第44話 お題【純白の果物】【消えた牢獄】【明ける】

 黒い皿に一個だけ残っていた純白の果物。

 それが、消えた牢獄にいつまでも縋り付いている。

 想像すると随分と滑稽な絵面であるが、案外己の特徴と似たりよったりで、正直言って、あんまり笑えなかったりする。

 さざ波の調べと共に、真珠の煌めきへと立ち向かった、煩雑なるその想い。

 その想いは昼と夜との間に横たわっていて、先程から一歩も動こうとしない。

 シャーベットが口の中で静かに溶けゆく中、ひっそりゆっくりと夜が明ける。

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