36 自分だけの舞台(7)
銃の重み。
予選よりは慣れた。
この歓声にも、観客の数にも、周りの音にも。
きっと他の2組もすごく上手いんだろうけど、一番大事なのはきっと、俺達二人が楽しむ事だ。
わかってても、緊張しちゃうよなぁ……。
「ゾンビの群れから生還し、栄冠を手にするのはどのペアなのか〜!」
なんていう店長の叫びで決勝は始まった。
大丈夫。
さっきと同じように。
銃を構える。
一体二体……と、ゾンビが現れる。
茂みの陰から、車の陰から。
タンッ。
大丈夫。
いける。
冷や汗が出る。
失敗するわけには、いかない。
一体のゾンビに照準を合わせる。
と、
ダンッ!
と、トリガーを引く前にゾンビが倒されてしまう。
礼央が倒したのだ。
ん?
いつもなら、こういう確実なのは任せてくれるんだけど。
タンタンタンッ!
んんん???
さっきから、微妙に、れおくんが倒す割合多くないか?
決勝だから?
やっぱり、あんまり悪い成績は取りたくなくなったとか?
気のせいかもしれないし、なんて、黙って照準を合わせる。
タンッ!
明らかに照準を合わせたゾンビが、横から倒された。
わかってやってる……!?
なんだよ……。
タンッ!
なんだよ!!
亮太も、無理やり、いつもは礼央が倒しているゾンビのあたりまで、撃っていく。
「…………っ」
くっそ、ヘッド外した!
そこからは、もう礼央とゾンビの取り合いになった。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
礼央には、なかなか敵わない。
けど、負けたくも、ない。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
つまらない挑発だったかもしれなかった。
そんなものに乗ってしまったからかもしれなかった。
そんなやり取りを続けた末のことだった。
西部の町並みのようなステージ。
大量のゾンビ襲来。
そんな中で、二人が同時に、リロードしてしまったものだから。
その一瞬は命取り。
「あっ」
その手放した一瞬で、二人はゾンビの波にに飲まれてしまう。
「あ〜……」
GAME OVERの文字を前に、亮太は呆気に取られた。
「ふっ……」
ん?
「くっ……ふっ……はははっ」
隣の礼央から、妙なクスクス笑いが聞こえた。
「おまっ……!変な遊びしなきゃ、もっと行けてたのに……っ」
礼央を睨みつけながら言うと、顔を赤くして笑いを堪える礼央と目が合う。
……まったく、何やって…………。
そこで、わっと周りから声が上がる。
礼央が脱落した事と、まだ続けている隣の台への声だった。
もう一組は、すでに終わっていたらしい。
「…………あ」
そこで亮太は気付く。
今、すっかり忘れていた。
見られている、ということを。
『自分だけの舞台』か。
隣を見ると、礼央はまだちょっと揶揄うような目をしていた。
これほど、観客の事がどうでもよくなるなんて。
……礼央の舞台に、飲み込まれただけかもしれない。
けど、その舞台は、緊張なんてなくて、確かに楽しいものだったんだ。
◇◇◇◇◇
やっと決着がつきました!二人とも楽しかったようですね。
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