第10話:移住計画
俺は移住を視野に入れて色々調べた。
できれば賃貸の方が良いので、掲載元の不動産会社に連絡を入れてみた。
思っていた以上に当たりの柔らかい担当者で、賃貸も可能だという。
できれば自分の目で家と裏山を確認したかった。
家は、最低限住める状態ならいいが、裏山がとても気になっていた。
人が入らない雑木林や奥山ならいいが、人が頻繁に入る植林では困る。
本当はリョクリュウを連れて行って、気に入るかどうか確かめたかった。
だが、今リョクリュウが見つかるととんでもないことになってしまう。
マスゴミから徹底的に叩かれて、精神を病むのは明らかだった。
それに、鴉の危険が全く無くなったわけではない。
リョクリュウが見回りを休んでいる間に、戻ってきているかもしれない。
既に鴉の死骸は処分しているから、警戒せずに襲ってくるかもしれない。
安全に九州まで行くための方法を色々と考えた。
危険を完全になくすのは無理だが、外に出る時間はできるだけ短くしたかった。
この辺を縄張りしている鴉が九州まで追いかけてくる可能性は少ないが、絶対にないとは言い切れない。
どこにいても安全な車中で過ごすためには、レンタカーで移動すべきだと思った。
鉄道、新幹線の移動が1番楽だが、乗り継ぎの時が危険だと思った。
タクシーで地元の駅まで行って、駅で待っている間に襲われるのは嫌だった。
気にし過ぎだとは分かっているが、どうしても怖さを克服できなかった。
自宅から1番近いレンタカー会社までタクシーで行き、コンパクトカーを借りて九州の某県まで行くとしたら、8時間くらいで十分たどり着けるとネットにあった。
だが、20代から40年近く車の運転をしていない。
自分でもかなり無謀だと分かっているから、途中で何度も休憩する必要があった。
鴉の襲撃とマスゴミの取材を覚悟して、電車で行く事も考えた。
考えたが、リョクリュウを移住させる時には、どうしても運転する必要がある。
ならば、少しでも運転に慣れておく必要があると考えた。
「リョクリュウ、移住先の下見に行くが、最短の期間で帰って来る自信がない。
向こうに行くのも、予定通りの日時に着く自信がない。
迷う事や疲れて休む事を前提に、長めの日程にした。
冷蔵庫に多めの生鮮野菜を入れておくから、それを食べていてくれ。
念のために、フードも多めに買っておくから、生鮮野菜を食べ尽くしたら、フードで我慢してくれ」
「シャ」
リョクリュウが、迷惑をかけると言った、ような気がする。
今回はとても殊勝で、偉そうな態度を一切取らない。
いつもこんな風に大人しければ良いのだが、そうなったらそうなったで、物足らないかもしれない。
問題は、腐れマスゴミの取材陣だ、絶対に自宅の近くに隠れている。
全員まくのは無理だが、九州までついてくる人数は、少しでも減らしたい。
そこで少々強引な、支援者には申し訳ない手段を使う事にした。
「皆さん、今だにマスゴミが隠れて取材しています。
もう精神的に限界なので、自殺する場所を探す旅に出ます。
僕を自殺に追い込んだのは、朝韓テレビの××番組のスポンサーをしている、××自動車です、社長の××が僕を追い込んで自殺させます。
それと××雑誌に広告を掲載して支援している××電気の所為です。
社長の××が僕を追い込んで自殺させます。
僕が死体で発見されたら、線香をあげる代わりに叩いてください」
これまで1度でも俺の事を悪く書いたり放送したりした、雑誌の広告掲載企業とテレビ局のスポンサー企業を全て名指して非難した。
これで少しはつけ回すテレビ番組、新聞社、雑誌は減るだろうが、完全にいなくなるとは思えない。
ここまでやってもつけ回す腐れ外道には、何を言ってもやっても無理だ。
そいつらに移住先を嗅ぎつけられたら、別の移住先を探すしかない。
翌日の早朝にタクシーを呼び、レンタカー会社に行った。
予約していたコンパクトカーのレンタル料は、24時間で5000円弱だった。
30年以上運転していないので、日中しか運転しない予定だった。
九州某県にある不動産会社には、旅行を兼ねて物件を見に行くと連絡してある。
30年ぶりに自分で自動車を運転するので、予定通りにたどり着けるか分からないから、1日くらい遅れるかもしれないとも言ってあった。
最初から適度な休憩と仮眠を取る予定だったので、九州に入るまでに10時間かかり、暗くなるまでに予定通り吉志PAにたどり着けた、
吉志PAで爆睡してできるだけ運転の疲れをとった。
朝起きて直ぐに熱いブラックコーヒーをたて続けに飲んだ。
眠気を追い払ってから安全最優先で運転した。
予想外に何の問題もなく、東九州自動車道に入ってから6時間で目的地に着いた。
担当してくれた不動産会社の人はとても親切だった。
1年契約するなら、賃貸でも良いと言ってくれた。
敷金も礼金も無しで、月額3万円で貸してくれると言う。
1番良かったのは、誰にも見られる事無く家の裏から山に入れる事だった。
山中は、多少畑があり道が通っているが、隠れるに十分な深さがあった。
最も良かったのが、グリーンイグアナが好む水場が多かった事だ。
かなり山中を移動しなければいけないが、移住予定の家の前を流れている川は、遡ると道も通じていない沢になっている。
ただ、リョクリュウには良い場所だが、俺には問題のある場所だと思う。
今住んでいる地元では、買い食いどころか出歩きもしないが、田舎に引っ越したら近所付き合いが大切になるかもしれない。
リョクリュウが見つかった時の事を考えれば、引っ越し先の住民と打ち解けられているかどうかが、とても大切になるだろう。
人付き合いが苦手で、できるだけ1人で生きて行きたいが、リョクリュウの事を考えると人付き合いは避けられない。
消防団にまで入る気はないが、最低限の付き合いは必要だろう。
地元の商店、バーガーショップや鮮魚店で買い物くらいはしないといけない。
近くにはそれなりに栄える地方都市があったが、そこには足を運ばなかった。
俺の性格だと、地区の人、地元の人と交流するので精一杯だと思う。
そう思って、地元の人が始めたというバーガーショップに行って話をしてみた。
鮮魚店に行って総菜を買い地元の事について軽く聞いてみた。
人柄の良い人が多いと感じたので、そのまま移住しても好いと思った。
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