君が僕を好きなことを知ってる
みこ
1 れおくん
「おおぉ……、りょーくん、この動画見てみて」
校舎裏の非常階段。
昼休みにその2階から3階へ続く場所で、のんびりするのが最近の日課だった。
階段に座れば周りはコンクリートの壁ばかりだけれど、上を見れば柔らかな木のゆらめきと雲が流れる空が見えるその場所は、なかなかに悪くはない隠れ家だ。
数段上に居た小学校から友人のケントの言葉に反応するでもなく、
そして、やおらケントの方を見る。
「なに?」
聞いてはみるが、特にこれといって興味はない。
ケントのスマホの画面を見れば、そこには二次元のキュルンとした顔の女の子が映っていた。
ダラダラした格好の猫耳少女だ。
「何?トーク配信?」
「最近の推し〜」
「はい。かわいいかわいい」
ハハッと乾いた笑いを送ってやる。
その時、非常階段に影が差した。
サクだ。
こうして低い場所にいる所に背の高いサクが立つと、なかなか迫力がある。
「次の英語、抜き打ちだって」
「え?どこ情報?」
サクを見上げると、手に何か持っているようだった。
英語の……ノート?
「隣のクラスの富士。んで、教室戻ったられおくん居てさ、ちゃんと問題のとこやってあるって言うから借りてきた」
そこで、登場するのが手に持っていた英語のノートらしい。
ケントが「えっ」と声を上げる。
「いいの?れおくんも次抜き打ちじゃん」
「覚えたからいいって」
「えぇ……すっげ」
二人で盛り上がってるとこ悪いが……。
「え、誰?」
亮太だけは、その会話に上手くハマれずにいた。
「富士ってさ、俺と部活で一緒の」
「じゃなくて、れおくん」
「…………」
二人が妙な視線を亮太に送る。
ケントが、昔の漫画に出て来る不良みたいなしゃがみポーズで「ええ〜」と声を上げた。
「もう5月だよ〜?高坂だよ。
「まぁなぁ」
サクが諦めたような声を出す。
「みかみはな」
「え、俺が何?」
キョトンとすると、ケントまでもが可哀想がるような目で見て来る。
「なんか、……嫌われてるみたいじゃん?れおくんに」
は?
「え、その高坂ってのが、何?名前も知らないんだけど」
話した事もない奴に、嫌われてる???
高校に入ってから1ヶ月。
授業態度や試験の成績こそほどほどだけれど、流石に会話の一つもした事がない奴に嫌悪されるほど素行が悪いはずがない。
問題を起こした覚えもない。
これほど大人しい一般人なのだ。
「入学当時からだもんね」
ケントが亮太を収めるように苦笑する。
「俺とは普通に会話すんだけどさ、りょーくんが来ると逃げるっていうか、怖がられてる感じ?」
「は?」
今度は、声が出た。
◇◇◇◇◇
さて、また新連載です!
今回は現代もののBLですが、変わらずほのぼの恋愛ものでいこうと思います。
どうぞよろしくね!
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