輩なんだから挨拶でもしてきたら」

「え」


 ……まあ道理か。知らない人に声かけるの苦手なんだがな……


「行かなくてもいいと思いますが……ほら、神邏くんはバイト感覚ですし、アイドルとして生きてくわけでもないですしぃ〜」


 と、ルミアマネージャーが少しあたふたしながら止めてくる。

 

 ……まあ、ルミアは俺の性格知ってるしな。苦手な事しなくていいって言いたいんだろう。

 

 気持ちはありがたいが、まあ礼儀だし。


「大丈夫、行ってくるよ」


 と、俺はルミアに言ってから、最中さんの元に向かう。


 最中さんは椅子に座り、軽いメイクされていた。


 邪魔になるかな?そう考えていたら……


「マネージャー!いつものドリンク!」


 さ、最中さんは怒号を自分のマネージャーに言い放った。

 ……テレビで見たことある、彼女の優しいアイドル精神溢れた振る舞いとはまったく違うものだった。


「は、はい!どうぞ最中!」


 女性のマネージャーが急いでドリンクを渡すが、


「温い!!なにこれ!ふざけてんの!!」


 またも怒号……


 アイドルって怖いな。


 ――つづく。


 神邏ファンの日常のコーナー。


「そうですよね……他アイドルと絡む事、ありますよね」


 さっき彼を止めたの、性格を思ってじゃないでしょ。


「ギクギク!!」


 擬音口にする人は珍しい。わかりやすいねー


「だって!女アイドルとかと関わるだけ損ですって!噂されたらアイドルのファンとかのアンチ行為受けそうですもん!」


 ありがちではありますね。でもそれだけじゃないでしょ。


「まあ、他の女に近寄ってほしくないのもありますけどね」


 むしろそっちが本音では?


 コーナー終了。


 次回、朱雀、先輩に挨拶する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る