第7話 温泉街の誘惑
今回、三人が訪れている場所はそこらじゅうから美味しそうな匂い、楽しそうな道行く人の話し声、そして何というか町並みも普段目にしているのとは違うそんな場所だった。
「来たわよ〜!温泉街!」
「シエラそんなにはしゃいでると転びますよ。」
石畳の道をシエラがニコニコしながら駆けていくのをサラが少しだけ注意していく。
「でもシエラさんがはしゃぐのもわかりますよ、周りからいい匂いがしてますし、なんというか夕暮れ時だからか街の雰囲気が良い感じです。」
それに微笑みながら、空が赤く染まりそれからうっすらと暗くなっていく空とポツポツつき始める夜の明かりを見つめるエイナ。
「そうですね。まあここは有名な観光地ですから旅行気分で浮かれてしまうのもわからなくはないですが…」
わちゃわちゃとした三人のやり取り、というよりシエラのテンションの上がりようを見ればわかると思うが、シエラ、サラ、エイナの三人は観光地、もう少し詳しく言えば、有名な温泉街に訪れていた。
「ねえ〜エイナ、サラ!あそこ見て美味しそうな温泉タマゴの看板が出てる!さっそく行くわよ!二人ともついてきなさい!」
道沿いに温泉タマゴの屋台?を発見したシエラは見て見てとこの屋台を指差して二人の顔を見る。
それから温泉タマゴの屋台へと単身突撃を開始するシエラ。
「私はいいのでエイナさんが付き合ってあげてください。」
「はい!わかりました。シエラさん」
サラはエイナにシエラの面倒を見るように頼んでくる。
それにエイナは元気よく返事をするとシエラのあとを追って走り出す。
「おじさん!温泉タマゴ3つくださいな!」
「温泉タマゴ3つね。1つ2つ3つ…ほいどうぞ。3つで300Lね。」
「ええと100L硬貨3枚、はいこれ。」
「まいどあり〜。」
エイナがシエラの背に追い付く、早々と露店の店員とやり取りを済ませ、シエラは温泉タマゴが入った紙製のコップを器用に持ってエイナへとクルッと振り返る。
「はい!エイナ。それとそんな後ろに立ってないでサラも受けとって!」
シエラはエイナにカップの一つを手渡し、すると少し離れた場所にいるサラへと声をかける。
「ありがとうございます。ええっとお金お金!」
エイナは自身に渡されたカップを丁寧に受け取ると水色のかわいらしい財布を取り出し、代金を払おうとするが…
「お金はいいわよ。私がエイナと食べたかったんだもの。」
シエラは首を横に振って、これは私のおごりよと笑顔で言ってくる。
「えっとそれじゃあ…ありがとうございます。」
エイナはちょっとばかり申し訳なく思ったがここで遠慮するのも違うと思い、素直に感謝を口にする。
「ふふっ私のワガママに付き合ってくれてありがとねエイナ。ああっそれとサラもお金は良いからね。」
シエラは嬉しそうにそう返すとこちらに歩いて近づいてきていたサラにもエイナに言ったのと同じことを伝える。
「いやそれはシエラのお小遣いなのですから私の分は私が払いますよ。第一、そんなことしてたらあっという間になくなっちゃいますよ。」
「うぐっそれもそうね。じゃあ勝手に買っちゃったけどサラに出してもらうわ。なんかごめん。」
そう痛いところを疲れてしまったシエラはパンッと手の平を合わせるとサラの好意に甘えるようにお礼を言う。
「いえ、私もちょうど食べたかったので。」
「そう?ならよかったわ。」
3人は温泉タマゴを通行の邪魔にならない場所まで移動すると食べ始める。
それから三人は温泉街を観光…まあシエラに他二人が連れ回されていたと言ったほうが正しいのだが…
「あっちに行ってみましょう!」
「はいっシエラさん!」
「シエラそんなに急がなくても。」
「何言ってるのよ?あっちもこっちも行きたいんだから休んでる暇なんてないわ!」
「シエラさんは元気ですね。」
「まったくです。」
