第三十六章 幼馴染による追跡
「お前達は早く逃げろ!ここは俺がやる!」
「馬鹿!お前は牢屋こじ開けて火傷してんだぞ!?そんなことしたらどうなるかわかるだろうな!?」
俺の問いにドライスは見向きもせずに言う。
「俺は初めてお前達を見た時に思ったんだよ。こいつらは普通の冒険者ではない。なぜかそう思った。こんなにピッタリ的中するとは思わなかったけどよ。だからお前達をこんな所で死なせる訳にはいかねぇんだよ!」
KAIZINと対峙するドライスが言った。俺はドライスの背後に周り、攻撃を仕掛けようとしたKAIZINを蹴り飛ばした。
「お前……!」
「お前のさっきの言葉……。そっくりそのまま返品してやるよ……!」
「俺達はドライスと
「おう!」
「ロック!」
KAIZINの地面から岩が生成され、足は固まった。KAIZINはもがくが岩は微動だにしない。
「ロックは地下深くほど威力が高ぇんだよ!このそれもこれもこの長ったらしい階段を作ってくれた怪王人さんに感謝だな!」
「チッ!!」
怪王人は舌打ちをすると瞬間移動系呪文を使った。わーぷなどの類だろうか。とりあえずアイツ!詠唱使わないだと!?
「アイツ逃げる気だ!」
「でもまだたくさんいるわ!まずはこいつらを……」
「いくら倒しても意味がねぇだろ!」
「それもそうだが……。どうする?」
「まぁ、まかせろ」
KAIZINに切りかかってから彦一が言う。俺はKAIZINの数を数える。1,2,3,4,5,6……。ざっと三十体ってとこか……。
「ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!」
俺はロックでKAIZIN全員の足を固めた。
「俺は先に行く!」
俺は怪王人を追いかける為に階段へと向かった。
「私も行くわ!」
「は?」
「非力な魔法使い一人じゃすぐにくたばるでしょ?」
からかうような笑い方で言った。
「……まぁそうだな」
俺は階段を上がりながら皆に言う。
「誰一人死ぬんじゃねぇぞ!!」
「そんなこと言われなくてもわかってるさ!この俺達が負けるとでも?」
彦一が調子に乗ったように言う。この館で初めて会ったはずなのにいつの間にか信頼できるようになったんだな……。
「いくぞ。急いで上がらねぇとな」
「下りではぁはぁしてたやつが言うことなの?」
「……それは何にも反論できねぇな」
「私に任せて!」
入夏は俺を掴むと抱いて階段を上がり始めた。
「ちょ!?待っ――!?……何してんだよ!?」
「こっちの方が上がるのが楽でしょ?追跡だけに疲れちゃ困るのよこっちは!」
「お、おう。そうだな……!」
やべー……。なんでこんなに心臓がバクバクするんだ?意味わかんねぇ!?何してんだよ心臓?何がしたいんだよ!?俺は……緊張してるのか……?怪王人に……?いやいやんなわけないだろ!……ならなんなんだ?
「比奈斗、前!任せていい?」
「ん?ああ……!」
少し時間がたった時入夏が走りながら言った。前方には無数のKAIZINがいた。
「スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!」
俺は抱かれた状態でゴーレムを五体生成した。階段がもとからぎゅうぎゅうになってるがゴーレムはKAIZINを押し出して道を作った。俺達は後ろから着いていく。これで前方は安全だろう。俺は後ろに杖を構えて俺達を追跡するKAIZINに備えた。
「そろそろじゃないの?」
「だろうな」
下りは歩いていたため、入夏の脚力では上がるくらいは容易いのだ。
ていうか何で俺が知ってそうに言ってんだ……。
その後前方に光が現れゴーレムが飲み込まれて消えていく。
「出口だな!」
「急ぎましょう!」
俺達二人は地下深くから出てきた。そこは行く時と同じの光景だった。俺は少し散乱した倉庫を探る。
「なんか使えるもんねぇか?」
「あったわよ!」
入夏が見つけ出したのはマジックゼリー、
◆
「そういえば一応みんなのステータス見せてよ!」
「私はいいけれど……。どうする
「ちょっと……、それは……」
「ということで沙羅子はやめてあげてねー」
「わかった」
「わしらは別に構わんぞ照馬君」
「私も構いませんよー!」
僕はステータス覗き見メガネを取り出した。ずっと使ってるから貰っといてよかった……。とりあえず僕はおじいちゃんと上吉さんの順番でステータスを見た。
Lv.62
HP 1208
MP 4312
攻撃力 168
防御力 60
素早さ 31
魔力 4236
才能 雷系魔法(大)、炎系魔法(小)、水系魔法(小)、氷系魔法(小)
特技
魔力高っ!?HPと素早さは颯さんほどではないけど攻撃力高くない?あと氷魔法ってあったんだ。次は上吉さんだ。
Lv.65
HP 3601
MP 2647
攻撃力 592
防御力 1
素早さ 13
魔力 2680
才能 光系魔法(大)
特技
攻撃力高っ!?そして防御力の低さはまさかここから……?あと光を全部使えるのか……!
