第9話 川並衆との出会い



尾張での情報収集を続ける中で、友和は木下藤吉郎とその弟の小一郎と共に、川並衆の棟梁である蜂須賀小六と前野小右衛門に会いに行くことになった。彼らの協力を得ることで、今川家との合戦の計略と情報収集をさらに詳細に行うためだ。


#### 蜂須賀小六との会談


「友和殿、こちらが蜂須賀小六殿と前野小右衛門殿だがね。」藤吉郎がにこやかに紹介した。


蜂須賀小六が力強く手を差し出し、「おう、友和殿。蜂須賀小六だがや。あんたの話、藤吉郎から聞いとるで。こっちが前野小右衛門だがや。」


前野小右衛門も笑顔で頭を下げた。「よろしく頼むで、友和殿。」


友和は礼儀正しく挨拶を返した。「初めまして、紺野友和と申します。今日は今川家との合戦に向けた計略と情報収集についてお話を伺いたく参りました。」


蜂須賀小六は豪快に笑いながら言った。「おう、そりゃあええ話や。わしらも今川家との戦には興味津々やもんで、情報交換は大歓迎どえ。」


#### 計略の打ち合わせ


友和は真剣な表情で話を切り出した。「今川家との戦いが近づいていますが、彼らの動きを詳しく知るためには、川並衆の皆さんの協力が欠かせません。具体的には、情報収集と合戦の計略についてお話しさせてください。」


蜂須賀小六は頷きながら、「そうやな、川並衆は情報収集が得意やで。どこをどう調べりゃええか、教えてくれや。」


友和は地図を広げながら説明を始めた。「まず、今川家の動きを把握するために、主要な街道と川沿いの動きを監視しましょう。特に、今川義元の本陣がどこにあるのかを突き止めることが重要です。」


前野小右衛門が手を挙げて、「ほな、わしらが川沿いの監視をするわ。川並衆のネットワークを使えば、どんな動きも見逃さへんで。」


藤吉郎も興奮気味に加えた。「そんで、情報を集めたら、わしらがそれを分析して、どんな作戦を取るか考えるんや。」


#### 小一郎とのやり取り


木下小一郎が口を挟んできた。「兄さん、それなら僕も手伝えるよ。地図の読み方とか、情報の整理とか得意なんだ。」


藤吉郎は笑顔で弟の頭を撫でた。「おお、小一郎、頼りにしとるで。友和殿、こいつも使えるやつなんや。」


友和は感心したように頷いた。「それは心強いですね、小一郎殿。情報の整理と分析は非常に重要です。」

### 最終的な計略の確認


友和は全員の顔を見渡し、最後の確認をした。「では、皆さんの協力を得て、今川家の動きを把握し、最適なタイミングで攻撃を仕掛けましょう。情報が揃ったら、再度集まって具体的な作戦を立てましょう。」


