329_色褪せた写真と寄せ書き

「ありがとう」「楽しかった」「また会おう」

見本のような綺麗な言葉が並べられた寄せ書き

中央にはまだ純粋に笑っているだろう写真

色褪せて、輪郭しか分からない笑顔


もう誰も覚えていないはずなのに

もう誰もいなくなってしまったのに

まだまだ捨てようなんて微塵も思えない


体はもう朽ち始める年齢になった

心はもう枯れ始める年齢になった

写真だってそうだ


時々、具合が悪い時

「ありがとう」「楽しかった」「また会おう」

外では聞こえない言葉を語り掛けてくれる存在


破ってしまいたい

戻れないと知っている

捨ててしまいたい

戻れないと知っている


でもこの綺麗な言葉は当時のままなんだ

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