第71話 大空のサムライ

ツキノはそのまま卑弥呼の元へ行くが、卑弥呼は豊穣祈願の祈祷中で、巫女たちにあと1時間くらいかかると言われた。


そっか~と思い、イネさんの診療所に遊びに行くと、1羽の鷹が治療を受けていた。


何事かと思い駆け寄ってみると、鷹は翼に穴が開いた傷口を、ヒールで治してもらっていた。


「これ、銃創ですね」


イネは呟く。


「それはつまり、銃を使っている国があるってこと?」


驚いて聞き返すツキノに、イネは分からないと答える。


「ただ、傷口は銃創と一致していますので、誰かが使っているのではと思われます」


ふうんとみていたツキノが呟く。


「この人転生者だ」

「進化してみる?」


ツキノをじっと見据えていた鷹だったが、やがて体が光りだす。


進化を終えた鷹は、傷口の治療を受けながら直立し、ツキノに敬礼をした。


「記憶を戻していただきましてありがとうございます!」

「私の名前は『坂井三郎(さかいさぶろう)』」

「かつて大日本帝国で戦闘機に乗り、様々な作戦に参加しておりました」

「空中での巴戦は得意としております!」


挨拶が終えると敬礼し、再度横になり治療を受け始めた。


「ねえ、坂井さん」

「銃創があるってことは、どこかの国が銃を使っているってこと?」


はい、と返事をして、坂井はいきさつを話す。


「現在私は『亜人連合国』の空軍隊長を務めております」


「我らの国より海を渡った先に「日ノ本国」という国家がございまして」

「この地を治める「オダノブナガ」と小競り合いが続いております」

「ここは南蛮貿易をやっておる為か、国家的にかなり潤っているようです」


さらに坂井は話を続ける。


「実は私の前世の国と同じ名前なのもあり、どの様なところか様子を見に行ったのですが」

「運悪く、敵の『鉄甲船』に見つかってしまい、銃撃を受け」

「負傷して国に戻ると、裏切り者と勘違いされて攻撃を受けて」

「そのままこの地に辿り着いたのでした」


うん、この人若いころ結構やんちゃで、敵航空基地で宙返りして帰ってきたんだっけ?

そんなエピソードを思い出しながら、俺は『大空のサムライ』の話を聞いていた。

しかし、日本もあり織田信長もいるのか~。

家臣団や勢力図も気になるな。

そして坂井三郎がいるってことは、枢軸国や、連合国の転生者もいるってことだよね?

なんかこの世界広すぎなくない?

俺の国はまだその世界の20㎞内でちまちまやっているのだけど?

まぁ先のことを考えても仕方ないし、今は目の前の事を片付けていこう。


「ふ~ん、そう」

「じゃあ早く体直してね~」


時間になったツキノは、元気いっぱいに診療所を後にした。

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