蜂須賀小六は力強く頷き、「おう、わしらに任せときゃ安心や。情報はしっかり集めてくるで。」


前野小右衛門も自信満々に、「うん、情報収集と監視はばっちりやるで。安心しときゃあ。」


藤吉郎は友和の肩を叩き、「友和殿、これで計略は完璧や。今川家なんか怖ないで。」


#### 酒場での宴


計略の確認が終わった後、皆で近くの酒場に繰り出すことにした。酒場の暖かい灯りが出迎える中、友和たちは笑顔で店内に入った。


「よっしゃ、今日はみんなで一杯やろまいか!」藤吉郎が声を上げた。


「そりゃあええな、藤吉郎。おいしい酒を頼んでくれや。」蜂須賀小六も笑いながら賛成した。


酒場の女性たちが笑顔で迎えてくれ、彼女たちも宴に加わることになった。


「いらっしゃいませ、みなさん。今日はどんなお酒がいいですか?」明るい声で女性が尋ねた。


「ええ酒と、おいしい料理をたくさん頼むわ。今日は大事な仲間と一緒やで、豪華にいこう。」前野小右衛門が答えた。


#### 宴の始まり


酒と料理が次々と運ばれてくると、宴は賑やかに始まった。信長が最初に乾杯の音頭を取った。「今日は友和殿とその仲間たちを歓迎しての宴や。みんな、楽しんでくれや!」


全員が杯を掲げ、「乾杯!」と声を合わせた。酒場の中は笑い声と話し声で満ちていた。


「おい、藤吉郎。この酒は美味いなあ。どこの酒や?」蜂須賀小六が杯を傾けながら聞いた。


「これは尾張の名酒や。信長様のおかげで手に入ったんやで。」藤吉郎が誇らしげに答えた。


「そりゃあ、うまいはずやわ。信長様の選ぶ酒に間違いはないで。」前野小右衛門が笑顔で同意した。


### 女性たちとの交流


宴が進むにつれて、女性たちも会話に加わり、さらに賑やかになった。


「藤吉郎さん、戦の話ばかりじゃなくて、何か楽しい話をしてちょうだい。」女性の一人が甘えた声で言った。


藤吉郎はにやりと笑い、「ほんなら、わしの若い頃の話でもするかのう。実はな、昔は鶏を追いかけてばっかりやったんや。」と話し始めた。


「へえ、藤吉郎さんがそんなことしてたなんて、意外やわ。」女性たちは興味津々で聞き入った。


「ほれ、あの時は鶏を捕まえるのに必死でな、毎日泥だらけやったわ。でもな、捕まえた鶏を抱えて村に戻ると、みんなが褒めてくれたんや。特に女の子たちがな。」藤吉郎はわざとらしくウィンクしながら話を続けた。


女性たちは笑いながら、「藤吉郎さんってば、本当にお茶目ね。」と楽しそうに返した。


友和はそんな藤吉郎を見て微笑み、隣に座った女性と話し始めた。「お酒も料理も本当に美味しいですね。皆さんと一緒に楽しむ時間が何よりです。」


女性は優しく微笑みながら答えた。「ありがとう、友和さん。戦の話ばかりでなく、こうして笑い合えるのは大事なことやね。」


友和はうなずきながら続けた。「そうですね。戦いの合間にはこうした和やかな時間が必要です。ところで、今日は一つ、筑後の怪談話を聞かせましょうか。」


女性たちの興味を引くように、友和は話し始めた。「筑後には、夜になると現れるお化けの話が伝わっています。特に有名なのは、古いお寺に住む幽霊の話です。」


女性たちは目を見開き、「どんな話なの?」と好奇心いっぱいに尋ねた。


友和は少し声を低くして、「昔々、そのお寺には美しい僧侶が住んでいました。しかし、彼には秘密があって、夜になると一人の女性が彼を訪ねてくるのです。その女性は、なんと幽霊だったのです。」


「幽霊って、本当の話なの?」一人の女性が震え声で尋ねた。


「そうです。その幽霊は、愛する人に会えずに亡くなった女性の霊魂で、僧侶を訪ねる度に泣き叫んでいました。ある夜、僧侶がその霊を慰めようとしたところ、彼自身も幽霊になってしまったという話です。」友和はさらに声を落とし、恐怖感を高めた。


女性たちは息を飲んで話を聞き、「そんな怖い話、もうやめてよ!」と笑いながらも少し怖がっている様子だった。


藤吉郎はその様子を見て笑いながら、「ほんなら、今度はわしのスケベな話でもするか。実はな、鶏を追いかけるだけじゃなく、村の娘たちとも遊んどったんや。」と茶化して話題を変えた。


「藤吉郎さんってば、本当に悪い人ね!」女性たちは大笑いし、藤吉郎のスケベな話に興味津々で耳を傾けた。


その後、宴はさらに盛り上がり、皆で笑い合いながら親交を深めた。女性たちの笑顔と笑い声が響き、友和と猫たち、小六や藤吉郎、小一郎たちは、新たな絆を感じながら夜を過ごした。


「今日は本当に楽しい夜だったね。」友和は感慨深げに言った。


「そうやな、友和殿。これからも一緒に頑張っていこうや。」小六が微笑みながら答えた。




#### さらなる計略の話


宴も終盤に差し掛かると、友和は改めて皆に声をかけた。「今日の宴で、改めて皆さんとの絆を感じました。これからも協力して、今川家との戦いに備えましょう。」


「おう、友和殿。その意気や。わしらも全力で支えるで。」蜂須賀小六が力強く言った。


前野小右衛門も同意し、「そうや、情報収集も監視もばっちりやるで。安心しときゃあ。」と付け加えた。


藤吉郎は笑顔で友和の肩を叩き、「友和殿、これで計略は完璧や。今川家なんか怖ないで。」と再度確認した。


### 桶狭間の合戦


### 出陣の準備


永禄3年(1560年)5月12日、今川義元は大軍を率いて駿府を出陣した。彼は駿河国から尾張国へと進軍し、18日に沓掛城に入った。今川軍はその進軍途中で、周辺の農村や町を通り過ぎ、多くの兵糧と物資を確保した。

