超魔法コルダ

貴機器

第1話 夢その1

約300年前、突如世界中に様々なモンスターが出現した。

奴らは世界中を蹂躙し、人々の平和を脅かした。

その250年後、人類にも魔法を使って戦えることが発覚した。

両手首、両足首の真ん中に存在するコルダ器官から生成されている コルダ という物質が、炎、水、風、雷の4つの属性を生成することがわかり、 クラスタル鉱石を手や足に触れることで、手や足に属性が発現し、魔法を放つことができることが確認された。

世界中の魔法を使える者達が集まりモンスターから人々を守る組織 KAS が設立された。

KASの活躍により世界は以前とは比べ物にならない程平和になった。


――そして現在


「第35回アファール中学校卒業式を挙行いたします。」


校長先生の声が体育館に響く。

今日は、俺が通っている中学校の三年生の卒業式だ。

俺は1年生なので主役ではないが、卒業式を盛り上げるための一人である。

1ヶ月間、一、二年生のみんなで先輩達に贈る歌を練習していた。

歌うのは卒業式の後半なので、それまでは、パイプ椅子でじっと待っていることのみ。

卒業式が短いのならいいのだが、予行演習のときに歌い始めるのに約3時間かかったので、流石にきつい。

俺は姿勢が良いため、ましなのだが、横の猫背の男子は、姿勢をよくするためにかなり無理をしているのが伝わってくる。


卒業式が中盤に入り始めた時、、、体育館のステージの上空から爆発音と同時に体育館の天井がいきなり落下した。


「「「…何が起こったんだ?」」」


複数人がそう呟く。

俺も同じことを考えていた。

幸いなことに真下に人がいなかったので、怪我人は出ていないが、、

落下した天井によって発生した砂塵の中から一つの黒い人影が見える。

その黒い人影は、手と手を胸の辺りであわせて叫ぶ。


「『上昇する竜巻(ライジングトルネード)』!!」


砂塵が上昇する風に乗って消えていく。

落下した天井の上にいた黒い人影の正体が露わになった。

そこには、全身が黒い布で覆われている長身の人型が立っていた。


「我は、ある男子生徒を殺しに来た者だ。ここにいる512人は一人も逃がさぬ!」


そいつは低い声でそう言いながら、右腕を物凄く速く外側にスライドし、右手から鋭利な三日月状で半透明な物体が放出した。

それがステージの前にいる男子生徒に命中した。

男子生徒の体は上半身と下半身の二つに切断された。

黒衣の戦士は次から次へと男子生徒達を真っ二つにしている。


「「「きゃあーーーー!!!」」」


体育館にいるほぼ全ての人達が悲鳴をあげ、蜘蛛の子散らすように逃げていく。

ステージから一番離れている保護者の方々が出口の鉄扉を開こうとしている。


「私達がKASに助けを呼んできます!」


夫婦と思わしき二人がそういいながら鉄扉を開くと同時に黒衣の戦士が叫ぶ。


「一人も逃がさぬ、といったであろう!杭はもう打ち込んでる!!『風竜の古城(ふ うりゅうのこじょう)』!!」


出口には大量の半透明な刃物のような物が回転している。


「何だこれは!触れたらどうなるんだ?」


男の人が大きな声で言うと、


「そいつに突っ込んでくれると、我は楽ができるのだが…。『風切(かざきり)』!」


そう呟きながら、生徒達を真っ二つにしている。

まるで、 ドラゴンがブレスで虫を殺しまわっているような状況。

外に出ることができず、体育館で殺されないように逃げ回っている人々。

俺も殺されないように逃げ回っている。

くそっ、能力者相手じゃ勝てない。

いや、人が殺されているのに逃げ回っている場合じゃない。

助けを呼べてないから、KASは来ないと思う。

俺があいつを止めてみせる!

俺は黒衣の戦士に向かって走り出した。

策は無いが、運動神経と動体視力はいいので、技を避けることができるかもしれない!もし回避することができたなら、あいつを殴って倒す!

