47 夏休みってやつは(1)
「う、んん〜〜〜〜〜」
デスクに向かい思いっきり伸びをすると、そばでゲームをしていたケントが、
「あっ……、あ〜あ〜あ〜あ〜〜〜」
と言いながらゲームオーバーになった。
「…………はっはー」
横目で見ながら笑ってやる。
ヒトの部屋で宿題もせず寛いでいるのは、一体どういう事かと思うわけだ。
「お前、宿題やんなくていいわけ?」
「あ〜〜〜〜……、りょーくん最後まで教えてくれないんだもん」
すると亮太は、ぬ〜……という顔をしてケントを睨む。
「お前のは答え教えてくれって言ってるのと同じようなものだからなぁ」
「…………そんな事ない」
不貞腐れたようにそう言うと、ケントはベッドに突っ伏した。
やめろ。それは俺のベッドだ。
「あの二人呼ぶかぁ」
そのケントの言葉に、反応する。
「連絡先、知ってんの?」
「え、お前知らないの?」
キョトンとするケントに、つい期待してしまう自分が居た。
れおくんに……会える?
「俺も知らんよ?」
なんだよ!知らないのかよ!!!!
「何だ〜〜〜〜お前が知ってるのかと思ってたのに」
ほんと、期待しちゃったじゃんよ……。
「サクしか知らないよ」
「俺も、サクしか知らない」
「…………」
「しょうがないからサク呼ぶか」
ケントは気を取り直してサクに電話をかけ始めた。
「あ〜、サク?一緒に宿題やらん?りょーくんちで」
電話をしながら、ケントはベッドの下を覗き込む。
何も無いよ!!
「あ、俺ら、れおくんの連絡先知らんくてさ。……あ、うん。あ、ほんと?」
ケントの声のトーンからして、サクはどうやら来るようだ。
「おー、じゃあお願いするわ」
あ。
『れおくんの連絡先』『お願いする』。
これは……もしかして。
サクは何気にコミュ力が高い。
それに、一緒にいて不快にならない。
懐が深いというか、存在が心地よいというか。
入学したての頃、ただ隣に居て、空気が良かったというだけで、一緒にいるようになった仲だ。
出会ってすぐに連絡先を交換したのを思い出す。
サクとれおくんも、弁当仲間として二人でいる事が多い。
サクの事だし、もしかしたら、と思う。
ケントが通話を切り、顔を上げるのを待つ。
「サク、来るって。れおくんにも連絡してみるって」
「そ、か。4人揃うんだな」
あまり嬉しそうにならないように気をつけながら、返事をした。
なんだ。
思ったより早く会えるじゃん。
それからすぐ、二人はやって来た。
「れおくん、久しぶり」
声をかけると、礼央は、いつものほやっとした顔で笑った。
「久しぶり、みかみくん。2週間ぶりくらいかな」
それにしても、サクとは連絡先交換してたなんてな……。
そりゃ、れおくんのことだから、聞いたら教えてくれるよな。
亮太はひとつため息を吐く。
まあ、夏休みはこれからだ。
◇◇◇◇◇
そんなわけで、結局会えてしまうんだよね。
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