第二十七章 臭ッ!?

「どうか無事でありますように……」

「俺はここでここで待っているからいつでも呼べよ!」


 穴に入れないドライスは秘密基地で待機する。準備が整った僕達は拠点を出てKAIZIN達にバレないように穴のある場所までたどり着いた。

「中に入りましょう」

 入夏が一番初めに入った。しかし中には誰も居ず、階段だけがあった。

「階段?」

「とりあえず降りようぜ」


 比奈斗に言われて僕達は階段を降りた。階段を降りるとそこは下水道だった。

「下水道か……臭ッ!?」

「彦一の言う通りこの臭いはキツイな……」

「それにかなり入り組んでますね……」

「ここを探索するのはいろいろと大変じゃない?」

「……そうだな」

「ゴーレムが臭すぎて壊れた説もあるわね」 

「臭すぎて壊れるものなの!?」

「ああ、あのゴーレムは一応嗅覚もつけていたからな」

「ゴーレムが壊れるくらいならやばくないか?」

「颯さんの言う通りだよ!ドライスには悪いけどこれは臭すぎるよ!」

「みんな!戻るぞ!」

 僕達は下水道が臭すぎるので撤収することにした。



 比奈斗と僕は下水道臭すぎ事件について話した。

「下水道か……まぁ臭すぎることはわかるが……ゴーレムでも無理か……」

「何か対策はねえか……」

「わかった!ガスマスクなんてどう?」

「でも入夏様、そんな物どこから誰が持ってくるんですか?」

「え?照馬配達員でしょ?アクウルの城の倉庫にあるから!」

 


「……わーぴー」



 

 僕はアクウルの城まで行った。城には王様が座っていた。

「あれ?照馬君じゃないか?どうしたんじゃ?わしになんか用か?」

「倉庫ってどこですか?入夏からある物を取ってきてほしいって言われたからこっちに来たんですけど……」

「なんじゃそんなことか!こっちへいらっしゃい」


 王様は僕を手招きする。僕は王様についていくと扉が見えてきた。

「ここじゃよ。中の物は自由に使いなさい」

「ありがとう!王様!」

「いいんじゃよ別に。また困ったことがあったら遠慮せず頼みなさい!」

「はーい!」

「わしは忙しいから戻るぞ」


 僕は倉庫へ入った。倉庫にはたくさんの棚が並んでいてグループごとに分けられていた。わーぷ君、自転車、100円高いただの薬草、ブタンクの毛皮、暗視ゴーグル……

「すげー!それでガスマスクは……」


 ガスマスクは装飾品の所にあった。他にもブタンクのマスクや強そうな鎧などが置いてあった。僕はその中から「念の為」と暗視ゴーグルを取った。これで大丈夫だ。



「わーぴー!!」



 僕が館に戻るとみんなが駆け寄ってきた。

「取ってきたよ!!」


 ガスマスクを見せつけると少し安心したような表情になった。

「何かあったの?」

「……増えた」

「何が?」

「KAIZINが十体ほど増えたんだ……」

「え?」

「これじゃあ闇雲に動くことができない……」

「何か対処法とかないの?」

「今はだれも思いついておらん」


 颯さんの言葉で僕はふと思いついた。

「わかった!!」

「なんだよ急に!?何か思いついたんなら教えてくれ!」



「わーぴー!!」



「「「「置いていくなぁ――――!!!」」」」

 僕はアクウルの倉庫に戻った。そして片っ端から素材を集めてあるものを作る。これで堂々と廊下を歩けるだろう……と思いながら。


◆ 伊予島いよしま竜弥りゅうや ◆


「お兄ちゃんあまりにも臭すぎるよぉ」

「大丈夫だ!もうすぐだ!」

「本当に大丈夫なのかしら……」

 俺は伊予島 竜弥いよしま りゅうや、KAIZINの話を聞いて肝試しとしてこの館に来て閉じ込められたのだ。この後ろで喚いてる奴は俺の弟、伊予島 志埜いよしま ゆきや だ。少し情けないが俺の自慢の弟だ。その後ろにいる上品そうな少女は功刃くぬぎ 多香子たかこだ。親が金持ちの為今回魔王をボディガードに連れて来てたんだが……どこかではぐれてしまった。そして俺達は下水道を歩いている。


「ほら!出口が見えてきたぞ!」

「でも……もう……ダメだ……」

「しょうがねぇ奴だな……」


 俺は志埜をおんぶすると出口に向かって走った。

「もう!竜弥!おいてかないでよね!」

「ごめん多香子。こいつが心配でな……」

「気持ちはわかる……けど……忘れてもらったら困るの!」

 俺達はそんなことをしていると下水道を出ることができた。路が入り組んで居た為10分ほどかかってしまった。


「おい大丈夫か!?志埜!」

「しっかりしなさい!」

「う……うう……」


 志埜が目を覚ました。

「ここは……?」

「下水道を抜けたところだ。ほらあそこに入口があるだろ?」


 俺達は向かい側の部屋に出ることができたのだ。こちらの部屋は川に挟まれているところにあり、元々は行けない場所だったのだ。

「誰!?あれ!?」

「志埜!どうしたんだ!?」


 志埜が指を指した方には巨大な緑色のドラゴンがいた。

「KAIZINの仲間なのかしら?」

「一応隠れるぞ!」

「わかった!」

 俺達はこの部屋で少し身を隠した。

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