第7話 新選組と神仙組

 この銀髪女の名前は浜田ソウジュっていうらしい。

 猫の獣人らしいが沖の反対の浜って・・・

 耳がピクピクしてるのが昔実家で飼っていた猫を思い出す。

 しかしだ。


「あんた近藤さんや宗方さんにも日本人って嘘ついてんのー?今時流行んないってそんな嘘~ぷぷっー」


 こいつムカつく。

 俺だってどうしてこの世界に来たのかもわかってないんだ。

 とりあえず猫ってくしゃみの音が威嚇音に聞こえるらしいし、くしゃみぶっかけとくか。


「ぶぁっくしょい!」


「うわめっちゃ唾飛んだきったない!」


「はぁ、ちょっと黙ってろソウジュ。話が進まねぇ」


「ごめん宗方さん」


 宗方さんは名前こそ違うけど、ちゃんと土方歳三の様な立ち振る舞いに安心する。

 そう考えるとこいつも沖田のイメージとは一致するか。


「それでヒロト。お前は別の日本、異世界から来た日本人ってことでいいのか?」


「そ、そうです」


「お前がいた世界では俺達と似たような新選組ってのが過去に居たと。にわかには信じられないな」


「だから嘘なんだって宗方さーん」


「うるせぇ!てめぇは黙ってろ!」


「トシ、ここは拳で語り合えばいいんじゃないかしら?」


「近藤さんも思考放棄しねぇでちゃんとしてくれ。馬鹿二人を相手するのは疲れんだ」


 宗方さん・・・苦労してるなぁ。

 俺も馬鹿な後輩達を諫めてた時期があったなぁ。


「聞くが新選組は、俺達と似たやつらはどんな最後だったんだ?」


「俺もそこまで歴史に詳しくないので近藤、土方、沖田の最後くらいしかわからないですよ」


「それでいい。類似する以上、把握しておく必要がある」


「局長の近藤は処刑、副長の土方は射殺、沖田は病死ですかね」


「射殺と言うのがよくわからないが、魔法に寄る一撃ということか?」


「俺のいた世界には魔法と言うものがなく、代わりに銃という鉛球を高速で発砲する武器がありました。それに寄る射殺です」


 やはりというべきか、魔法はあるんだな。

 そこは異世界という感じがするけど、時代がなー。 

 この三人がいる所為でどうしても江戸時代にタイムスリップした気分になる。


「鉛を高速で発射して致命傷を負うのか・・・しかしそれを魔法で再現したら防壁魔法では防ぐことはできなくなるな」


「病死ってぷぷぷっー!治癒魔法があるのにどうやって病死するんですかー!?」


「ソウジュてめぇ聞いてなかったのか!魔法がない世界だって言ってんだろ!」


「だって宗方さん。魔法がない世界なんてありえます?」


「それは俺達には判断がつかねぇ!近藤さん!」


 最終的には長の判断に委ねるってわけね。

 近藤ユウキさんの方を見るとーーーけしからん乳を腕に乗せて顎を抑えながらこちらを凝視している。

 それにしてもけしからん。

 実にけしからん乳だ。

 こんな乳を持つ人が頭と身体を引き裂かれて晒し首にされるところなんて見たくない。

 それに宗方さんのスレンダーながらも引き締まった腰と尻は何ものにも代えがたい素晴らしさがある。


「へー、私は晒し首にされるのかー」


「え、俺今、声に出してました!?」


「いや、私は人の思考が読める読唇眼リーディングアイって言うのを持ってるのよ」


「思考を読める・・・?」


 まずぅい。

 下心丸出しのこの思考は近藤さんに全部筒抜けだってことだろ。

 でもしょうがないじゃないか。

 俺は一昨日何年もしていた片思いでフラれたばかりだ。

 煩悩が頭によぎるのも仕方がないことなんだよ。


「へぇ、ヒロは振られたから私達をいかがわしい目で見てるのね」


「なにっ!?近藤さんをいかがわしい目で!?」


 おーっと?

 宗方さんから不穏な空気が漂ってきてるぞ。

 

「天誅ぅううう!」


「それ新選組と敵対してる人達の決め文句!!」


 そして俺はその日半殺しにされて意識を手放した。

 宗方さんがどうやって俺を半殺しにしたのかは覚えていない。

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