第4話 刃の呟き

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「黒闇姫」


私にそんな名前を付ける奇妙な人間がいる。


年齢に似合わぬ幼い魂を宿したその男は、私が凶器になることを望んでいる。

私を鞘から抜き取り、刃先を見つめる男の目には殺意が宿っている。


だが、その殺意はあまりにも稚拙すぎる。


お前は、自分の心さえ把握できずにいるらしい。

お前が抱く殺意は、本当にその友に向かってると思っているのか?


それは違うぞ。


お前が抱える殺意の矛先は、お前自身に向かっている。


お前が壊したいと望んでいるのは、己自身だろう?

刃で切り裂きたいのは、思うように生きれぬお前の存在自体であろう?



それにも気が付かず、お前は殺意を他人に向ける。


いや・・・それさえも、危うい。


お前は人に殺意を抱くほどには、他人には興味を持っていないだろ?

お前が持っているのは、ただ自分への関心のみ。


己にしか関心のないお前が、「恋愛」に溺れたと勘違いしているのは、滑稽で面白く愚かで・・そして切ないな。



お前の殺意は見当違いだ。


私はそう想う。



だが、お前がその幼い殺意を実行するならば・・・



私は、止めることはできない。



お前の望むままに、お前を裏切った友の腹に私の刃は突き刺さるだろう。

そして、お前自身の命も絶つことになるのかもしれない。



幼く甘い殺意は、私の好みではない。


お前は私の主には相応しくはない。



だが・・・まあ、よい。


お前は私に、「黒闇姫」と名前を付けてくれた。


「黒闇姫」


なかなか良い名だ。


名づけ親のお前が望むままに、私は行動しよう。




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