依頼主の転居先

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

 有井和己は汗だくになりながら赤羽駅の改札を抜けてロータリーへ出ると、正面に停まっている「キリギリス引越社」のトラックに近づき、助手席のドアを開けて「すみません、遅れました」と言いながら乗り込んだ。

 有井が音を立ててドアを閉めると、トラックは出発した。車内はエアコンが効いていて涼しかった。

「すみません、遅れました」

「電車、止まってたんだってなあ」

 助手席と運転席の間の真ん中の席で、左胸に「松阪大介」と名前が刺繍された引越屋の制服である作業着を着た男性が答えた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る