十三話 卒業試験終了

「え……まじか……!」


「魔力チャージが出来たように感じた。しかしそれでも俺の鉄パイプは溶かせないということだ」


 ゴギはそう言った瞬間、海はゴギに向かって石の剣を振るった。


「一旦、別の作戦を考えてみたらどうだ」


 ゴギは海の攻撃を受けようと鉄パイプを構えたが、ゴギが持つ鉄パイプは二本とも大きく曲がった。


「なに……!?」


 隙を突くように海は思いっきり石の剣でゴギの胸を突いた。ゴギは少し吹っ飛ばされて床に背中を付けた状態になった。


(これはさっきの爽が魔力チャージされて放った毒の効果か……!?)


「よっしゃ! 時間差で地味だが魔力チャージした成果が出たぜ!」


「まさか……俺が倒された状態になるとは……驚いた」


「……これでようやく一撃か」


 海はそう呟くと、床で横になっている状態のゴギは拍手を始めた。


「……どした?」


「二人共おめでとう。卒業の資格を得た」


「資格?」


「倒すのが俺の卒業条件だからな……俺の背中を床につけるのも倒したことになる。つまり二人共文句無しで卒業するに値するだろう」


「なんじゃそりゃ。そんなんで良いのか」


「勝負はこれからだと思うが……」


 爽と海はゴギにそう文句を口にした。


「まさか……今卒業するチャンスを見過ごすのか?」


「あぁ」


 海と爽は同時にそう返事した。


「……後悔しないか。続けるなら俺は本気で行くぞ。まだ今なら止められる」


「ふっ……先生こそビビったんじゃないですか?」


「……良いんだな」


「もちろん!」


「本気の俺とやってみるか」


 ゴギは新たに鉄パイプを二本作って両手で一本ずつ持った。


「……お前名前は? なんて言ったっけ?」


 爽は海に名を聞いた。


「海だ」


「良い名前だな。ちなみに俺は爽な」


「……なぜ今名を聞く?」


「その方が良いコンビネーション攻撃生みやすそうだろ。こっからまじでやばそうだからな!」


「なら爽、次からは二人同時に素速く連続で攻撃するぞ」


「あぁ、やるか海」


 海と爽は同時にゴギに向かっていった。



 上級の生徒の卒業の試験が始まってから一時間半が経過した頃、996番目の教室では潮とサギフエの二人が倒れ、それを見たカイグレがストップウォッチのカウントを止めた。


「丁度一時間超えた所ヨォォ……!!」


「もう立てないわ〜……」


「ようやく終わった……!」


「一時間……よくギブアップしなかったねェェ……!! これで二人共卒業ヨォォ……!!」


 カイグレは嬉しげな表情でそう言って潮とサギフエにポーションを渡した。そのポーションを飲んだ潮とサギフエの傷が癒え、潮とサギフエは立ち上がった。


「卒業だ! やったぞ!」


「やったわ潮!」


 潮とサギフエは喜びの言葉を交わして互いに両手でハイタッチした。



 997番目の教室では颯とライノが二人同時に壁に激突して倒れた。


「これで二人合わせて二百回くらい壁に激突したが二人共大丈夫か……!?」


「大丈夫です……!!」


 颯とライノは同時にそう返事してゆっくりと立ち上がった。


「うぅ……」


 颯とライノは五秒間立ち、その後すぐに倒れた。


「お!! 今の五秒でちょうど一時間経った!! よく耐えたな!!」


「あ……ありがとうございます……!!」


「きつかった……」


 颯とライノはそう言うとドラドはポーションを二つ持ち出して二人に飲ませて回復させた。颯とライノは立ち上がった。


「僕はツノで壁に激突する時の衝撃を少しガードして抑えていたけど……颯は何で大丈夫だったの?」


「確かに颯は何も抵抗してなかったな……! 壁にぶつかる時に風の魔法を当てることもしなかった……! それは何故だ!?」


「あっ! その手があったか!! 知りませんでした!!」


「気付かなかったんだね……」


「颯!! 抵抗無しで壁にぶつかり続けていたのか! 根性あるな!!」


「ありがとうございます!」



 998番目の教室ではカジカが持っていたストップウォッチを凪が手にしていた。


「一時間経った……」


 凪はそう言うと、ストップウォッチのカウントを止めた。


「先生……終わりました」


 凪はカジカにそう言うと、カジカは凪とバケダラにかけた毒を解除した。


「いや〜……まさか私の毒を喰らいながら凪が自身の不自然魔法で私の動きを止めるなんてね〜!」


「いつでも出来ましたけどギリギリまで耐えないと試験にならないなって思って止めました……」


「ありがとう凪! 私も危なかったしナイスタイミングだよ!」


「とにかくこれで凪とバケダラ二人共卒業だよ!」


「やった!」


「ほんと危なかった……」


「ふ〜……ゴギ先生……方針を変えてくれてると良いけど……」


「倒すから耐えるに変わってるかな……」


 バケダラはそう呟いた。


「あの……方針を変えて欲しいのはあなたです……」


「あら〜……確かに〜?」



 一方999番目の教室では海・爽・ゴギの三人が汗だくでかなり疲労している様子だった。


(互いに名前で呼ぶようになってからコンビネーションが凄まじくなっている……)