この二人素早さ低すぎない?次は鮫子のステータスを見た。
Lv.25
HP 1034
MP 361
攻撃力 136
防御力 43
素早さ 416
魔力 349
才能 水系魔法(大)、雷系魔法(小)
特技
入夏よりはステータスは低いけど結構バランス的だ。やっぱり入夏の言ってる通りアクウルの人って水系魔法使い多いな……。次はシャチ蔵だ。僕はシャチ蔵の方を見るとサイドチェストをして構えてる。
Lv.20
HP 831
MP 0
攻撃力 367
防御力 103
素早さ 110
魔力 0
才能 水系魔法(小)
特技 なし
レベルは低いけど攻撃力は入夏以上ないか?レベルがさらに高くなって暴走なんてしたら大変なことになりそう……。
「どうでしたかー?」
「えっと、攻撃力がかなり高かったよ!」
「ありがとうございます!鮫子さんに『ちゃんと特訓しないと私の攻撃力を超えられないぞ』って言ってるんです!……でもまだ超えられてないって聞いていて……」
僕は鮫子さんに視線を送る。視線に気づいた鮫子さんは誤魔化すように口笛をした。全く吹けてねぇけど……。
ていうかこのステータス以上の攻撃力とか言い張るとかどんだけ攻撃力盛ってんのこの人?
「あと到着まで一時間くらいかかるから準備しといてねー!」
「はーい!」
議題を変えると何事もなかったかのように返事をする鮫子さん。この人はだめだ……。
◆
「開いたぞ!」
俺は金庫の扉を開けるために10000通りの番号を入力していた。そして今、9135回目の入力でついに扉を開けることに成功したのだ。
「早く入りましょうよ!金庫なんだから財宝よ!財宝!」
「少し休もうよー」
「多香子!逃げろ!」
目の前には少し見た目が違うKAIZINがいた。多香子は突然のことに体が動いていない。
「ギャァァァ!!」
KAIZINが叫び声をあげながら飛びかかったその時――
「危ない!!」
聞き覚えのある声とともにKAIZINの頬に拳が突き刺さりKAIZINは吹き飛ばされた。多香子を救った者は……
「魔王!」
「すみません。少し道に迷ってしまって……。さらに他の生存者達といろいろありまして遅れてしまいました」
「ありがとう……魔王!」
俺は魔王にお礼を言う。しかし魔王は平然とした顔つきで言った。
「お礼には及びません。これが私の仕事なので。あと少し下がってください」
魔王は俺達を後ろに下げさせて先ほど殴り飛ばしたKAIZINを見て身構えた。
「奴らは不死身なのですだから逃げましょう!」
俺達は魔王の話を聞いて階段に向かった。しかしKAIZINは物凄いスピードで俺達の前に立ちふさがった。
「ならあっちに行くしかないよ!」
「そうだな……!」
志埜の案に賛成して俺達は二階へ続く別の部屋へ向かう。俺達はあそこから二階に上ったからだ。
◆
俺と入夏は倉庫で見つけたマジックゼリーを使ってMPを満タンにした。これで大丈夫だ。
「入夏、どこに奴は消えたと思う?」
「うーん、そうね……」
入夏しばらく考え、言った。
「やっぱり二階じゃないかしら?」
「そうだよな……。なら行くか、二階に!」
俺達は倉庫から出た。俺はこの時、倉庫の変化に気がつけなかったことを後悔することになることを知らなかった。
俺達は倉庫から出るとすぐに二階へ向かった。階段に居たKAIZINはどこかに居なくなっていた。俺達は二階に上がった。真ん中の部屋、金庫部屋のロックが開いていた。
「やっぱりここに逃げたんじゃないか?」
「入りましょう!」
俺達は思いっきり扉を開ける。金庫部屋は様々な財宝などが置いてあった。
