第19話 再び王妃陛下のいちゃもん
「エミール殿下にも『せっかくの晴れの舞台が台無しだ』と、言われました」
フェリシアはうつむく。
エミール王子ってそんな思いやりのないことを言うの?
あの場は確かにエミール王子にとっても『晴れの場』であり、誇らしい気持ちで最後まで終えたかったのかもしれないが……。
ジークならそんなこと絶対言わない!
そんな状況になったことがないからあくまで推測だけど、彼の今までの接し方を見て思う。
エミール王子はジークに会いに王宮を訪れた時、何度か顔を出してくれたことがある。
快活で言いたいことははっきりという印象だ。
だが、フェリシアの話を聞いていると、自分の欲求に素直過ぎて他者への思いやりがなさすぎる。
ジークが優しすぎるだけで、あの年ごろの子供じゃそれも不思議はないのかな?
「体調なんて気を付けていても悪くなる時はなります。あなたが気に病むことはないわ!」
「妃としての自覚が足りない、と、王妃様には言われました」
あんたが他人のことをとやかく言えるほど理想的な『王妃』なのか?
父から聞いたエシャール王妃の醜態の数々を思い出し私は思った。
「気にすることないわ」
「ありがとうございます、サラ様。本当にお優しいのですね。私、サラ様とはこうやって何度もお話しする機会が欲しいと思っています」
「あら、そう言ってくださるとうれしい! あ、このフルーツケーキ、本当に美味しいですわね」
「うちの果樹園で取れたリンゴやメルフルをドライフルーツにして一緒に焼いてます。シェフ自慢の一品です。よかったらお土産にも」
「まあ、家族が喜びます!」
◇ ◇ ◇
フェリシアとのお茶会はおおむね和やかな雰囲気で終わった。
彼女の今まで知らなかった一面も見ることができて行ってよかったと思う。
次の妃教育の日、フェリシアを見て私は微笑み手を振った。
フェリシアも同じようにして以前より打ち解けられたように思う。
授業は粛々と行われていたが、その途中、いきなり王妃が入って来て私たちの様子を見学した。
「見事ですわ。お二人ともさすがに王国指折りの名家のご令嬢ですわね」
珍しい!
王妃が私たちをほめている。
何か悪いものでも食ったか?
「しかも、お二人はずいぶんと親しくなられたようで、その輪の中に私が入れていただけないのは悲しうございますわね」
ウ~ン、これは……?
先日の二人のお茶会のことがもうばれている。
「どうせなら、この王宮を使ってお茶会をしていただきたいわ。お二人ともいずれはここに嫁いでくるのですから」
ああ、これは、私とフェリシアが個人的に親しくするのを妨害しにかかっている……。
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