……うん、大丈夫かな?急に自信がなくなってきたが、俺は立ち止まらなかった。


「「「助けてくれー!!!」」」


体育館の隅にいる複数の男子生徒たちが目の前にいる黒衣の戦士に向かってそう叫ぶ。


「ここにいる人間を一人残らず殺すのが我が役目。平和のため死ねーーーー!!『風切(かざきり)』!!」


「「「うわーーーー」」」


男子生徒達が叫ぶ。と同時に、


「やめろーーーー!!!」


そう言いながら黒衣の戦士に向かって走りだす長身で茶髪の男子生徒がいた。

その男はコサージュを胸につけているので、三年生だとわかった。

しかし、時すでに遅しで、無駄であった。

男子生徒達の体は上半身と下半身の二つに分かれていた。


「くそッ、これでもくらいやがれ!!『鉄の衝撃(メタルインパクト)』ーーーー!!」


体育館に沢山並べられているパイプ椅子をがっしりとした両腕で持ち上げ、体を回転し、パイプ椅子を黒衣の戦士に投げつけたのだ。


「ッ、痛ってーーーーーーー!」


見事に後頭部に命中し、黒衣の戦士は後頭部を両手で抑えながら、床にゴロゴロと転げ回っている。


「ッしゃーーーー!!!どうだ俺のメタルインパクトはよお!!」


「ッーーー!お前は絶対に楽には殺さない。お前が謝ろうがじわじわとなぶり殺しにしてやるわ!!まずは左腕からだ、『風切(かざきり)』ッ!!」


「やっべ!!」


「あぶなーーい!!」


俺は3年生を突き飛ばした。

行けば殺されるということをわかっていながらも。


「ッ!!お前なんで俺を助けたんだ。殺されるぞ!!」


少し怒り気味で言ってきた。


「早く逃げましょう!俺についてきてください!」


俺は体育館の物置部屋を指さした。

不思議に思っていそうな顔だったが、ハッとしたような顔になって頷き、二人で走り始めた、体育館の物置部屋へと。


「ハッ!運が良く助かったみたいだが、次は外さぬ。」


黒衣の戦士も二人を追いかけ走り始めた。

二人は物置部屋に着き、急いで扉を閉めた。


「俺もあいつを倒そうと考えていたんですけど、まさか他にも倒そうとしている人がいるなんて思いませんでした。」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないぞ!はやく武器になるものを探すぞ。」


「……すみません。」


そうだ、はやく武器になりそうなものを見つけないと、あいつがこっちに来るんだった。

先輩がパイプ椅子を投げつけた時かなり効いていたので、鉄でできた物を使うのがよさそうだな


「この鉄パイプなんてどうでしょうかっ!!」


「うーーん、それもよさそうだが、やっぱ俺はさっき使ったパイプ椅子がいいな。」


「そうですか……。俺はこれを武器にします。」


二本もっていた鉄パイプを一つ戻そうとしたときに、


「『風切(かざきり)』ッ!『風切(かざきり)』ッ!『風切(かざきり)』ーーーッ! 」


鉄扉がバラバラに切断し、やつが物置部屋に入ってきた。


「ふーーーー、結構技を使ったな。いや、鍵かかってなかったのかっ!普通に開ければよかった!無駄撃ちじゃないか!くっそーー、あいつらどこだ?絶対に許さん!!」


俺達は物置部屋のもう片方の扉から出て体育館のステージにいるので、そこにはいなかった。


「…俺に作戦がある。お前は陽動を頼む。体育館の出口の所まであいつを誘導してくれ。」


「……俺はあなたを信じます。あいつに立ち向かう姿は本物でしたから。俺もあいつを止めたい。」


「ありがとう。絶対にあいつを倒してやるっ!!」


先輩はパイプ椅子を右手で持ちながら2階のギャラリーへと駆け出した。


「…よしっ!絶対に成功させるぞ!」


俺は体育館の中央で、物置部屋で暴れている黒衣の戦士にむかって大きな声を出した。


「おーーーい!!誰もいない物置部屋で必死に人を探している黒い布の人ーーーっ!!俺はここにいるぞ!!悔しかったらこっこまでおいでーーっ!!」

ふざけた調子で黒衣の戦士を煽った。


「貴様ーーーっ!!どれだけ我を馬鹿にすればきがすむんだ!ぶっ殺すっ!!『風切(かざきり)』ッ!」


物置部屋からでてきて俺に向かって技を撃ってきた。

鋭利な三日月状で半透明な物体は俺に向かって直進する。

やっぱり、めちゃくちゃ速い。

けど、距離があるから避けれるっ!