「すごい!!」
「これ売れば結構儲けれるんじゃないのか!?」
「後ろ!」
俺が財宝に夢中になっている時に入夏が叫ぶ。しかし俺が後ろを向く前に首元に激痛が走った。俺は地面に倒れる。そして後ろにはKAIZINがいる。入夏が殴り掛かるが手で止められ手刀を食らい気絶した。俺の意識も段々と薄れた。
◆
私が目を覚ますとロープで全身が縛られていた。隣には比奈斗の姿の見られる。そして目の前には怪王人が仁王立ちしていた。
「どこよ此処は!?」
「自分が閉じ込められたところも忘れちまったのか!」
「…………!」
私が周りを見回す。そこはドライスが破壊したはずの部屋だった。鉄格子は撤去されており近くには私たちが使っていた日用品がある。
「これからお前達を捕食する」
「何言ってんのよ!?あんた!!」
「言った通りだ。お前も聞いたはずだ、人間は奴隷、もしくは食料だ。残念ながらおいしく調理できるような調味料がないから一口で終わらせるがな!」
「……なんですって!?」
「さぁどっちだ?先に食われるのは……?」
「そんなの決めるはず――」
「俺が……先だ……」
声の先を見ると目が覚めた比奈斗が居た。私は慌てた口調で言う。
「あんたがいちいち先に食われる必要ないでしょ!」
「ならお前が先に食われる理由もないだろ?」
「……ええ」
「なら俺で決まりだ」
「アンタを見殺しにするなんてできるわけないでしょ!?」
「なんでだ?」
「なんでってそれは……!」
私の中で思い出が蘇る。初めて会った時、うまく話せるようになった時、仲が悪くなってしまった時、また再会した時。泉のように思い出が湧いて出てくる。そしていつの間に目の前は歪んで見えた。
「何泣いてんだお前?」
比奈斗が少し慌てた表情で言う。
「もうこれ以上心配かけれねぇだろ。そして俺達にはアイツがいる。お前はアイツを信用してないのか?仲間だろ?」
脳裏に浮かんだのは薄紫色の一人の世間知らずの顔。アイツなら……!もしかしたら……!
「いつになったら決まるんだぁ?まぁいい、最後に話すだけの猶予を与えよう」
怪王人はめんどくさそうに言うと明後日の方向を向いた。これはかなりのチャンスだ。私は比奈斗に寄ると言う。
「俺に少しいい考えがある」
「なによ?いい考えなんて」
「(お前は俺が食われるときにそこにあるランタンを俺に向かって蹴ってくれ。それだけで大丈夫だ。後は俺がなんとかする)」
「(もし失敗したらどうするのよ?)
「(俺がロックでお前の縄を切る。いいな?)」
「(……わかった。やってみる)」
「話は終わったかぁ?」
「ああ、俺が先だ!」
「ああそうか。なら永遠にさようなら!!」
怪王人は比奈斗の頭部を掴むと宙に飛ばした。真下に怪王人が口を開き構える。そこへ私が近くにあるランタンを比奈斗の方向へ蹴った。
「何っ!?」
怪王人が咄嗟に光を見て目を腕で覆う。そして比奈斗はニヤリと笑う。そして動こうとしたその時――。
「――っ!?」
何者かが比奈斗を掴んだ。それは怪王人から生えた触手だった。
「そんなすぐに騙されると思ったか?俺様の聴力をなめんじゃねぇよ。おまえたちの作戦なんぞすべて聞こえてたぞぉ?それじゃあいたっだきまーす!」
「そんな!?比奈斗の作戦に失敗は聞いたことないのに!?」
比奈斗はもうあきらめたのか何もせずに口へ運ばれて行く。そしてそのまま私の幼馴染は化け物の口の中へ消えていった。
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