第24話
残酷な描写があります。苦手な方は読み飛ばして下さい。
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~ランベル公爵(父様)視点~
父上は今回の件でロベルト兄上を王太子に任命し、俺を推していた貴族連中にもこれは覆らないと釘も刺してくれた。
俺の毒の影響が抜け、母上が過保護過ぎるところはあったが、俺も妹のフレンシアも信用の置ける侍女と護衛に護られながらも幸せな日々を過ごしていた。
変わらずロベルト兄上は俺とフレンシアを可愛がってくれていたし、チェルシー妃殿下も常に気にかけてくれていた。
本当に幸せな日々だったんだ。
お転婆すぎるフレンシアは母上に小言を言われながらも元気で明るくいつも笑顔で周りのみんなからも大切にされていた。母上にも笑顔が戻った。
特に父上の可愛がり様はまさに溺愛って言葉がぴったりで、忙しいはずなのに一日に一度は必ず会いに来ていた。
もちろん父上はロベルト兄上と俺も分け隔てなく接していた。
このままその幸せが続くと思っていた。
フレンシアが殺されるまでは⋯⋯
それは俺が14歳、フレンシアが7歳の時だ。
その頃には母上の過保護は変わらないが王子教育の他に剣術、体術を叩き込まれていた。
それはいざとなればロベルト兄上の盾にもなり、自分の身を守るためでもあった。
その日は視察という名のお忍びをすると言うロベルト兄上が俺とフレンシアを連れて行ってくれることになった。もちろん変装してだ。
フレンシアは俺とロベルト兄上に挟まれて手を繋ぎ、嬉しそうだった。
好奇心旺盛なフレンシアは物珍しいものを見つける度に俺たちの手を引いてはあっちこっち振り回していた。
はしゃぎ過ぎて疲れをみせたフレンシアを休ませるために近くにあったベンチに座らせたんだ。
その時よちよち歩きの子供が両手を広げてフレンシアに向かって来たんだ。ロベルト兄上もフレンシアも微笑ましそうに見ていた。
違和感はその時にはあったんだ。
歩くこともおぼつかない子供が一人でいるのは可笑しいだろ?
すぐに慌てた母親らしき女性が子供のほうに駆けてきたが、その女性は俺たちの目の前にいる子供を抱きかかえるのかと思えば袖口から光るナイフを取り出し、前のめりになって子供に手を差し出していたフレンシアに斬りかかり、俺は咄嗟にフレンシアの手を引いたが間に合わず真っ赤な血が飛び散った。次に俺にナイフを向けた時には護衛に取り押さえられていた。
「フレンシア!」何度も何度も名を呼んだ。
切られたのは首で傷口を押さえても血が止まる気配すらなかった。
「ロ⋯⋯ベル⋯トにい⋯さまは⋯⋯無事⋯⋯です⋯か」
「!!ああ無事だ!フレンシア!大丈夫だ!しっかりしろ!」
ただ、ロベルト兄上の「そいつは死なせるな!」と言う声だけは覚えている。
フレンシアは兄上の無事を確認したら声にはならなかったが『よかった』と言って笑顔のまま俺の腕の中で目を閉じてしまった。
それからどうやって帰ってきたのか⋯⋯
俺は母上の悲鳴を聞くまで血だらけのフレンシアを抱き続けていた。
父上に促されてフレンシアをそっとベッドに寝かせた。
部屋には俺と父上だけで、初めて父上の涙を見た。
かなりキツい取り調べの結果、犯人は母上の母国、カクセア王国の元女性騎士だった。
だが、犯人の子供を人質に取って脅迫していたのはこの国の公爵、バルドラ公爵だった。
何故、フレンシアと俺を狙ったのか⋯⋯元公爵はチェルシー妃殿下の幼馴染だったそうだ。
幼い頃からチェルシー妃殿下に思いを寄せ、父上と結婚してからもチェルシー妃殿下の幸せだけを願っていたそうだ。
父上が母上を迎えようとした時も反対していたそうだ。
チェルシー妃殿下が心を痛めると⋯⋯
チェルシー妃殿下が虐げられていると⋯⋯
次々子を生む母上が憎かったと。
だから子供を奪えば目障りな母上が自国に帰ると思ったと⋯⋯
愚かな。
当時、子供だった俺でもそんな理由で親族の命まで賭けられるほどチェルシー妃殿下が大切だったとは思えなかった。
何か他に理由があるはずだ。
バルドラ公爵は爵位剥奪のうえ処刑。
一族は遺恨を残さないために幼子までもが処刑の対象になったそうだ。
奴のしたことは国際問題になってもおかしくはなかった。
どんな話し合いがあったのかは、その時未成年だった俺には知らされなかった。
結局母上は⋯⋯心が壊れてしまった。
もう、俺の声も父上の声も聞こえていない。
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明日も父様視点です。
あと一話お付き合い下さいませ。
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