第14話 狩人
「いやぁ、今日は危なかったな」
「本当ね。死んだかと思ったわ」
迎えにきたパパンとママンが、今日の出来事を語る。
分かっていたけど、改めて二人の顔を見てホッとした。
助けられて本当に良かったと思う。
二人はあの後、何があったのか、なんでクラグファルが穴だらけなのか、などなど、守護者たちから根掘り葉掘り話を聞かれたらしい。
でも、ママンたちは何も知らないので、状況をそのまま説明するしかなかったようだ。
「俺たちにはトールの加護があるからな」
「そうよね、私たちの守り神だからねぇ〜」
「あうあう」
パパンが俺の頭を撫で、ママンがギュッと抱きしめる。
二人とも本当に知らないんだよな? そうだよな?
翌日、たくさんの守護者たちが神殿を訪れていた。
「昨日、何か変わったことはなかったか?」
「はい、襲撃があった以外特には……」
「強い魔力反応を感じなかったか?」
「すみません、感知はあまり得意ではなくて…」
職員たちに事情聴取をしていて凄く焦った。
魔力感知で把握する限り、守護者たちは神殿内を隈なく捜索している様子。昨日の攻撃の魔力を感知されてしまったらしい。
ちょっと派手に暴れすぎたか。
クラグファルを倒した人物を探していると考えられる。
人口の少ない村だ。村内の人間の容姿や能力は全て把握されているはず。子供を除外すると、残るのは外部の人間しかいない。
そのため、侵入経路や怪しい奴がいないかを探していたようだ。
「異常なし」
「それなら、いったい誰があんな離れ業をやったってんだ?」
どこにも侵入経路も怪しい奴も見つからない。
誰が、どこから来て、どうやってクラグファルを倒したのか、分からずじまい。
守護者たちは困惑の表情を浮かべている。
そんな中、守護者の一人が冗談のように言った。
「もしかして幼児がやったんじゃないか?」
「いやいや、ないだろ」
「分からないぞ。この中に赤ん坊のふりして潜り込んでるやつがいるかもしれない」
「それは確かに」
守護者たちの視線が俺たち子供に集まる。
――ドキッ
俺はできるだけ平静を装って子供らしい振舞いでリーシャとレイナと遊んだ。
「まぁ、それはないよな」
「だよなぁ。子供も全員調べたしな」
真剣な表情だった守護者たちがプッと噴き出して笑いだした。
はぁ……冗談だったらしい。ビックリした。
でも、この守護者たちも本当は分かってるんじゃないだろうな? 知ってて俺から名乗り出るようにしてるんじゃないよな?
パパンといい、ママンといい、少し疑心暗鬼になってしまう。
しばらくの間、神殿の守護者を増やすという話も出ているらしい。
この様子だと、今度村の中で動きにくくなりそうだ。
じゃあ、どうするか……中がダメなら外に行くしかないだろう。
全身に魔力が巡っているおかげか俺の睡眠時間が他の赤ん坊より短い。
そろそろ一人で鍛錬するのも飽きていたところだ。クラグファルも倒せたし、ちょうどいいタイミングだろう。
俺は早速今日の夜から外に出ることにした。
「しゅりーぷ」
パパンとママンにスリープの魔法をかけて、こっそり家の外に出る。
魔力感知でずっと観測してきたから夜の警備も把握済みだ。
魔力を完全に消し、忍者の如く抜き足差し足で村の中を駆け抜ける。
守護者たちも身体強化で視力を強化できるので、死角をぬって移動し、村を囲む巨大な壁までたどり着く。
これは昔の守護者が力を合わせて築き上げた防壁で、今も守護者たちによって修復、維持されている。
壁はかなり急な二次関数みたいな傾斜をしているので、思い切り助走をつけてギリギリまで登ってからジャンプ。
壁の端を掴み、上に飛び上がって外を見下ろした。
初めて見る壁の外。鬱蒼とした森が広がっている。それに、魔力感知と高めた視力で見る限り、多数のモンスターが徘徊していた。
複数のモンスターが集まっているところもある。多分、巣だ。
近くには俺が初めて戦った犬のモンスターの気配が多い。俺は魔装を使えるようになったし、魔法も使えるようになった。もうあの時とは違う。
壁から飛び降りて着地。モンスターを求めて森の中に足を踏み入れた。
「グルルルルルッ」
すぐに犬を発見。
魔装を纏い、魔力で生み出した剣を構えた。
「きにゃよ」
「ガォオオオオンッ!!」
挑発すると俺に向かって迫ってくる。
まるで止まっているようにしか見えない。
「おちょい!!」
「ギャオ──」
魔力の剣はまるで豆腐でも切るように簡単に犬を切り裂く。
一撃でその場に崩れ落ちて動かなくなった。
俺はあの時よりも確実に強くなっていることを実感する。
「ギャオオオッ」
「グルルルルル」
「ウォンウォン!!」
犬が死ぬ前に呼び寄せていた仲間たちが集まってきた。
力試しにちょうどいい。
「いきゅよ!!」
俺は一瞬で距離を詰めて切り捨てる。
犬は真っ二つになって崩れ落ちた。すぐ次の犬の前に移動して剣を振りぬく。
犬は全く反応できていない。犬には瞬間移動しているように見えているかもしれない。
集まっていたモンスターがあっという間に消えていった。
「キャイン、キャイン!!」
恐れをなした犬が俺から逃げようとする。
「にぎゃすきゃ」
俺が逃がすはずもなし。
犬たちを追いかけ、次々斬り捨てていった。
耳を垂れ下げ、尻尾を丸めて怯えた表情で俺を見ている。
どうやら自分たちが狩られる側だという事実に気づいてしまったらしい。
満足するまで周囲の犬を倒しまくっていく。
俺は、その日から毎日村の周囲のモンスター狩りに勤しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます