第13便 歓声と絆となにか
067 開会とカラの活躍
練習を始めて数週間が経った、快晴の空の下。
「――ではこれより、第八回高等部体育祭を開催します!」
スピーカー越しに、ぱっきりとした宣言が響き渡った。
カラフルなスモークを焚いた飛行機が四機、プロペラの唸りを伴って校庭の上空をフライバイ。
真っ直ぐに伸びる虹色の雲が、開会式に彩りを添える。
「曲芸飛行部、張り切ってんなー」
ティトが眩しそうに空を見上げたその横で、イスカはプログラムの紙へ目を落とした。
開会式の後は、まず準備体操、各学年の百メートル走、棒引きと続き、午前最後にイスカとティトも出場するローハイドが行われる予定だ。
昼食を挟んで最初の種目は、少し自信のある二人三脚。
その少し後にセキレイとカラが出る借り人競走、クラス対抗リレーと進み、閉会式で幕を閉じる。
出番はまだ先だ。もちろん応援もするけれど、しばらくはゆるりと過ごせそうだった。
「――四重が百メートル走とか意外だよな」
スタートラインに並ぶ見知った黒髪を見て、ティトが言う。
カラは種目決めの時、一番に百メートル走へ立候補したのだ。真面目で委員長である彼女のキャラクターはどちらかと言えば文系で、運動部の独壇場とも言えるこの競技に出るのは確かに意外だった。
「走ることが好きなんだとさ。速いかどうかはともかく、とは言っていたが……お手並み拝見といこうぜ」
「……そうだね」
練習の関係で、最近はティトやセキレイたちといることが多かったイスカだが、その事は初耳だった。
もしや四重さんと二人きりの時に聞いたのかな……? なんて邪推しかけたが、すぐにやめた。
「――位置について」
選手が一斉に構える。
用意、とピストルが空へと向いて、
――パァン!
「……おっ、速え!」
いつものストレートとは違い、ひとつ結びにした黒髪を流してカラは疾走する。
その速さはこれまた意外にも、他の選手に勝るとも劣らず。運動部でないことを加味すれば相当速い。
「カラーっ! がんばれーっ!」
「いいわよカラーっ!」
コーナーを抜け、応援席前に向かって走るカラ。
エナとセキレイは身を乗り出しながら声援を送る。
「四重行けーッ!」
ティトが叫んだその前を、カラが通過する。
その顔が声のほうを向いて、少し笑ったようにイスカには見えた。
パン、と二回目の空砲が鳴った時には、ゴールテープを引き連れた黒髪が揺れていた。
「委員長すっげぇぇぇ!」
男子からは歓声が上がり、女子からは大きな拍手が贈られる。
しばらくして戻ってきたカラにエナが飛びついて、暑いからやめてください、と引っ剥がされた。
セキレイが声をかけたことを皮切りに、わらわらと周りを囲まれるカラ。
女子の輪の外から、ティトが親指を立てて見せる。
人の隙間からそれを見つけて、カラは今度こそ確かに、嬉しそうに笑った。
「……んじゃ、行くかイスカ」
「あれ、そっか次だっけ」
「おおよ、我らがローハイドだ。さっさと勝って飯にしようぜ」
――――――――(章の始めと終わりに入るCM)
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