じゆうちょう

「神様なんていない」から始まる文章派生

 神様なんていないと思う。それが私の持論だった。

 こんな持論はありふれている考えだし、それに対して誰かが意見をすることはない。きっと、昔の世界だったのならば糾弾されることもあったのかもしれないけれど、私が今生きている世界はどこまでも平和で、他人の考えに対して享受の姿勢を見せてくれる。たとえ乱暴な思想を持っていたとしても、それが表立つことがなければ怒られることはないし、適当にのらりくらりと過ごすことができる。流石にそれが表面に出てしまえば、糾弾されることはあるのかもしれないけれど、思想の自由については保護されている。それを考えれば、私の思想は世界に守られているともいうことができそうだ。

 神様なんていないと思う。世の中ではいろいろな神様が信仰されている。そのすべての宗教を知っているわけではないし、それらについて語るつもりもない。それらを知りたいとも思わない。知っても、思想が享受されているこの世界で、私は文句を吐き出したくなってしまう。「見たことがあるんですか」とか「救われたこととかあるんですか」とか、そんな途方もない言葉をぶつけるかもしれない。もし、見たことがある人がいても、救われたことがある人がいても、私はそれを信じることができない。そんな人に対面したら、私は「精神科にどうぞ」とか、言葉を吐くんじゃないだろうか。それほどまでに、私は神様を、というか主に神様を信仰しているような人間を信じていない。

 世の中は嘘で満ちている。嘘で満ちているから、神様だって嘘なんだと思う。そうあってほしいように思う。それが私の、独自の宗教観とも言える考え。

 別に、自分に関係しない事柄なら、たいして考えなくてもいいことかもしれない。だけど、この世界を生きていくうえで必ず触れる概念だと思うし、それから逃れることは誰にだってできない。

 ほら、例えばクリスマスについてはどうだろう。あれはキリストの誕生日? とかなんとかって言うけれど、私はあの日を楽しみに過ごしていた時期がある。サンタクロースという神にも近しい存在を信じて、そうしてプレゼントがやってくることを祈るような気持でねだっていたことがある。

 更に例えば初詣だってそうだ。別に神様という存在についてを幼いころから信じていたわけではないけれど、家族によって神社や寺に言ったこともある。そこで儀礼的な挨拶を行い、そうして帰ったことがある。

 そういったイベントごと以外にも神様に触れる機会は多数に存在する。正直、今のところ思いつくのは先述の二つくらいだけれど、人とかかわれば神様について触れる機会は必ず出てくる。日本の歴史とかで聖武天皇に学習するときには、疫病に対して祈念という方法をとったこととか、もしくは世界史での宗教戦争だとか。それらは最近ニュースでもやっているような気がする。世界について、私は興味ないからその詳細を知ることはしないけれど、世界には宗教がありふれている。宗教というか、神様を主としたらしい考え方がはびこっている。

 でも、そういった宗教ってひどく身勝手じゃないかなって、そう思うからこそ疑いたくなる気持ちがあるのだ。だって、そうじゃないか。あれを人と言っていいのかはさておき、あの人たちは私たちが苦労していても、特に救うということはしない。高みの見物を決めておいて、いざ人が苦労する場面になったら「試練」とか言って誤魔化すのだろう。なんとなく頭の中で想像する神様についてそんなことを思ってしまうから、神様の存在は嘘だと仮定してしまう。

 もし、神様というものが存在するのならば、貧困な人なんていないだろう。本当に全能だっていうのならば、矛盾なんてものは存在しないだろう。パラドックスなんて存在せず、そのまま降臨するのだろう。

 矛盾によって自壊する神様なんて、そんなの神様じゃない。神様は崇高な存在であるべきで、人間の身では収まらない奇跡を行うべきなのだ。そう思うからこそ、彼らが存在しているのならば、きちんと奇跡を執り行ってほしいと考えるのだ。

 そんな話を友人にしたことがある。そんなときに帰ってきたのは「神様を本当に信じているんだね」って言われた。そんな話をしたつもりはないけれど、きっとそれは彼女の言うとおりだったように思う。

 私は、私の神様を信じているからこそ、神様なんていないと、そう思っているのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る