第10話 日々の修業
アンクティワンとの話し合いを終えて、私たちは拠点に戻ってきた。その後の予定はなく、今日は解散して別行動ということになった。
ナディーヌは、冒険者ギルドに行って任務の確認をしてくると言っていた。一緒に行こうかと聞いたが、一人で大丈夫だと言っていたので任せる。冒険者の中には乱暴者も多いらしいが、ナディーヌの実力があれば問題ないと思う。彼女は王国騎士団の中でも、かなりの実力者だったから。
ジャメルは個人的な用事があるらしく、どこかに出かけていった。頭の良い彼だから、危なそうなら事前に相談してくれるはず。だから、あまり心配する必要はない。
私はエミリーと、魔法の修業をすることにした。神殿から離れて聖女や神官という立場を失っても、この能力を失うことはない。だが、磨かないと腕が錆びついていくことになる。せっかく鍛えたのに、何もせずに衰えさせるのはもったいない。
なので、日々の訓練を続ける。
「ふぅ」
コントロールしていた魔力を解放した私は、その場に座り込む。かなり疲労した。長時間集中した疲労感で、頭が少しくらくらするわね。ここまで集中しきったのは、久しぶりかも。
「素晴らしいです、ノエラ様! 前よりもっと、魔力の量が多いような気がします。それに、コントロールも美しくて滑らかですよ!」
「そう?」
横で見ていたエミリーが、そう言って褒めてくれた。彼女の言うように、いつもと比べて今日は調子が良かった。調子に乗って、ちょっと頑張りすぎちゃったぐらい。
昨晩、ぐっすり眠ったからかしら。最近、聖女の仕事も忙しかったし休める時間も減っていた。自覚なく、疲労がたまっていたのかも。
ただ、数多くの仕事をこなすうちに実力が磨かれて、成長したような気もするわ。大変だった日々は、無駄ではないだろう。何事も経験が大事ということね。
それに一番大きいのは、聖女という立場じゃなくなったこと、なのかも。
自分が考えていた以上に、精神的な重圧を背負っていた。それがなくなって、肩の荷が下りたのかもしれない。余裕が生まれて、精神的にも安定した。のかも。そんな実感がある。
とにかく私は、前よりも実力が伸びたということ。
「それじゃあ次は、エミリーの番ね。貴女の実力を見せて」
「はい! 見ていてください!」
今度はエミリーが、魔力のコントロールを行う。その様子を観察してアドバイスを送ったり、時には手本を見せたりした。一緒に修行することで、私たちは成長する。
エミリーが一緒に来てくれて、本当に良かったと思った。1人だけじゃ、この修行も出来なかったでしょう。これから先も、彼女と一緒に成長していきたいと思う。
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