9 「やっぱり名浜さんは魔王なのよ!」
「なっ、何するのよ!」
名浜さんが佐藤さんの頭の上に手を置こうとする。
それを嫌がって逃げようする佐藤さん。両隣にいる高橋さんと鈴木さんが邪魔をしようとするけど、名浜さんがその二人を見つめると、二人はまるで金縛りに遭ったかのように動かなくなった。
「あ……やば……」
「う……ごかない……」
震えている高橋さんと鈴木さんを見て怖くなったのか、佐藤さんもその場から動けなくなって、今にも泣き出しそうだった。
そんなことはお構いなく、名浜さんはまっすぐ手を伸ばして、佐藤さんの頭の上にかざす。そして、そのまま何やら怪しい言葉を呟いた。
「
すると一瞬、佐藤さんの頭の上に黒いもやのようなものが発生して、「ギエェェェ!」と言う声とともに、すぐ消えた。他のみんなもその様子を見ていたようで、びっくりした顔で佐藤さんの方を見つめていた。
「とりあえず、これでいいだろう」
名浜さんはそう言うと、静かに教室から出て行った。
しんとした教室の中、最初に喋ったのは目に涙を溜めた佐藤さんだった。
「ま、魔法をかけられた! 私、呪われちゃった!」
うわあああん! と泣き出すと、そこから、周りで見ていたみんなが一斉に話し始めた。
「聞こえた? 何かの呻き声!」
「聞こえた! あれは絶対呪いだ! あの噂はマジだったんだ!」
「麻衣ちゃん、大丈夫? 具合は悪くない?」
「やっぱり名浜さんは魔王なのよ!」
「ここにいる全員呪われたんじゃねぇの?」
「ヤベェって! マジヤバ! 先生に言ったほうがいいんじゃね?」
高橋さんたちに駆け寄って、慰めようとする女子たち。
自分も呪われたかもと自分の服をパンパンと払う男子。
笑いながら、友達の頭に手を伸ばし、名浜さんの真似をする人たち。
僕にはそのどれもが気に食わなかった。魔法? 呪い? そんなはずないじゃないか。
名浜さんが手を置いたら、高橋さんの頭の上に本当に黒いもやが発生した。
名浜さんが何か呪文を唱えたら、そのもやが変な声を出して消えた。
確かにそこだけ見たら、名浜さんが佐藤さんに魔法をかけたように見えるかもしれない。でも! でも、名浜さんはそんなことは絶対にしない。
「私の友達を馬鹿にするような真似は許さん」
「同じクラスにいて、毎日挨拶を交わすんだから、それはもう友達じゃないか!」
そう言っていた名浜さんが、クラスの友達に呪いをかけるなんて信じたくない。
「違うよ!」
僕は思わず、大きな声を出して立ち上がっていた。
目の前の席にいるタッくんが余計なことすんな! って言う顔をしていたけど、構うもんか。僕は言った。
「名浜さ……」
いや、違う。
「凰ちゃんはそんなことしない。みんな、転校してきたばかりの凰ちゃんにひどいよ!」
クラスのみんながざわざわする中、僕は教室を飛び出した。
名浜さんになんて声をかけていいかはわからない。わからないけど、なんとなくそばにいてあげなきゃって思ったんだ。
廊下に出ると、名浜さんはちょうど隣のクラスの扉の前にいた。
だれかと話をしているみたいだ。
佐藤さんから「転校して来なければよかったのに」なんて、相当ひどいことを言われたから、さすがの凰ちゃんでも泣いてしまうんじゃないかと思ったけど……。
表情は……ちょっと険しく、悲しいというよりは怒っている……ように見て取れた。
教室であんなことを言われて、その後すぐ、隣のクラスの誰とどんな話をしているんだろうと思って、僕は近づいた。
なんと名浜さんの前に立っていたのは、学校一のイケメン伊藤朱里雄だった。
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