第三十三章 無理やり技にする!
「ほれ、連れて来たよ」
王様は二人の女性を連れてくると僕達へ言った。一人は空色の髪をしたボブの女性だ。身長は入夏より少し高いくらいで年齢は僕より少し高いと思う。女性は僕達を見るなり自己紹介を始めた。
「私の名前は
鮫子が紹介すると僕より小さい小柄な少女が出てきた。髪は白色、どうやら彼女が沙羅子らしい。
「よ、よろしくお願い……します……」
それだけ言うと鮫子の後ろに隠れていった。
「普段からこんな感じだから気にしないでね~。……それで何か用事があるから呼んだのでしょ?」
「う、うん。そのことなんだけど……」
僕は軽く自己紹介をすると現状を説明した。
*
「なんですって!?入夏様が!?」
「はい。そうなんですよ……」
「それで今わしらで攻め込もうとしているんじゃが……。ついてきてくれんか?」
おじいちゃんが説得する。鮫子さんは少し考えてから言った。
「私達でいいならいいけど……。本当にいいの?」
「うん!一人でも人数が多い方がいいからね!」
「なら早速出発じゃ!」
上吉さんが言った途端――
「ま、待って!」
鮫子さんの後ろから声が聞こえる。そこから顔をのぞかせたのは沙羅子だった。
「せめて……準備をさせて……」
「急にどうしたのかと思ったらな―んだ!いつも通りのことか!」
「「「⁇」」」
僕達は全く理解できない。鮫子さんは僕達に気が付くと言った。
「この子ちょっと心配症でね……準備に二日ぐらいかかっちゃうんだ!」
「準備に……二日……?」
「……まぁそれくらいがいいんじゃないかのぉ」
僕達が困惑している中、おじいちゃんが隣でつぶやいた。
「本当に!?」
「ああ、少し修行とかしとけばいいじゃないか」
「……まぁそうだね」
「なら三日後にここにまた来てね!それじゃあ!ほら沙羅子も行くよ!」
沙羅子の手を引っ張りながら鮫子さん達は奥の部屋へ消えていった。
「どうする?」
「わしら爺は少し魔法を慣らして行くから照馬は他でなんかしとけ」
「……雑だなぁ」
おじいちゃん達が去って行ってから僕は呟いた。
*
「……戻って来たか」
僕は
「ほかの奴らはどうした?」
「それが……。まぁいろいろあって……」
「そうか……。そのためにここに来たのか?」
「うん!」
「お前のステータスでダメなのか……。そういえばあの剣はどうだった?」
「めちゃくちゃ使いやすかったよ!ありがとう美味呼さん!」
「お安い御用だ」
僕は美味呼さんにKAIZINの特徴や動きなどを教えた。
*
「そいつらはおそらく
「キメラ……!」
「キメラは闇系魔法を扱える者のみ生成できる。そして体力が無限だから殴られても痛くも痒くもない。しかし生成にはかなりのMPを消費するがな……」
「それをあんな数って絶対に勝てるわけないじゃないか!」
「だが魔力の発生源。……つまり術者を倒せば魔力が途絶えてその魔物は死ぬ」
「ということは……。奴らを作ったのは……!」
「そう。お前が言う怪王人って奴だ。奴を倒せばあの館の魔物はすべて死ぬ」
「ならいっそのこと館ごと破壊しちゃえばいいんだね!」
「馬鹿か!そうしたら仮に生存者がいたら生存者が全員死ぬだろ!」
「そうだったそうだった」
チッ。館ごと破壊はさすがに無理か……
「でもキメラを盾にして襲い掛かってきたらどうするの?絶対に勝てないよ!」
「そのために作られた技がある……。覚えていくか?」
「もちろんさぁ!」
僕と美味呼さんは準備をすると二人とも剣を構えた。
「この技はキメラにしか通じない。故に今回はコイツを使う」
美味呼さんが連れてきたのはライオンのような怪物だった。尻尾はドラゴンのようで胴体には羊の毛のようなものが生えている。……これは……強いの……か?
「どうやら魔王の失敗作のようでそこら辺を歩いていたから俺が保護している。今回はコイツを殺すことだ」
「へー。それでどうやるの?」
「キメラはものすごい再生能力と体力で無敵とされている。それを超えるスピードと攻撃で叩くだけだ」
「超えるスピードと攻撃で叩く……?」
「二匹いるから手本を見せる」
美味呼さんが剣を構えると急に姿が消え、剣の残像が高速で刻まれた。キメラは血を吹き出しその場に倒れた。
「……すげぇ!」
僕は高速な技を見てできることは唖然としているだけだった。
「どうだ?コツをつかめばすぐだぞ?」
「できるなら教えてください!」
僕は土下座をして教えを求めた。美味呼さんは困った顔をして返事をした。
「いいけど土下座はやめろ。俺は土下座は好きじゃない」
「えー!いいじゃないですか!なんかよくないですか?」
「まだ言ってんのかよ……。まずは高速で動けるようにする特訓をするぞ!」
「なにするの?物凄く難しい修行とか?」
「……ただの反復横跳びだ」
「え……?」
僕は口をあんぐりと開いて固まる。それに全く気が付いてない美味呼さんは線を地面に剣で描いて僕をそっと線の上に移動させていく。
「なんでただの反復横跳びなんかするんだよぉ――――――――――――――――――!!!」
僕は美味呼さんに反復横跳びをさせられながら叫び続けるのであった。
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