第8話 「行きつけの」
長期の任務となるため、私は行きつけの鍛治師の元へ向かった。ここは昔師匠も愛用していた店で私の兵装についてもここで作ってもらった。普段の任務ではこれを使うまでもないけど、やはり戦争になるとこれは必需品になる。
「久しぶりおっちゃん。元気にしてた?」
「おいおい、誰かと思えば...。噂になってるぜ、あやめ。先日の屋形船騒ぎ。」
中から60くらいのおっさんが出て来た。無精髭が長く、まるで太古の昔に存在した傷国の英雄のようだった。
「あー...やっぱり帝国中でその話題で持ちきりになるよね。」
あの騒ぎは新聞の一面に取り上げられて国中で騒ぎや暴動が行われている。それもそのはず、帝国のパイプ役や外務省の役人が無惨な姿で見つかったことから秀の国で一時期話題になった
何十年も前。秀の国で連続殺人が行われ、少なくても27人が殺された事件。被害者は皆死体をバラバラにされて各地に埋められた。未だに犯人は捕まっていない。
てか私は今回1人しかやってない。やったのはすみれだわとよくよく考えると頭を抱えてしまう。
「それで、今日は一体どういう風の吹き回しだ。最後に会ったのはいつだったっけ?」
「確か2年ぶりぐらいよ。そんなことよりおっちゃん、ちょっと相談があるんだよね。」
私は先日にあやめと話した内容を簡単に説明した。依頼のこと、すみれのこと、戦争のことを。昔から私のことを知っているからもちろん復讐の対象者もこのおっちゃんは知っている。
「なるほどな、つまりお前の兵装を作りたいわけだ。ついに使うと覚悟したか。調整とかは忘れてないだろうな?」
「えぇ、たまに師匠の文献を読んで使い方を復習してるわ。ただ使うのなら武器を最新のものに変更したいの。どれくらいかかりそう?」
「そうだな、確かにもうこの武器だと列強の最新武器には劣るな。どれ、今開発中の空気の流れを利用して切れ味を増していく兵器や大量の火薬を利用した大量爆破兵器とかを搭載してみるか。
まぁお前のことだから金はあるだろう、だが1週間は時間をくれ。」
「1週間でいいの?」
「あぁ、そんくらいあれば最新のものに変更できる。」
「助かるわ!それならいざという時に使用できるわ。」
「それはそうとあやめ。お前いつになったら男の話一つや二つ持ってくるんだ?」
いきなりそんなこと言われても恋愛なんてしたことないからわからないから。好きな人なんてできたことないんだよ。いや、正確には1人いた。
「さぁ?多分私は一生独り身だと思うけど。
てかおっちゃんは私のお父さんのつもり?」
「まぁ近いようなもんだ。
初めて会った時から思ってたが本当に勿体無い女だなと思ってな。」
「悪かったわねこんな性格で。」
こんな風に私をからかったり娘のようにと余計なお世話を焼いてくるおせっかいなおっちゃんに呆れながらも少し会話を楽しめる数少ない人物。
師匠も今頃生きていたらきっと同じようにからかって来たんだろうなと思った。
ーーーーーー
兵装の開発を頼んだ私が次に向かったのが闇市。貧民街の中に鳴りを潜めて帝国の連中に見つからないように隠れ蓑にしている。ここも私は師匠に教えてもらい何回かは来たことがあった。道なりに進み、突き当たりを左に行くとその店はある。
『黄泉返り』という薬を扱う店だ。私がいつも使っているあの嗅がせ草も元はここで購入したものだ。
「店主ー来たよー」
「お、あやめか!久しぶりだな。元気にしてたか?」
「まぁまぁだよ。それより聞きたいんだけどこの店で丸ガンは売ってるの?」
『丸ガン』
一時的に身体能力を飛躍的向上させていく兵糧丸で、これを食べると人の脳を30%%まで起こすことができる。人の脳は通常なんとたったの5%までしか使われていない。
これを食べることにより徐々に脳が眠っている能力を解放させていく。30%まで解放をすると、私に埋め込まれているトカゲの細胞を自在に操ることができる。腕を切り落とされても瞬時に新しく生えて来たり、自らの血液を毒に変えたりなどができるようになる。
ただ欠点もある。それは使用するたびに体内組織の崩壊を引き起こす可能性があること、あまりにも早い状況把握や分析などの両立によって体を飛躍的に動かせるのが欠点。
分かりやすく言うと人間が動かせる限界を越えてしまう動きができてしまうから無理をさせすぎると体が悲鳴をあげてしまう。血管や筋肉から血を吹き出したりとかしてしまう。そんな危険な丸ガンを生成してるからこの店はここにある。
「あるけど、何に使うんだよ?」
「長期の依頼を受けたの、下川戦線に行くからね。」
「戦争かい、そりゃ確かにこれ使えば大軍も1人で戦えるくらいだ。だがこれを使ってどうなるかはあやめが1番知ってるんじゃないのか?」
そう、一度だけ使用したことはあったけど効果が切れた途端私の場合は内側から血を吹き出してあばらだったら骨もいくつか筋肉の収縮で折れてしまって動けなかった。
「わかってるわ、充分わかってる。」
少しの間沈黙になり、店主が丸ガンを差し出した。
「ほら、必要なんだろ?」
「ありがとう。でもいいの?これは生成がとっても難しいからとっても高値じゃないの?」
「まぁそうだな。じゃ賭けをしよう。とりあえず一つ渡しておく、今回の依頼でこれを使用しなければ今回の代金は払わなくていいぞ。その代わり使用したら2倍の価格で買ってもらうからな。」
随分と自信がある言い方をするもんだからその賭けに乗ってみることに。
「いいわ、その賭け乗るわ!これが無くても無事に帰ってみせる。」
そうして丸ガンを受け取り、店を後にした。
要は使わなければいいだけの話。
やってやろうじゃない。
ーーーーーー
「はい、では先輩方とはそういう取引を持ちかけます。では...」
すみれは麦国と通信を行っていた。
「期待してますよ、先輩♪」
いかにも何かを企んでいる顔をするのだった。
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