第12話
「シロ、聞いてくれる?丸山のおじさんが殺されちゃったそうなの。これは私の判断だけどたぶん海で会った奴の仲間に。」
「キュン?」
「何故かって?おじさんの船の上は血だらけでそこにおじさんの手だけがあったそうなの。そこには大きな鱗も落ちてたいたって。安達さんも見た事もないような大きな鱗。手の平くらいのサイズって言っていたから多分私が前に見つけた鱗と同じなのかもしれない。あの鱗は魚人の鱗だったんだと思う。そして、私が倒した魚人に仲間がいてそれが丸山のおじさんを殺したんだ。きっとそう。」
その言葉にシロは驚きの表情となる。朱音は口調こそ穏やかだが、内心は乱れに乱れていた。
「もしかしたらなんてないんだけど、私が最初に魚人を倒した時、誰かに話をしていたら、もし魚人を誰かに見せてたら、海にあんなのがいるって皆が分かっていたら、おじさんが海に行って殺される事もなかったんじゃないか?って、思うんだ。」
「クゥン。」
シロもどこか寂しげだ。
「もちろん、悪いのはあの魚人なんだろうけど、どうしても私があの時にあの魚人の存在を皆に知らせていれば、って考えちゃう。……私はもう、誰かが傷ついたり、死んでしまうような事になって欲しく無い。2度とこんな後悔はしたくない。例えまた何かの命を奪う事になったとしても!シロ、海に行って、何としてでも魚人を、魚人の居た痕跡を見つけよう。そして皆に海に危険な生物がいるって証明しよう。」
「キューン。」
「シロ、手伝ってくれる?」
「ワン!」
「ありがとう。」
こんな悲しい出来事が今後起きないように、写真でも何でもいい。あの魚人の存在を示す手掛かりを何か手に入れなければ。それがあれば警察なり海上保安庁なりが動くようになってきっと皆を守ってくれるはずだ。そうなれば誰かが犠牲になるなんて事は無くなる。それに魚人の調査をすればもっと何かしらの対応ができるようになる。きっと、きっとその筈だ。
「どれだけ早くあの魚人の事を皆に知らせるかだ。それ次第では犠牲者が少なくなる事に違いない。」
朱音は決意を胸にシロと海岸を目指す。そこに待ち受ける者も知らずに。
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