 ゴギはそう思うと海と爽の二人は立った状態から膝をついた。


「終わりか二人共……」


「はぁ……はぁ……なに決めつけてんだ先生……!!」


 爽はそう言ってゆっくりと立ち上がった。


「俺は残り全ての魔力を使ってチャージする! それまで先生を止めててくれ!!」


 爽は海にそう伝えると右拳に毒の魔法を込めて魔力チャージし始めた。それを見た海は爽の前に立った。


(今魔力チャージをするか……俺も残り全ての魔力を使って最後の武器を作るとしよう……!!)


 ゴギは鉄パイプを一本作った。


「俺も……最後の剣だ……」


 海はゆっくり立ち上がって石の剣を一本作った。海とゴギは互いの武器を何度もぶつかり始めてそれが三分続いた。その間魔力をチャージし続けている爽はゴギと武器のぶつかり合いを見ていた。


(さっきよりも強い魔力のはずなのに魔力チャージし続けている……この場で魔力チャージのコツを掴んだか……海も俺の動きを見抜ける様になっている……凄いな……)


「俺の魔力チャージもう限界だ……!! 海!! よけろ!!」


「行くぞ!!」


 爽はそう叫び、右拳から十分間魔力チャージし続けた液体状の毒をゴギに向かって一直線に放った。


(凄い魔力だが……感じて分かる……! だ……!)


 ゴギは爽が一直線に放った毒を受けようと鉄パイプを構えた。その時爽が放った毒が飛んで当たる位置に海が移動した。


「おい……!! 邪魔だぞ!?」


 海は跳び、手にしている石の剣に爽が一直線に放った毒を当てた。海が持つ剣に十分間爽が魔力チャージした毒の魔法をまとった。


「これは……!」


 ゴギがそう発した瞬間、海は爽の毒をまとった石の剣をゴギに向かって振り下ろした。海が持つ剣はゴギが持つ鉄パイプを真っ二つに切ってゴギの頭を直撃させた。


「ゔっ……!!」


 攻撃を喰らったゴギはふらついて倒れた。その時に海が持つ石の剣は溶けて無くなった。


「ギリギリだったか……」


「え……? やったのか……!?」


「恐らくな……」


「よっしゃーー! やったな……!」


「あぁ……」


「それにしてもお前……剣をぶつけるタイミング超完璧だったな……俺の発射した毒の勢いを殺さない様に先生にぶつけて……」


 爽がそう言った時、二人は気を失って倒れた。



 一時間後、996番目の教室ではカイグレが潮とサギフエへ卒業に向けての言葉を贈ろうとしていた。


「潮……サギフエ……あなた達はずっと生意気だったわねェェ……」


「え? そうかしら? 私は普段通り普通よ」


「そのいつもが生意気なんだがな……サギフエは」


「潮もそうよ……」


「威張ってたとかは良く言われるが……とにかく今までありがとなカイグレ先生」


「私も凄い辛かったけど今までありがとねカイグレ先生」


「ほぉぅんとにあなた達は最後まで生意気ねぇぇ……まぁぁそれがあなた達の良い所よぉぉ……」


 そう言ったカイグレは若干涙目だった。



 997番目の教室では颯とライノへドラドが卒業に向けての言葉を贈ろうとしていた。


「颯!! ライノ!! 今までよく頑張ってくれたなっ!!」


 ドラドは泣きながら颯とライノにそう伝えた。


「はい!!」


 颯とライノはそう返事した。颯とライノはドラド同様に泣いていた。


「俺は心を折るくらいの気持ちで授業するつもりだったがお前達は全然弱音を吐かなかったな!!」


「はい!!」


「だから颯とライノはこれからどんな困難にも弱音を吐かないで乗り越えられるはずだ!! だから精一杯生きるんだ!!」


「はい!! 先生!! 今までありがとうございました!!」


 颯とライノはドラドにお礼の言葉を贈ってお辞儀した。



 998番目の教室ではカジカが爽と凪へ卒業に向けての言葉を贈ろうとしていた。


「爽……凪……今までよく私の毒に耐えてくれたね」


「いや〜カジカちゃんの毒は最強に強烈でしたよ〜! 俺は卒業試験の時に本性出した先生見たかったですよ〜!」


「先生の本性やばかった……結構トラウマレベルだったから……アニメだったら放送出来なかった……」


「じゃあ今見る?」


「えぇ〜!? 良いんですか!?」


「じゃあ行くよ〜!」


 カジカは怖い顔をして爽の股間を思いっきり蹴った。


「これが本性だよ」


「あふ……!! ありがとうございます……!!」 


 爽は股間を抑えて悶絶しながらそうお礼の言葉を贈った。


「爽と言えば……ゴギ先生を倒して凄いね!」


「うぅ……」


 爽はうずくまっていて、カジカの話に入ってこれなさそうだった。


(先生……ガチで蹴ってるっぽい……)


