God's tickt ー神様の切符ー

パッチ・フミカ

第1話 3人の少年

世界で初めて鉄道が走り始めたころ


「浮浪児」とよばれる子供たちは、

今日も懸命に生きていました。


荒野に広がる草むらの中に、ぽつんと一つ、さびた古い汽車がありました。


「ノアは本当に絵が好きだな。そろそろ行くぞ?」

そう言ったのはブラントン。彼は少し大きめの帽子を被り、綺麗な青い瞳をしています。年は14~15歳くらいです。


「待ってブラントン。あと少しで完成するんだ」

ノアと呼ばれた少年は答えます。


ノアは黒くふわふわの髪で肌は茶色い。首には赤いスカーフを巻いていて、それだけが際立っており、ボロボロの服を着ています。ブラントンより、少し幼い印象です。


「さっきもそう言ってただろう?なあ、チャーリーも何か言ってくれよ」


「…ノアの事、待ってあげれば?」チャーリーは、本を読みながら答えました。

歳はノアと同じくらいで、髪は赤毛で少し長い。


「はいはい、わかったよ」

ブラントンは、ため息をつきながらチャーリーを見ました。

そして、じっとノアを待つことにしました。


3人は一緒に暮らしています。

このさびた汽車の中に、最初にいたのはチャーリーでした。

その次にブラントン、ノアと続いたのです。


朝日が町を照らすころ


ノアとブラントンは駅に来ていました。靴磨きの仕事をしているのです。

その間に、チャーリーは売れそうなビンを探しにいきます。


ブラントンが駅に来る、高価なモノを身に着けた大人たちに声をかけ

ノアがゴシゴシと靴を磨きます。

その日稼いだお金で、帰り道に市場でパンを買う。


それが毎日の日課です。


日が暮れていき、ノアとブラントンは靴磨きの道具を鞄に詰め、帰り支度をしていると…


ボオオオー!!


駅から汽笛の音が聞こえてきました。

「ノア、見てみろよ。今来たのはマンチェスター行きの夜行だ」

「よく知っているね」

「ああ、俺はいつかあの汽車に乗って、マンチェスターに行くのさ!」

「行ってどうするの?」

「鉄道員になるんだ!あの町は、ここよりも汽車が沢山来る」

「ブラントン、汽車が好きだもんね。きっとなれるよ」


そう言い、二人は夕日に照らされる帰り道を歩きます。

帰ったら、チャーリーと3人でパンを食べよう。


硬いけれど、3人で汽車の屋根の上で星を見ながら食べるパンは、

特別に美味しいんだ。





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