と言ったように興味のあるものに次々と飛びついていくシエラに振り回される二人。
しばらくシエラに二人が振り回された後…
「ふうっ観光したわね!満足、満足。」
「ううっ疲れました。」
「私もです。はあまったく…私を振り回すのは姫として城にいたときと変わりませんね。」
シエラがひとまず満足した様子で今夜三人が宿泊する予定の宿の入り口をくぐり、それに続く2人。
「さあ、2人とも荷物を予約した部屋に運びますよ。」
「了解したわ。」
「はい!荷物運び頑張ります!」
荷物を持って階段を上がっていく三人、この先にあった部屋は…
「さあ今日、私たちの今日泊まる部屋はどんなもんかしら!」
シエラは荷物を泊まる部屋の扉の横に置く。
扉を開くとそこにあった部屋は…
畳の敷かれた部屋だった。
「ふーん見たことない感じの部屋だけど良いじゃない気に入ったわ!」
「えっとたしか…ワシツ?とか呼ばれてるものでしだっけ?」
満足そうなシエラの発言にエイナは顎に手を当てて昔どこかで見聞きした記憶を引っ張り出してみる。
「エイナさんはよく勉強されていますね。これはある国の建築様式ですね。待ってくださいシエラここの部屋に入るときは靴を脱いで端に寄せてから入ってください。」
サラはそんなエイナに関心したように頷き、それから今にも部屋へと侵入しようとしている姫様を注意する。
「へえそうなのね。わかったわ!ふふっ新しい体験ってワクワクするわね。よっとっ」
サラの注意を聞いたシエラはそう言って靴を脱ぎ、パパッと靴を揃えると畳にその足を着地させる。
それに続きエイナとサラも靴を脱ぎ、シエラとは対照的にあまり急がず丁寧に自分たちの靴を揃えて置く。
二人が靴を置き終えた頃にはシエラは部屋の中にある窓へと取り付いていた。
「ねえねえ!二人ともこっちに来てみなさいよ!すごく良い景色だわ。」
「はあ…街の景色がきれいですね。何というかこの部屋もそうですけど普段あまり見ない町並みなのでとっても新鮮です。」
「まあそれがこの温泉街の売りですからね。ですがここの売りは景色だけではありませんよ。」
サラはそこで一度言葉を切ると数秒の間をあける。
するとシエラが…
「ああもう!ちょっとサラ!もったいぶってないで早く教えなさいよ!」
「ふふっそう急がずに、その売りというのはですね。露店風呂です。」
サラはわざとらしく微笑むと早く早くと答えを求めてくるシエラに答え合わせをしてあげる。
「露店風呂?」
「露店風呂ですか?」
聞きなれない言葉に首を傾げる二人。
「露店風呂というのはですね。まあ簡単にいうと外の景色を楽しみなから温かいお湯に入れるというものでして。ここの宿は裏手にある山の景色を見ながら入れるんです。」
「何それ!素敵じゃない!さっそく行くわよ二人とも!」
「はい、私も楽しみです。行きましょうシエラさん!サラさん!」
「そういうと思い、すでに三人分の着替えの用意は出来てます!」
サラはシエラとエイナのその言葉を待っていましたといわんばかりにニヤッと口角をあげ、用意していた物を二人へと手渡す。
「さすがサラ!準備が良いわね!」
「サラさんも楽しみだったんですね。」
「そうですね、久しぶりの露店風呂だったので少し…いやかなりテンションが上がってしまったのかもしれませんね。」
「もう!二人ともそんなこと言ってないでその素晴らしいお風呂へ出発よ!」
自身の着替えの入った袋を背中に背負うように持つとシエラは部屋の入り口を指差して二人へともう私早く行きたいんですけどみたいな意思表示をしている。
そんなシエラのわかりやすい様子に二人はお互いの顔を見合わせクスクスと笑い合いシエラの背中を追いかけた。
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