「じゃあ……もう話終えちゃいますか。爽……凪……卒業です!」


「ありがとうございます……」


「カジカちゃん……ありがとうご……ざいましたぁぁ……」


 爽と凪はカジカにお礼の言葉を贈った。



 999番目の教室ではゴギが海とバケダラへ卒業に向けての言葉を贈ろうとしていた。


「海……お前は一人でなんとかしようとする傾向があったが……卒業試験で変わったな」


「変わりましたか俺は……」


「変わったよ海〜!!」


 バケダラは泣きそうな顔で海にそう言った。


「バケダラ、お前はすでに強い。だから油断さえしなければ大丈夫だ」


「はい! 油断せずに頑張ります!」


「あと……海と爽の二人で俺に敗北を与えた……二人には特別賞をやりたいくらいだが……」


「凄いね海! と爽! 私見たかった! いつか機会があったら二人が協力して戦う姿を見てみたい!」


「見てどうする……」


「とにかく海……バケダラ……この先も頑張れよ」


「ゴギ先生! ご指導していただきありがとうございました!」


「ありがとうございました」


 バケダラと海はゴギにお礼の言葉を贈ってお辞儀した。



 魔法学校上級の生徒卒業の試験を突破した海達八人と上級の先生四人はサヨリがいる学長室に来た。


「まさか……誰も成し遂げてない上級の生徒を卒業……正直驚いています」


(上級って言ってる割にかなり乱暴だったような気がする……)


「指導が厳しいって言うより先生がみんな激ヤバだったから誰も卒業までいかなかった気がするわね……」


「それじゃあ皆さんにこれをお渡しします」


 サヨリは上級の卒業試験を終えた八人にキーホルダーを渡した。


「皆さんは魔法を覚えたばかりですが、かなり強いほうだと思います」


「まぁな!」


 自信満々の表情をしてそう言う潮はサヨリの言葉に反応した。


「本来なら学長が卒業する時の言葉を贈るのですが……学長はまだ帰って来てません……」


「学長と学長の娘も大丈夫だろうかネェ……」


「あの……私達はムベンガを助けるために上級の授業を受けに来たんです! 私達はムベンガ救出に行っても大丈夫ですよね!」


「アワビ帝国……!! 学長の娘さんはそんな所に連れてかれたの……」


「あれから二週間経っても学長から連絡はありません。確かに心配ですが……」


「他の強い人を派遣したりとかはしてないんですか?」


 凪はサヨリにそう聞いた。


「既に何人かの強い者達に依頼しましたが全員音信不通です……依頼した者は全員忍者なのですが……」


 サヨリはそう言うとバケダラは驚きの表情に変わった。


「忍者!? そんな……向こうも忍者雇っているってこと……!?」


「すまない……!! 学長にはお世話になってるがアワビ帝国には……!! 妻もいるし行けないんだ……!!」


 ドラドはそう言って土下座した。


「先生……!!」


「妻がいると行けないのか?」


 爽はドラドにそう聞いた。


「アワビ帝国はいやらしい国だ……十八歳以上の未婚者しか行けないように決まっているんだ……!」


「ドラド先生!! 土下座することはないです……! 気持ちだけでありがたいです……!」


「アワビ帝国って所はいやらしい誘惑だらけで、一度行った者は家族のことを忘れる人もいるらしい。アワビ帝国に行った噂が流れただけで仕事がクビになった人もいる」


「そんだけで会社クビ!? やばいな……」


「私も行けないから……ごめんなさい……」


 カジカは周りにそう言って頭を下げた。


「悪いがあたしも無理ヨォォ……」


「俺もドラド先生と同じく結婚していてな……」


 ゴギは周りにそう明かした。


「俺達だけで大丈夫だよな颯!」


 爽は颯と肩を組んでそう言った。


「私達だけでもムベンガを無事家に連れて帰ってみせます!!」


「う〜ん……あなた方はアワビ帝国に突入しても簡単には捕まらない強さをお持ちになったと思いますが……」


 サヨリは右手で頭を抱えた。


「学長との連絡が取れないままですし……もしかしたら一刻を争う事態になっているかもしれません……なので私も学長の娘救出しに行きます」

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