第22話 命の価値

「てめぇ...何のつもりだ!いきなり現れて、

仲良しこよしかぁ!?くたばりやがれぇ!」


ゴロツキの1人が叫びながら迫ってくる。

俺は魔力を全身に行き渡らせる。


『強化』


俺は剣と自分、両方を同時に強化する。ちなみにこれは魔法で強化する時に、剣と体をそれぞれにかける時間が掛かると色々思案してたら出来た物だ。俺は足にぐっと魔力を込める。


『疾走、跳躍!』


俺は弾丸の様な速さでゴロツキに接近し、ゴロツキの心臓を穿つ。


《スキル 縮地を獲得しました》

《スキル 刺突を獲得しました》


ゴロツキの心臓から剣を抜くと、噴水の様に鮮血が吹き出す。


「....死んだか」


俺は魔眼で死亡を確認すると、それを蹴り飛ばす。


(初めての殺人だったが、魔物の肉を斬る時の感触と似てたし、相手は悪人、それも全く知らない奴がメルをを襲っていた...大して何も思わないもんだな)


「このクソガキ!よくもやってくれたなぁ!」

「させないっ」


後ろからゴロツキが飛びかかってくる...が、俺に届く前にメルが短刀でゴロツキの喉笛を裂く。メルは両手に20~30cm程の、メルの他の持ち物とは違う、綺麗な短刀を持っている。


『鑑定』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

陰翳いんえいの短刀


効果 急所への攻撃に補正が入る

視認されていない攻撃に補正が入る

◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(これ、暗殺とかそっち系の武器じゃね?...っと、こんな事呑気に考えてる時間は無さそうだな)


流石にタイマンでは勝てないと学んだ様で、

ゴロツキ達は四方八方から同時に迫ってくる。俺とメルは特に言葉を交わすでも無く、互いに背を合わせ、メルは剣を構え、俺は右手を前に突き出す


「これでも食らっとけ、『魔弾!』」


俺の右手から無数の青い閃光が射出される。威力より数を優先した為、急所に当たった奴以外は痛みに呻き声を出しながらも向かってくる。そしてそれと同時に、後ろからも何かが刺さる音と呻き声が聞こえてくる。後ろをチラ見すると、メルが小さいナイフを投げていた。


俺は剣を構え、後ろの少女と同時に飛び出す。


(後ろを気にする必要は無い、兎に角目の前の敵に集中だ...)


『剣舞、縮地』


俺は瞬きの間にゴロツキに迫り、切り伏せる。


ザシュッ!!


肉何かが斬られる音と、血が舞う音が響く。

ゴロツキ達の視線が死体に集中する。その一瞬の隙を縫って、俺はゴロツキ達の間を駆ける。何かが通る影が見えたかと思えば、辺りは赤に染まる。少し後ろでは、俺の出す音よりも更に小さく、鋭い音が聞こえてくる。血の音も殆ど聞こえてこない。


(最早ガチモンの暗殺者じゃね?)


そんな事を考えながら、俺はゴロツキ達を斬る。


『投擲、三角飛び......魔弾』


俺は鮮血を出し今にも地面に伏そうとしているゴロツキの死体を蹴り、次の標的に迫る。そして投擲を使って蹴った死体は今まさに俺に向けて走って来るゴロツキを吹き飛ばす。すぐ近くに迫った敵を斬り、飛んで行ったゴロツキに魔弾を放つ。


スキルって意外な活用が出来たりして面白いな。


本当は人を殺す事に何かしら感じるのが当たり前なのかもしれないが、俺の思考はスキルの意外な活用法に少しだけワクワクしていた。


「ふぅ、俺は終わったかな...」


俺は自分を襲ってきたゴロツキ達を全て殺した事を確認し、一先ず息をつく....が、後ろから迫って来る2の気配を感知した。


「うぉぉぉ!」


俺の後ろからゴロツキが叫びなが剣を振り落とそうとしている。だが俺は、反撃も避けもしない。


「死ねぇ!クソガぎっ―――」


その男がそれ以上言葉を発することは無かった。男が倒れると、その後ろに居た少女と目が合った。


「碧、お疲れ様。お互い無事で良かった」

「そうだな、メルもお疲れ。お陰でスムーズに戦えた」

「.....ねぇ、碧」


メルは何かに悩む様に目を伏せ、直ぐにこちらに向き直った。


「碧は、どうして助けくれたの?」











◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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