第74話 お題【焼け焦げた双子】【戦時にだけ見られる月】【与える】

 足元には焼け焦げた双子の遺体。

 周囲を見渡せば、死屍累々たる有り様だ。

 ──神が人間に与える現実って……──

 鼻を突くような悪臭が漂ってきて、僕は思わず顔をしかめた。

 その時、誰かが僕の肩へと手を置いた。顔を上げると、無精髭で覆われた大柄な男の顔が見えた。上から低い声が聞こえてくる。

「空を見てみろ。普段の月とは全然比べ物にならないだろう? 滴り落ちる血のような禍々しい色──あれは戦時にだけ見られる月の色だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る