第12話 冒険者のお仕事
仲間たちと冒険者としての活動をスタートした。
まずはアンクティワンから紹介してもらった依頼をこなして実績を積んで、名声を上げる。指定されたモンスターを退治して、倒した証を持ち帰る。聖女だった頃にも似たような仕事をこなしていた。
ただ、討伐の証を集めるのは面倒だった。倒すだけなら、外に行かなくても王都にある拠点から可能だから。ターゲットのモンスターが居る場所を魔法で探り、そこに向けて攻撃魔法を放つ。それで終わり。
空間移動の魔法で一気に接近して倒す、という方法もあるわね。ただ、そうすると消耗が激しくなる。ちょっと大変。
他にも魔法の罠を仕掛けておくとか。依頼を成功させる方法は、いくらでもある。ただ、数をこなすのが少し面倒ということ。時間をかけて、コツコツやっていく。
「ということで、依頼の仕事は全て終わったわ」
「あの数を全て終わらせた、ということですか!?」
「え?」
ようやく終わったので、依頼完了の報告をする。なぜか驚いたアンクティワンに、私も驚きながら頷いた。
優秀な仲間たちにも手伝ってもらったから、そこまで苦労しなかった。もっと多くの依頼をこなすことも可能だと思う。聖女だった頃に任された仕事の量と比べたら、10分の1ぐらいだったから。
「それは凄いですね。1か月ほどかかると思っていましたが」
「早く終わらせると、不都合かしら?」
「いえいえ、そんな事はありません。こちらとしても、仕事が早いと助かります」
「それならよかった」
喜んでもらえたようなので、安心する。
「ノエラ様のパーティーの評判は上々ですし、私の方にも感謝の言葉が次々と届いているんですよ。優秀な冒険者を紹介してくれて助かった、とね」
「役に立ったようで何よりだわ」
アンクティワンには色々と世話になっている。少しでも恩返しになればいいと思っていたけれど、喜んでくれたのなら嬉しい。
「ところで、一つ聞きたいのだけど」
「はい、何でしょうか?」
ちょっと前から気になっていたことを聞く。
「この依頼の成功報酬、高くないかしら? もっと安くてもいいと思うんだけど」
報酬を貰いすぎている。こんなに貰っていいのかしら。数は多いけれど、あんなに簡単な任務でこれだけ貰ってしまうのは申し訳ない気がする。特に私は、これまでに鍛えてきた魔法があるので、危険もなく終わらせることが出来てしまうから。
「いえいえ、そんなことはありません。この価格は適正ですよ」
「そうなの?」
「はい。神殿に依頼すると、もっと高額な依頼料を請求されることも多いですからね。それに比べれば破格です」
「え!? そうだったのね」
まさか神殿が、そんな高額な依頼料を請求しているなんて知らなかったわ。自分が何も知らなかったことを思い知らされて驚いた。
もしかしたら、私が今までにこなしてきた依頼も、かなりの高額料金で引き受けていたのかもしれない。神殿の外に出て、初めて知った事実。これから、もっと色々と知っておかないと。
「それから、早く片付けてもらったお礼に報酬を上乗せしますよ」
「ええっ!? まだ貰うなんて、そんなこと」
「受け取ってください、ノエラ様。これは商人としての私の気持ちなんです。どうかお願いします!」
「そこまで言うのなら、ありがたく受け取るわね」
とりあえず、依頼料の報酬については商人アンクティワンを信用することにする。彼がそう言うのだから、これで間違いはないはず。私は、アンクティワンに紹介してもらった依頼を失敗しないように頑張りましょう。
「それじゃあ引き続き、次の依頼の紹介をお願いね」
「では、こちらをお願いします」
「わかった。任せてちょうだい」
冒険者の活動は順調だった。
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