左に跳んだので、回避することができた。

よしっ!後ろ見ながらなら避けられる!このまま出口のほうまで誘導するぞ!

俺は全力で出口のほうへと駆ける。


「クッソーーーッ、避けやがって!!『風切(かざきり)』ッ!『風切(かざきり)』ッ!『風切(かざきり)』ーーーッ! 」


くっ、三連発か。

だがまだ距離はある!

俺は三方向から来る技を床に身体を擦り付けて滑り込むことで回避した。

俺は遂に出口についたが、やつはまだ体育館の中央あたりにいる。


「まだ生きているのかっ!『順風満人(じゅんぷうまんにん)』ッ!」


黒衣の戦士の後ろに風が纏われている。


「は、速くなってる!移動速度がさっきと比較にならないほど速くなっている! 」


さっきまではかなり離れていたのに、もう目前に来ている。


「ハッ、もう目の前だぜ!くらえ、『風拳(ふうけん)』ッ!」


黒衣の戦士の右手に風が纏われている。

一瞬で間を詰められ、どこに回避すればいいのか頭が回らない。

でも、拳が前に来るのは分かる。

なぜだろうか。


「後ろに跳べーー!!喰らいやがれーーー『鉄の隕石(メタルメテオ)』ーーーッ!!!」


先輩の声に従い俺は後ろへ跳んだ。

すると、俺が元いた場所へと来た黒衣の戦士の頭上に向かって、先輩が2階のギャラリーからパイプ椅子を両手で持ちながら落下し、突撃した。


「あがががががががががががが………。」


「ッしゃーーーー!ついに、ついに、倒したぜーー!やったな、相棒!」


「はいっ!さすがです、先輩!」

二人で激しいハイタッチを何回もしていると、


「あいつら黒衣を倒したのか…。やったーーー!!助かったぞーーっ!!」


周りから歓声がきこえてくる。

体育館にいる人達もはしゃぎ始めた。

二人のハイタッチが落ち着くと、


「お前が陽動をしてくれたおかげで、倒すことができたぜ。」


「いえ、…先輩の作戦凄かったです。2階のギャラリーから飛び降りることなんて俺にはできません。」


「そうか?んー、まあ、俺、恐怖心があまりないからなー。あっ、そうだった!君の名前は?俺は…」


先輩が自分の名前を名乗ろとした瞬間、


「……、許さん。許さん、許さん、許さん、許さん、許さん、許さん、許さーーーーーーーーんッ!!!」


「まだ倒れいてなかったのかよっ!やべーぞこれは。」


「先輩の鉄の隕石(メタルインパクト)を喰らったのにたおれていないとは。」


「嬲り殺すのはやめよう。今すぐお前たちを殺す。殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、ぶっ殺ーーーーーーーーすッ!!!『風切乱舞(かざきりらんぶ)』ーーーーッ! 」


空中へと飛び跳ね、体育館の中心に移動し、物凄い勢いで回転し始め、風の渦を発生させた。

パイプ椅子が風で吹き飛ばされている。

風の渦の中心には、黒衣の戦士がいる。

風の渦から、数え切れない程の風切が放たれる。


「「「うわーーーー!」」」


乱射された風切が生徒達に直撃し、腕や足が切断されていく。

俺たちは、パイプ椅子を盾にしながら、うつ伏せしている。


「まずい、出口はまだ結界があるからでれねぇーし、このままじゃ俺たち死ぬぞ?」


「くっ、ここまでか。…ん?」


無数の風切が 体育館の壁などにあたっている。

もしかして、このままやつが乱射するのをやめなかったら、体育館は崩れ、やつの頭上に天井が落下するのではないか?


