第69話 レッドキャップの思惑
馬謖の件が終わり、孔明は魔族将軍の方に問いかける。
「して、お前の名前は?」
「…」
何も話さない魔族将軍に、孔明は無言で姜維へ目配りをする。
両手の指の関節をポキポキならしながら近づく姜維を見て、魔族将軍はペラペラ話し出す。
「わ、わかった!」
「何でも話すから殴るのはやめてくれ!」
「あと、よかったら蜂蜜水を一杯くれないか?」
孔明は最後の言葉にピクッとなる。
そしてピットが孔明に耳打ちする。
「孔明、この魔族転生者ですよ?」
その言葉に、孔明は私にお任せをと小さく返事をする。
うん、やはり魔族にも転生者存在したか。
最初はないと思っていたけど、考えたら虫とかにに転生していた人もいるわけだし、今後は他の種族や魔物に転生も大いにありうるね。
ちなみに俺はこの転生者が誰かわかったし、孔明もすぐ気づいたみたい。
「では、質問だが…」
まず孔明は、陳平の手紙で裏が取れている部分の確認を行う。
驚いたことに、この魔族将軍の回答は、知っていることすべてが本当だった。
ここから孔明は自分の分からなかった事を聞き始める。
「お前たちはどこの国から援軍で来たのです?」
「はい、私たちは秦の隣国『魏』から参りました」
「魏だと申すか?」
「はい、魏の丞相である『ソウソウ』と申す転生者が」
「我らが主君であり、現在魏王である『ピレネッタ』侯へ何らかの策を上奏し」
「結果、こちらに兵20000をレッドキャップの援軍として派遣いたしました」
孔明は少し考えて、姜維に魔族将軍をラビット国に護送するよう指示する。
それと入れ替わるように、ツキノが山頂から戻ってきた。
「ねぇピット、わたしどうだった?」
どうだったと言われても…ピットは回答に困る。
「とても素晴らしかったですよ、ツキノ様!」
孔明の一言に、ツキノは跳んで喜ぶ。
「でしょ!でしょ!やっぱ孔明はわかってる~!」
「はい、最初の口上も素晴らしく、この諸葛亮孔明いたく感服しました!」
なんてことだ!あの諸葛亮孔明がお世辞を言っている!
俺はその光景に驚愕した。
まぁ、あんなヒロインアニメ全開の凶悪攻撃見ていたら、孔明とはいえ機嫌損なわせないため必死になるわな。
考えたらこのウサギ一族、ピット以外みんな頭のネジが飛んでいるな!
と言うか、この世界は普通の奴の方が少ないな。
「それでさー孔明」
「はい、なんでしょう」
「私一人でけっこーつよいんだけどさー」
「なんか…ほら…一人だと盛り上がりに欠けるんだよね~」
「でさっ、良かったら…誰か仲間を入れてください!」
どうやらツキノの勧誘作戦はうまくいっていないようだ。
確かに、ツキノのアクションにについていくにはミツバチさん達にはしんどいだろう。
それではと孔明はツキノへ提案する。
「確か、卑弥呼殿が申しておりましたが」
「最近、仇敵であるスズメバチと、戦っていたアシナガバチを勢力下においたと話しておりましたので」
「その者の中よりツキノ様が目にかなうものを仲間にされてはいかがでしょう?」
孔明の言葉に、ツキノは大喜びで飛び跳ねる。
「えー!いいの!」
「やっぱ孔明って頼れる~!」
「宜しければ、早速国へ戻られて卑弥呼殿と打ち合わせされてはいかがです?」
孔明の提案にツキノは目を輝かせる。
「いいの?私抜けても?」
「大丈夫でございます」
「一番の心配事だった今日の戦闘をツキノ様一人で終わらせてしまったので」
「あとは咸陽までやることはありません」
孔明の後押しにツキノは動く。
「わかった!」
「じゃあパパッと勧誘済ませて戻ってくるね~」
こうしてツキノは、ピットの部隊を脱退し、自分のチーム編成の為、姜維達と一緒に本国へ戻って行った。
ツキノ達の姿が見えなくなり、孔明はピットとの話を再開する。
「この度のレッドキャップ勢の動きが掴めました」
「彼らの狙いは、魏との共闘です」
ピットもこくりと頷く。
「レッドキャップは借りた兵で森を制圧後、自兵と借り受けた兵力で秦を魏と共に挟撃にするのでしょう」
「その為に宋とは事前に不可侵以上の同盟を結んでいたのですね?」
孔明の説明にピットも自身の考察を述べた。
「その通りです」
「仲の良くない宋と秦の情勢を見た亜父は、秦を攻撃する代わりにイワイの牽制を宋に申し出たのでしょう」
「つまり…魔族間は纏まっていないどころか戦争までやっていると?」
「間違いございません」
「魔族たちにとっても、世界統一後に邪魔になるのは隣国の魔族という事でしょう」
「それに、レッドキャップ内でも…」
そこまで話し、孔明は言葉を止めた。
「もしかしたら、魔族の中にも争いを好まないもの達もいるかもしれないね」
ピットの一言に、孔明も目を瞑り考える。
「どちらにしても、今はレッドキャップを倒すことが先決です」
「まずは咸陽へと向かいましょう」
ピットは頷き、咸陽へ進む準備を整える。
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