第24話

「み、三笠さん……」

 蒼空は大いに戸惑ったようだったが、三笠は構わずに力強く彼を抱きしめた。

「ごめん……怖い思いさせて……」

「いえ……俺が迂闊だったんです。誤らないでください」

「一緒に住んでるのに……君を守れなかったから……」

「助けてくれたじゃないですか……ありがとうございます。相手も、三笠さんがあんなに強いなんて思わなかったかもしれませんね」

「まぁね。こんな時のために、鍛えておいて良かったよ」

 言い終わると、グゥと三笠の腹が鳴った。

「あ……ごめん……」

「ご飯、まだでしたもんね。食べましょうか」

「う、うん……」

 蒼空は冷めてしまった料理を温め直してくれた。

長い一日だったが、真夜中に食べる蒼空の料理は格別に美味い。本格的に学んだら、その道でも花が開くかもしれない。

『いつまでも、蒼空くんの料理を食べていたい……』

三笠はそんな風に思った。そんなことは、叶わないかもしれないけれど。


 食後に、蒼空が落ち着かない様子で切り出した。

「三笠さん、話があるんですけど」

「え?何?」

 改まった様子の蒼空に、三笠は少し緊張しながらも意識を向けた。

「俺、三笠さんのことが好きみたいです」

「……え?つ、つまり……」

「そういう意味で、好きです……」

 そう言うと、蒼空は俯いてしまった。きっと、一世一代の告白だったのだろう。

「前から、三笠さんのことはいいなと思ってました。昨日あんな目に遭って、頭に浮かんだのは三笠さんの顔だったんです。助けに来てくれて、とても嬉しかった」

「蒼空くん……」

「警察の人だから、何か事件が起きたら駆け付けるのは当然だと分かってます。俺じゃなくても……。でも、俺には救世主みたいに見えたんです」

「きゅ、救世主?」

 三笠が目を丸くすると、蒼空は照れ臭そうに頷いた。

「三笠さんは、前にも俺を救ってくれましたから」

 蒼空の目から、真摯な気持ちが伝わってくる。

「こんな俺でも、まだ好きでいてくれるなら、付き合ってください」

「え、本当に?」

 思いがけない告白に、三笠は戸惑ってしまった。

「はい」

 蒼空は顔を盛大に赤くして頷く。そんな彼の反応が可愛くて仕方ない。

「嬉しい……こんなに嬉しいこと、他にないよ……」

 三笠は食卓から席を立ち、蒼空の後ろに回った。そして、後ろから蒼空を抱きしめた。

「み、三笠さん……」

 蒼空がピクリと反応したのが分かった。

「愛してる……。君と、ずっと一緒にいたい」

 三笠の腕に、蒼空は手をかけた。

「お、俺も年をとっていきたいです」

 蒼空が後ろを振り返ったので、三笠はキスをした。

一度目は軽いものだったが、再度唇を重ねる。二度目は蒼空も立ち上がり、濃厚に求め合った。

「ん……俺、溶けちゃいそう……」

「いいよ……溶ける君が見たい」

 そう囁くと、三笠は蒼空の頭に両手を添えて口付けを深める。開いた口の少しの隙間から舌をねじ込ませ、蒼空のそれを見つけ絡ませた。

「んっ……ふっ……」

 蒼空の息遣いが荒くなっているのが分かる。

 しばらく貪り合っていると、目をトロンとさせる蒼空と目が合った。それを機に、二人はどちらからともなく唇を離した。

「前にさ、君が酔って帰ってきた時、俺にキスしたの覚えてる?」

 それを聞いた蒼空は、大いに目を見開いた。

「え、え?そうなんですか?」

「うん。ほら、須藤と飲みに行ったとかで、かなりぐでんぐでんになって帰ってきただろ」

「はい。飲みに行ったのは覚えてますけど、その後のこと記憶になくて……」

「だから、俺も言わなかったんだ」

 蒼空は“しまった”というような顔を見せた。

「すみません……俺、なんてこと……」

「謝んないでよ。あの時、俺嬉しかったんだ。もしかしたら、君の本心なんじゃないかって勝手に思ったり、ね」

 そんなわけはないだろうけど、そんな風に思いたかったのだ。

「三笠さん……」

 三笠は改めて蒼空を抱きしめた。宝物を扱うように。

「ねぇ、俺もう耐えらんないわ。君が欲しい」

「俺も、三笠さんに抱いて欲しい」

 そんなことを言われ、三笠は蒼空の顔を覗き見た。

「いいの?歯止めきかなくなるかもよ?」

「はい。三笠さんなら大丈夫です。三笠さんにしか、触れられたくありません」

 三笠はますます抑えていたものが溢れそうになる。

「嬉しい。愛してるよ」

 唇を重ね合い、お互いを貪り合った。そして蒼空の服の中に手を差し込み、

背中を弄る。

 蒼空の背中はスベスベで触り心地が良い。高い体温が、彼の昂揚の度合いを示しているだろう。

「なぁ……そろそろさ、ベッド行こう?」

 耳元で囁くと、蒼空はピクリと反応を示した。

「え?ベッド?」

「うん。俺の部屋の」

 三笠が提案すると、蒼空は一瞬だけ逡巡してから「はい」と言って頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る