「先輩、あと少し耐えれればやつを止めれるかもしれません。みんなをステージのところへ避難させましょう!」


「あーー、なるほどね。だが、ステージに向かう途中で死ぬよな。このままうつ伏せ状態でも……。うーーん、よしっ、俺は天井がないステージのところまで移動する!」


「そう言うと思ってましたよっ!でも、どう移動すればいいのでしょうか?匍匐前進しますか?」


「…いや、俺は、普通に走ってステージまで向かう!地道に進むのは好かんのでな。もしあったたとしても、運が悪かったと思えばいい。お前は?」


「……俺もやっぱ走ってステージまで行きます!」


「決まりだな。俺が3、2、1と合図したら俺は左端、お前は右端で行く。大きな声でステージへ行くようにここにいる人達に言うぞ。……3、2、1、走れっ!!」


二人同時にうつ伏せ状態から起き上がり、それぞれ体育館の右端、左端へといき、ステージに向かって全力で走り出す。


「お前らーーーっ!!!ステージのところまで行かないとやべぇーーぞ!!!」


「みんなーーっ!!!ステージのところまで移動してくださいっ!!!」


俺は大きな声で叫ぶ、黒衣の戦士が出す風の音よりも。

生徒達は、体育館の隅に縮こまっていたり、うつ伏せ状態の人がほとんどだった。既にステージのところに10人くらいが落下した天井を盾にして固まっている。


「そんなこといわれても動けねーよっ!助けてくれっ!」


体育館の出口の近くの隅でうつ伏せ状態の男子生徒が怒り気味で叫ぶ。

助けに行きたいのは山々だが、一人助けるとみんなも助けないとかわいそうだし、体育館が崩れるまでの時間は余り残っていないと思う。

ごめんなさい、天井が落下したときに、潰されないように空間ができることを祈ります。

そういえば、さっきから大量に乱射されている風切が俺にあたっていないな。

しかも、どこにとんでくるかが分かる。

さっきも、黒衣の戦士の技が真正面から来るのが分かったし、俺、勘が鋭いのかな。

そんなことを考えているうちにステージのところに到着した。

落下した天井の後ろに、うつ伏せ状態の先輩がいた。


「おっ、お前も無事だったか!何人かこっちについたみたいだが。」


「先輩こそ無事で良かったです!」


そんなことを言いながらすぐにうつ伏せ状態になる。

さっき見た時よりもステージの人数が増えているのがわかる。


「そういえば、走っているときにお前を見た時、あいつの技が避けているように見えたんだが。」


「…? そうなんですかっ!」


「ああ、あれって直線に進むよな。それなのに、お前に向かっているやつは、お前の近くになると別の方向へとカーブしてたんだ。」


「それ、私も見ていました。」


横にいた女子生徒が呟く。


「あなたのほうに向かってる風切だけが不自然な動きをしていました。」


「…俺もなんか違和感を感じるなと思ってたら、そういうことだったのか。」


当たらなかったのは運が良かったんじゃなくて、風切が俺のことを避けていたのか。

そういえば、技がカーブするの分かってたな。

いわれてから気づいたけど、風切が直進技だったのに、カーブするっておかしいよな。


「先輩は風切をどう対処しましたか?」


「…?ただ走ってただけだ!俺は運がよかったから数回かすっただけですんだ!大きな傷はないぜ!」


そう言いながら 先輩は、右手でグッドサインをみせた。

俺は風切が避けていたので傷はないが、先輩は俺と同じように風切は避けていないないのにかすり傷が数か所できただけで済んだのは、ものすごく運がよかったからと考えていいのだろうか。

じゃあ、俺はなんで風切が避けてたんだ?

…いまは、そのことについて考えるのはよそう。

体育館の壁が次々と切断されていく。

もうすぐで、天井が落下するだろう。


「「「助けてくれーーっ!!」」」


ステージにいない生徒や保護者などが助けを求めている。

見た感じ、ステージについてなくて生存している人が8人くらいいる。

天井が落下するまで少しだけ時間があると思う。

俺のほうに来る風切は避けてくれるので、助けにいくことができる。

よしっ、さっきは見捨てしまったけれど、一人でも多く命を救うぞ!


「俺、ステージまで来れていない人を連れてきます!先輩達は、ここで待っていてください。」



「お前何言ってんだ?もうすぐで天井が……。」


俺は先輩が話している途中で、まだステージに来れていない人を助けに行くために走り出した。


「あいつ……。間に合えよ。」

































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