「これで、尾張への道は確実に開けましたな。わが軍の勢いをもってすれば、織田信長など一蹴でござろう。」義元は高らかに宣言した。

「はい、義元様。大高城へも兵糧が届いており、松平元康殿も万全の体制です。」側近が答えた


その頃、織田方では信長が清洲城で雑談をしていた。友和と猫たちも同席している。


「おい、信長様。今川義元が動いとるでよ。」蜂須賀小六が報告した。


信長は悠々と茶を飲みながら、「おお、知っとるわ。そんなことより、ここの茶はうまいなあ。」


友和が焦った表情で、「信長様、今川軍が進軍しとるんやで。なんとかせな。」と言う。


「まあまあ、落ち着け。焦ってもしゃあないやろ。」信長は笑いながら答えた。

5月19日、信長は織田軍の軍議を開いたが、家老衆は皆、清洲城に篭城するよう進言した。


「信長様、ここで待つのが得策やで。篭城が一番や。」家老の一人が言ったが

信長は、返事をしなかった。

家老衆が「運の末には、知恵の鏡も曇る」と引き去っていく

川並衆からの情報

出陣前に、信長と友和は川並衆の棟梁である蜂須賀小六から情報を得るために会合を持った。川並衆は水運や情報収集に優れ、戦略的な情報を提供する役割を担っていた。

「蜂須賀小六殿、今川軍の動きについて何か新しい情報はありますか?」信長が尋ねた。

蜂須賀小六は地図を広げながら答えた。「信長様、今川義元は沓掛城に入った後、さらに大高城方面へ兵を進める予定です。松平元康殿も兵糧を届け、攻撃の準備を進めております。」

「なるほど。それで、わが軍の動きはどうするか…」信長は地図を睨みながら考え込んだ。

信長の決断

5月19日(6月12日)3時頃、今川軍の松平元康と朝比奈泰朝の部隊が織田軍の丸根砦、鷲津砦に攻撃を開始した。明け方になると、丸根の砦、鷲津に今川軍が襲いかかってきたことを佐久間盛重らが織田家に知らせた。

「殿、今川軍が攻めてきました!」佐久間盛重が息を切らせながら報告した。

信長は飛び起きて、「おお、とうとう来おったか!」と言って、幸若舞『敦盛』を舞い始めた。


信長は「人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり」という節を舞いながら、戦いの決意を表明した。

友和が焦り気味に言った。「舞うのもええけど、早よ準備せな!」

信長は笑いながら、「わかっとるわ、友和。ほれ、みんな準備や!」と小姓衆5騎のみと友和と猫たちを連れて出発した。


#

#### 戦場へ向かう道中


道中、友和はポポとバドに周囲を警戒させた。猫たちは素早く動き、情報を集めながら進んだ。


「友和様、今川軍の動きが活発です。準備を整えて進みましょう。」ポポが報告した。


「そうだな、ポポ。皆、気を引き締めていくぞ。」友和は猫たちに声をかけた。

今川義元の自信

沓掛城にて、今川義元は側近たちと共に戦略を練っていた。

「義元様、織田信長はまだ動きを見せておりません。これが好機かと。」側近が言った。

義元は自信満々に笑みを浮かべた。「うむ、そうじゃな。わが軍の力をもってすれば、信長ごときは取るに足らぬ存在よ。」


#### 熱田神宮での祈願


午前4時頃、信長一行は居城の清洲城を出発し、8時頃に熱田神宮に到着した。鷲津・丸根の砦が陥落したと思しき黒煙を観測した。


「信長様、砦が燃えてますわ。急がなあかん!」友和が警告した。


「わかっとるわ。皆で祈願してから出発や!」信長は熱田神宮で祈りを捧げた後、軍勢を集結させた。


#### 善照寺砦での準備


10時頃、信長の軍は鳴海城を囲む砦である善照寺砦に入っておよそ2,000人から3,000人の軍勢を整えた。


「さあ、皆の者、準備はええか!」信長が声をかけると、全員が「はい!」と答えた。


友和も猫たちに指示を出した。「ポポ、バド、周囲を警戒しろ。ミナ、コムギ、傷ついた者が出たらすぐに治療だ。」


「了解しました、友和様!」猫たちは一斉に動き出した。


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