学園一の美少女に脅されて付き合うことになりました。

赤瀬涼馬

 プロローグ

 昼神ユウマは絶賛大ピンチに陥っていた。目の前には艶やかな黒髪をなびかせた瑠璃色の瞳を持つ少女が立っている。

「ねえ、このことをバラされたくなったら私と付き合ってよ」

 目の前にいる少女・西園寺九音がそう言い放つ。

―――西園寺九音、国内でも有名な大企業の社長令嬢であり我が学園の高嶺の花である。

 そんな彼女が何の取り柄もない平凡な男子高校生の俺に告白してきたのだ。混乱しない方がおかしい。

 そんなことを心の中で考えていると。

「キミだって困るでしょ?――――校則違反の漫画を持ち込んであまつさえ読み耽っていたなんて、知られたら…………」

 畳みかけるようにそう言ってくる九音に返す言葉も出なかった。

「…………」

 事実であり正論であるため黙りこくるしかない。

 一方、九音はそんなこちらの反応を見てニヤニヤと意地悪な笑みを口元に浮かべている。

 さて、この状況をどう打開するかと考えていると。

「ねえ、昼神ユウマくん」

 フルネームで呼ばれ視線を彼女の方へ向ける。

「そろそろ返事を聞かせてもらえるかな?」

 先ほどの返事を急かす様に言ってくる九音。

「一つ訊いていいか?どうして俺なんだ。西園寺のような美人なら俺のような何の取り柄もない平凡な男子よりも釣り合う相手はいくらでもいるだろう、それともこれは単なる罰ゲームなのか?」

 ずっと疑問に思っていたことを口にする。

 すると俺の言葉を訊いた九音が烈火の如く顔を赤くして怒り出す。

「…………っ!!良い?そもそもこれは罰ゲームでもないし、私が貴方に告白したのも貴方のことが大好きだからに決まっているでしょ。それ以外の理由なんてないわ」

 力説する九音に少し気圧されつつも何とか曖昧だが反応する。

 ここまで言ってくれる彼女に対してこのまま何も言わずに立ち去ることもできる。だが、それは勇気を出して俺に気持ちを伝えてくれた彼女の想いを裏切ることになる。

 九音には申し訳ないが、正直に自分の気持ちを伝えるべく口を開こうとしたその時…………。

 俺の言葉を先読みした九音が、「あ、ちなみに返事はYES以外受け付けないけれど、私も鬼じゃないから選択肢を三つあげるわ。第一に私と付き合う、第二にはい、わかりました。

第三にYESから選んでいいわよ」

 と、太陽のように燦燦と輝く笑顔でそう言ってくる。その表情からは断固とした姿勢が見え隠れしている。

 この瞬間、俺は抗うことを諦めた。

「…………」

「沈黙は肯定ってことでいいの?」

 こうして、俺・昼神ユウマは学園の高嶺の花こと西園寺九音と付き合うことになったのである。そしてこの出会いが今後の人生を大きく変えることになるとはこの時はまだ知る由もなかった。


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