第24話 市民のための協会
ジャメルとの話し合いは続く。
「私たちが新しい組織を作って、神殿の連中に目をつけられない? 大丈夫?」
敵対しても負けることはないと思う。だが、面倒だった。なるべく関わらないようにしたい。
「おそらく、大丈夫でしょう」
「どうして?」
「今の神殿は、コチラに構っている余裕はないはずです。それから、我々のことなど小さな組織だと見下して、自分たちの敵じゃないと勝手に思ってくれるでしょうね」
「なるほど」
ジャメルがニヤリと笑う。神殿の中心に居た彼の予想だから、説得力がある。彼が問題ないと判断したのなら、大丈夫なのでしょう。
「それなら、今のうちに組織としての力を蓄えておくべきなのね」
「その通りでございます、ノエラ様」
新しく作った協会を、私たち抜きでも神殿に対抗できるほど大きくするには時間が必要だし、人も増やす必要があった。
「市民のために動く組織にするのが、よろしいかと存じます」
「神殿が見捨てるような人たちを救うのね」
「はい。市民のために働けば、必ずや我らの益となりましょう」
その目的は、とても良いと思った。人を救いたい。神殿を離れた今でも私は、そう思っている。協会という新たな組織で、私はやりたいように出来る。
ただ、私たちのこれまでの冒険者活動とあまり変わらないような気もするけれど。とにかく、活動を頑張りましょうということね。
こうしてスタートした、新たな組織である協会。神殿に依頼しようとしても断られるか、失敗されてしまった仕事を代わりに引き受けて処理する。
協会に所属した元神官たちを鍛え直した。エミリーにも協力してもらい、みんなの実力を底上げする。仕事の成功率も上がっていった。神殿にいた頃に指導した経験があるので、鍛えるのに慣れていた。
その後、神殿から追い出された神官たちを何度も受け入れた。協会という受け入れ先を準備しておいて、本当に良かった。そしてまた、協会という組織は大きくなっていく。神殿は、どんどん神官が減っているようだけど大丈夫なのかしら。
適正な価格で依頼を引き受けて、仕事を成功させる協会。
いつしか、市民の味方である協会として広く知られるように。逆に神殿は、貴族の味方として認知されていた。貴族にも見放されたら大変だと、神殿の人たちは交渉を頑張ったらしい。頑張るべきことろが違うような。
市民は協会へ、貴族は神殿へ依頼するようになった。だが、神殿の評判は変わらず悪いまま。神殿のトップである現在の聖女が、実力不足で何もできないから。
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