第三章 奇術団

第10話 次の町デメリオ

 銀翼の傭兵団は五人。

 まとめ役のニクラス。身長は百六十センチくらい。童顔で赤い髪。目はブラウン。

 腹が立つが、笑ったときのイメージは、トムクルーズ。十七歳くらい。自己流だが、結構強い。


 シーグルド。彼は百七十センチくらい。この世界では大きい方で、がっしりした体格。小型の盾も持っている。


 クレイグ。彼は百六十五センチくらい。剣を使う。


 エステリ。彼女は、百六十くらい。この世界の女性にしては高め。弓を使い、近接では、サバイバルナイフっぽい鉈を持っている。


 アウッティ。彼女は百五十五センチくらい。同じく弓とナイフ使い。


 基本冒険者で、帝国内を回っているようだ。

「いやあ。色々見てみたいじゃないか」

「それはそうだね」

 こっちにも女性がいるので、打ち解けるのは早かった。

 猟や罠の仕掛けを教えながら、一緒に旅をする。


「君だけは、別格なのかい? 皆のリーダーと言うだけじゃないね」

 ニコニコしながらコイツは……


「オネスティは俺達の命の恩人さ。俺達はニクラス達と違い、こそこそと恵んで貰ったり、少し盗みをしながら暮らしていたんだ。オネスティが、生きる技を教えてくれなきゃ俺達は死んでいた」

 ペラペラと、イサークはホントにもう……


 だがその言葉に、仲間達が頷く。

「そうか。僕たちは肩身は狭いが、村で生かしてもらえた。それは、幸運なんだな」

 淋しそうに、ニクラスは語る。


 国境の町を出て、次の町デメリオへ。この町。周囲は穀倉と牧畜地帯。

 田舎だが、食い物が美味いらしい。


 そして、畑を荒らす、害獣退治の仕事がかなりあるようだ。


「それじゃあな」

 ギルド前で別れることにする。

 俺達の荷車には、二重底になった床の下に大量の、金貨などが入っている。

「さっさと、商業ギルドに行って、安い家を探すぞ」

「おうっ」


 行って見ると、丁度良い物件が見つかる。

 町から少し外れるが、納屋付きの一戸建てがあった。


 元は、牧場があったようだが、老夫婦が引退して売りに出されていた。

「納屋には扉をつけて、鍵を閉められるようにしよう」

 そちらを、エーミルやルカネン達に任せて、俺達は家の中をかたづける。

 比較的、綺麗には使っていた様だが、雨に濡れる下半分は板が腐っていた。


 この世界では、塗料などは一般的ではなく、掘っ立て小屋などで埋めるときには天然タールも使うようだが、普通は木の表面を焼く。

 そう焼き杉の板のような感じだが、家の壁下半分とか、屋根とかだけが焼かれている。

 屋根には、木の皮なども使われていたりする。


 剣やナイフで、作業をする。

 製材や、大工さんの専用道具はオーダー品らしく、非常に高い。

 鍛冶屋さんに、こんなのが欲しいとお願いをするのだ。


 日本の記憶がある俺にとって、この世界は不便だ。

 そう思っているのは俺だけかもしれないが、愚痴を言っても仕方が無い。


 木は、勝手に切ってきて良いらしい。

 この辺りの林も、家の代金に含まれ、わずか金貨1枚だとは思わなかった。

 田舎あるあるだな。


 だが、カール達が不審な小屋を、林の中で発見する。


 周囲には、馬車の轍跡。

 小屋は、四メートル掛ける五メートルくらい。

 窓も何もなく、今は、人の気配もない。


 ドアを確認すると、なぜか、外からの鍵。

 それも、扉に取り付けた棒をスライドして、柱の穴に突き刺さす、ラッチと呼ばれる鍵。


「と言う事は、中から出てこないようにしているという事だな」

 恐る恐る、開ける。


 そうこの世界。全くモンスターがいないわけではない。

 このサイズの小屋に入って居るモンスター。考えただけでガクブルだ。


 だが、そう言うときは、大概何もない。


「空だな」

 ドアには、閉じないように棒を挟み込む。


 よく、風が吹いてドアが閉じ、主人公が出られなくなり、そこに盗賊とかがやって来て……

 絶体絶命とか。

 やりたくない……


 ここも俺らが買った土地のはず。

 不法な利用。

 元のじいさん達が、何かで使っていた小屋なら良いが……

 うーん。この部屋の真ん中に、ぽつんと置かれた机と椅子。


 窓は無く、端にはベッド。

 床には、草で編んだ敷物。

 何かを幽閉していたと考えるのが正解そうだが……

 そう思いながら、敷物を捲ると…… あるよ……


 敷物をどける。

 むろん机と椅子もどける。


 ガバッと開けると、床に紐を編んだ取っ手が付いていた。

 引っ張るだけで空いたが、階段まで出てきたよ。


 真っ暗だし、変な匂いがする。

 ああいや、糞尿の匂いだけど。

「拉致監禁の、忘れられたものじゃないよな……」

 ミイラ化した遺体など見たくない。


 ランプを持って来て、中に入る。

 当然棒の先につけて、空気があることを確認しながら入る。


 そうすると、ごついけれど簡単な格子状に作られた扉。

 コイツは、四方向にロックがある。


 天井側には枠から板が出てきて、ドアを押さえている。

 下側では、ドアから板が下がり、床に板が刺さるようになっている。

 重力があるから、最低二人がドアの上下で刺さった板を同時に持ち上げないとロックは開かない。

 よく考えているなあ。


 どう見ても、牢だよな。


 中はかなり広く、汚れているが何も居なかった。

 だが、いやな予感がする。


 そう、労働用奴隷。


 採掘場などで、強制的に働かされる罪人達とは別に、金銭的な問題で身売りがある。

 大昔のドラマよろしく、口減らしとして、親に売られて客相手とか、単純労働をする。

 それとは別に、誘拐された奴隷。

 誘拐された先で、借金の証文を書かされ、借金奴隷にされる。

 むろん金はくれない。


 そうこの世界は、まだ中世以前の世界。


「この小屋はやばい。見張っておくぞ」

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