第2話 恋人
◆◆◆◆◆◆
一人だ。
孤独は平気だと思っていた。
だって、僕はずっと一人だったから。
一人でも、僕は楽しかったんだ。
テレビとアニメと漫画と小説とネット世界と・・・・
そんな世界で僕は満足していた。
誰からも邪魔されない時間がすごく好きだった。
寂しくなんてなかった。
なのに、大学でお前と会ってすべてが変わってしまった。
人と触れ合うことがこんなに楽しいなんて思わなかった。
お前に引っ張られて、色んな人に出会った。
今までの人生じゃ考えられない。
僕は大学生になって、女の子たちと初めて話をした。
アニメの女の子じゃない。生身の女の子。
おどおどした僕の様子にキモイって思われたかもしれない。そう思って、お前に愚痴を漏らしたら、からりと笑って
「お前、結構人気あったやん?わりとええ顔してるし、自信持てよ」
そんな事を言う。
自信なんて持てるわけないよ。
なのに・・・・なのにだ。
そんな僕に、告白してくれる女の子が現れるなんて。
オタクな僕には、もったいないくらい可愛い女の子がふわって笑って言ったんだ。
「・・・彼女いる?もしいないなら、私と付き合ってくれる?」
信じられなかった。
僕は何も考えずに頷いてた。
だって、こんな僕に彼女だよ?
信じられなくて。
でも、嬉しくて。
嬉しい?
そう、嬉しかったんだ。
僕はもう孤独を愛する人間ではなくなっていたんだ。
一人が平気な人間じゃなくなってしまっている。
これってすごい恐怖だった。
だって、存在するものは必ず失われていくのがこの世界だから。
だから、最初は彼女がすぐに僕に飽きて別れを切り出しても平気だと思っていたんだ。
心が痛んだりしないって。
なのに、彼女は優しい笑顔を浮かべてこんな僕に付き合ってくれた。
彼女の手を初めて握った時、僕の胸は信じられないくらい高鳴った。
すごく。
すごく、嬉しかったんだ。
僕は、一人じゃない。
◆◆◆◆◆◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます