詩集◆永遠の戦場

紅瑠璃~kururi

ローレライ

砲撃の音が遠のき

硝煙のにおいが薄れ

閉じた瞼が震えて

最後の息を吐いたあと


たおれた兵士のリュックの中で

日々を共にした詩集が

ゆっくりと冷えてゆく


春の風と

夏の香と

秋の光と

冬の勇気を

届けてくれた

一行一行が

消えてゆく



詩集を見つけた兵士は

汚れた指でページをめく


戦いに出てこの方

ずっと忘れていた

何かを思い出そうと

異国の言葉で書かれた

詩編の文字をつたなくたどる


丘を吹き抜ける風は

セイレーンの歌


兵士は目を閉じて祈る


詩集の持ち主をいたむかのように


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16818093077262981687

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