第8話:(4/4)悠人のタロット戦記(青銅の砂漠の戦い)
ゴーレムの体が崩れると同時に、悠人はさらにゴーレムの大きな体に跳び乗った。彼の両足は倒れたゴーレムの首の付け根に正確に位置し、全体重をかけ踏みつけるようにして足裏から「神罰裁断」を放った。その打撃音はまるでゴーレムの体を地面に打ち付けるように周囲に鳴り響き渡った。周りのゴーレムたちは救出に駆けつけるどころか、自らの存在すら危うくなり、アイラの暗黒卿の餌食となっていった。
こうして、初の連携で悠人もアイラも互いに討伐を終えた。
「悠人、お疲れー! 私も終わったわ」とアイラは小気味よくいう。今回、悠人との連携が近接と遠距離の役割分担としてうまく機能し、アイラの喜びもひと塩だ。「ああ、アイラのおかげで助かった。ありがとう」と悠人も素直に感謝を伝えた。
進むうちに、比較的狭いこの階層で次の階段の入り口が見えてきた。
「次に行きましょ」とリリスは軽快に階段を降りていく。「ああ、行こうか」と悠人が答え、アイラも「ええ、行きましょ!」と答えて三人は意気揚々と降りていった。
悠人、リリス、アイラの三人が十一層の下階段を降りると、次に視界に広がる光景は砂丘と呼べる場所だった。十二層は「青銅の砂漠」と呼ばれ、広がる砂の海の中に巨大な蛇が現れる場所だ。砂漠の熱気が立ち込め、乾いた風が吹き荒れる中、遠くには次の階段の入り口が見える。この階層は迷うことが少ないが、現れる蛇は強敵で、幾人もの命を奪ってきた凶悪な大蛇が潜んでいる。
進む中、彼らの目前で地中から古代の蛇神が現れた。巨大な身体が砂をかき乱しながら襲いかかるが、悠人は「隠者」のタロットカードの力を借り、一瞬も足を止めることなく動き続けた。
彼の動きは砂の上でも異常に優雅で、蛇神の攻撃を巧みに避けながら、次の一撃のチャンスを窺っていた。砂丘を駆け上がり、躍動感あふれる動作で空中から猛スピードで蛇神に反撃を加える。悠人の攻撃は精密に計算されており、一つひとつの動作に無駄がなかった。
戦いが激化する中、蛇神が強力な毒を含んだ砂塵を吹き出す。悠人は即座にその毒砂から距離を取り、風の流れを読んで素早く位置を変えた。この環境の変化を瞬時に察知し、自らの力に変える能力が彼の戦術の中心にあった。
「アイラ、砂嵐を頼む!」と悠人が叫ぶ。アイラは砂漠の特性を活かし、砂嵐を起こして蛇の感覚を混乱させる。これにより蛇神の温度感知能力が低下し、悠人にとって有利な状況が作られた。
悠人は「ワンドペイジ」と「審判」のカードを組み合わせ、「神罰裁断」を解放した。神聖なる光の輝きが蛇神の頭部に甚大な一撃を加え、審判の力がその罪を裁く。この攻撃が蛇神にとって致命的であり、その巨大な身体は砂の中に崩れ落ちていった。
「悠人やったわ!」アイラの歓喜に満ちた声が響く。「ああ、アイラのおかげで助かった」と悠人も笑みを見せた。「二人ともその調子よ」とリリスも嬉しそうに言った。
息を整えながら悠人は深く一息つき、銀色の粒子が胸に吸い込まれる。彼の目指す階位の昇格は、単なる数の上昇ではなく、内面的な成長と密接に結びついていた。戦いの中で経験を積み重ね、各タロットカードから学ぶことで、より賢明で強力な戦士へと進化していた。
次に彼が目指すカードの獲得は、彼の冒険に新たな深みと戦略をもたらす。タロットカードを手に入れるためには、さらに多くの敵を倒し、階位を「総裁」へと押し上げなければならない。
悠人とリリスとアイラの旅は、悠人が次々とタロットカードの力を解放すれば、異世界の平和をもたらす結果に繋がっていく。ただし、悠人自身は己の成長のためだけに行動しており、神からの蘇生の対価としても動いている。たまたま神からの使命と自身の成長が一致していただけで、彼が真に求めるものは他にあった。実は平和への興味は薄く、成長のためなら平和がなくとも良いとさえ思っていた。
彼の力の源泉である階位の昇格は、彼の人生の新たな章を象徴していた。彼らの冒険は単なるサバイバルではなく、自己発見と自己超越の旅でもあった。アイラとリリスは、悠人の背後で警戒を怠らず、同時に彼の成長を支える存在として立ち振る舞っていた。彼らの絆は戦いを通じて強化され、それが彼らの旅をさらに深いものにしている。
十三層へいくか一旦戻るか考えていたところ、ようやく蛇神が粒子化し、巨大な魔石がその場に佇む。その大きさは人の背丈ほどもあり、見かけはみずみずしい白い果物のように見えた。
「リリスこれ、入るか?」と悠人が尋ねると「うん。大丈夫よ」とリリスは平然という。一体どれだけ入るのかと驚くほどの量だろうと悠人は想像していた。
それを見ていたアイラは「ねえ、今日ってかなり稼いだよね」と満面の笑みを見せた。リリスはちょうど頃合いかという感じで「魔石がかなり溜まったから、換金しに行きましょ?」と言った。悠人も同意し「そうだな、俺の方もかなり埋まった状態だから、一気に放出するか」と答えた。「それじゃ、さっそく行きましょ!」とアイラはいつになく意気揚々と元来た道を戻り始めた。
これはまた勝利の美酒だと悠人とリリスは思い、苦笑いを浮かべた。彼らもまたご馳走にありつけると思うと、お腹が鳴る気がした。目指すはギルドと酒場だと、皆が和気藹々と向かう。
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