第8話 ベランダの少女

◆◆◆◆◆◆




「臭いんだよーー、てめーーは!!あっち行け、ボケが。飯がまずくなるんだよ、てめえみたいなガキがいるとさ。さっさと、ベランダ行け。行けって言ってるだろ!!」


バシッ


「あうっ」


バシッ



「あ・・ああっ」


やめて、お父さん。

ごめんなさい。


ごめんなさい。


臭くてごめんなさい。


バシッ


バシッ


シャァーーー


「あっ、てめぇなにオシッコ漏らしてるんだ!!アホか、床が汚れただろ。死ね、てめーなんかさっさと死んでまえ。俺は、お前みたいなアホを養う為に働いてるんと違うぞ。こんなガキ食わせる為に、毎日頭下げて働いてる訳じゃねーからな。死ね、ガキが死ね!!」



ごめんなさい。

許して。


「べら・・んだ、行くから・・許して」


もう、お腹空いたなんて言わない。

わがまま言わない。


「ほら、早くベランダに行きなさい。お父さん、怒らせてもっと叩かれたいの?」

「お母さ・・ん、あたし・・」

「さっさと、ベランダに行きなさい!!」



お父さん。

お母さん。

ごめんなさい。怒らないで。もう怒らないで。

お漏らししてごめんなさい。




ドンッ


「ひっ」



ガラガラガラ


ガシャン






ベランダがいい。

あたしはベランダが好き。


だから、大丈夫。あたし、ベランダ好き。だって、ベランダに出たらあの人が見えるから。



「あっ・・ああ」


王子様だ!!


黒いナイフの王子様が、ベランダにいる。

ああ、あたし・・・・すごくラッキー。すごく、幸せ。



目が霞むから、良く見えないよ。何時からこんなに目が霞むようになったのかな?

あたし・・・・体、最近変だから。


力も入らないし、上手く歩けないし。

オシッコは漏らすし。



お父さんやお母さんに嫌われるのも当然。

あたし、最悪。


でも、王子様を黙って見るだけなら許してくれるよね。

もう何も、望まないから。


何も、欲しがらないから。



どうしたんだろう?

今日の王子様、なんだか何時もと違うみたい。



泣いてるの?

笑っているの?



何か、嬉しいことあった?

何か、悲しいことあった?



あたしだけの黒いナイフの王子様・・・・・




◆◆◆◆◆◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る