34話、ゴーレム


「ゴーレムが出た。見に行こうか」


「わ、いきます!」


「ごーれむ、みます!」


小休憩中に声をかけられた。渓谷での初の魔物だ。

ゴーレム、見てみたかったんだよね。


「隊員が対応している。あまり、近づきすぎないように」


ヴァルさんの後ろを着いていくと、先で金属音がしているのが聞こえた。

ヴァルさんと同じ格好の人が、ゴーレムの攻撃を剣でいなし続けているのが見える。


「おお、ゴーレムだ」


「いわ、ひと……」


想像通りのゴーレムだ。ゴツゴツした岩の人形が、大きな腕を振り回して騎士を攻撃している。

重そうな攻撃。しかし、騎士は軽々と受け流している。


「スモウ、連れてきた。あと数発受けたら、ゆっくり倒せ」


「あいよ。嬢ちゃん、ちゃんと観察しとくんだよ」


スモウと呼ばれた騎士は、大柄で強面だ。持っている剣も、ヴァルさんや他の騎士のものより大きい。

しかし、足さばきは軽やかで、受け流しも綺麗。スレスレで避けているように見えるが、最小限の動きで済むようにしているのだろう。

この騎士団の人達からすれば、こんなに強そうなゴーレムも雑魚なのだろうな。誰もスモウさんの心配なんかしていない。


数分で、ゴーレムは倒された。

正直、私だったら数分もたずに殺されるだろう。やっぱり、騎士たちは強い。


「どうしてそんなに強いんですか?」


ヴァルさんに聞いてみる。


「我々は、国でもトップクラスの実力だからな。聖騎士とはそういうものなのだ。特にスモウは、一対一の実戦なら私より強いだろう。その代わり、あいつは更新試験の座学はいつもギリギリなのだが」


更新試験なんてあるんだ。結構厳しいんだな、聖騎士団。


「ちなみに、一番強いのは……」


「いまここにいる中では、スモウの実力が一番高い。次いで、副団長補佐の私。あとはあまり変わらないか」


副団長補佐だったんだ。通りで指揮をとってると思った。


「聖騎士団全体でいえば、団長と副団長が別格で最強だ。副団長とスモウが戦うとすれば、副団長は片手のみで十分だろう」


ゴーレムを片手間に魅せながら倒せるスモウさんを、片手で倒せる…… インフレすぎて想像つかないな。


「だ、団長はどれくらいなんです?」


「団長はな…… そうだな、ドラゴンを素手で倒した、なんて伝説がある。本人は完全否定しているが、団長ならやりかねないと思えてしまうくらいの強さだ」


……マジモンの化け物では?

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