War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲~
改案堂
第一章 War Ensemble/ウォー・アンサンブル
001 tr01, welcome to the other side/ようこそ、こちら側へ
第一章:chapterI War Ensemble / 争いの多重奏
どおおん!どがああぁぁぁぁんばりばりばりごろごろごろごろごろ!
「いってえぇぇぇええええ!!!」
突然の轟音と突き抜ける感覚、続いて叩きつけられる衝撃で再び気が遠くなった・・・
――――――――――
全身の、特に頭と首の痛みで目が覚めた。
なんだよなにが起こったんだ・・・あっ、地震か?!関東大震災?!!
いや違った、まったく見覚えのない川原でそこらじゅう血みどろ、これまた全く覚えのない身体感覚で大岩に頭をつけもたれかかる自分がいた。
ああ、これ転生的なやつか?
つか痛てぇ、身体中痛てぇ。
しばらくアチコチの、特に頭の痛みで身動きとれなかったが少し頭痛も収まったので、気をそらすために自分のことを思い出す。
オレは加藤 化殷/かとう けいん、アラフォーのおっさんだ。関東の片田舎で、嫁さん、10歳と7歳の息子達と暮らしてる。
技術系の工場仕事を愚痴りつつこなしてる。
下の子の入学式も無事終わり、昨日は日曜日だったからクリーニングに預けてた家族の服を取りに行き、すっかり日も長くなったなぁ、なんて嫁さんと晩酌しながら語りつつ昨晩も普段通り寝た。
そう、とりとめのない普段通りの日常だったはず。
それがなんだ、突然だよ突然!
身体からして、異常にデカくないか?プロレスラーか??ザンギエフかってくらい全体的にでかいぞ!?
しかも全身血まみれ傷だらけ、アドレナリンが切れた所為か大きい傷や打ち身が再びズキズキしてきやがった。
骨折した感覚のないことだけは救いだ。
目に血が入りどうも見えにくいと思ったら、たぶん額もザックリ切れてやがるな。
イテテ・・・
それからまたしばらく。
最初に気が付いたときは明け方だったか肌寒かったものの、再度気が付いた頃には日も昇り暖かくなってきた。
てことはそこまで失血してない、冬の気候でもないようだ。
大量出血すると寒くなるからな。
改めて周囲を見回す。
川原だ。
開けてはいるものの、人工物は全く見当たらない。
川幅は広く、また流れは緩やか。
その先は森になっているところも多く・・・あ、あすこだな。
明らかに樹木が直線状になぎ倒されてるところがある。そしてその直線の先は、血まみれの川原を通ってオレの今座っている大岩へ。
ああ、あの先の空から降ってきたのかオレ。
実は宇宙人だった・・・?
いや冗談抜きで、よく死ななかったな。頑丈な身体で良かった。
昔バイクの事故でタクシーの側面にロケットダイブして死にかけたが、それより苛烈な勢いだったろうに。
それから、気を失ったまま川に突っ込まなくてよかった。
間違いなく溺れるぞこれ。
いや意識あれば泳げたけど。
しかし静かだ。
ヒト気はもとより、ケモノもいるのか怪しい。
植生や囀る鳥の声、周囲の匂いからも、明らかに日本じゃなさそう。
昔ドイツ行った時の雑木林、あれに近い感じか。昼間っから野外のビアガーデンで呑んだくれてた時、ちょうど机の近くがこんな感じだった。
ならばよくあるパターンの中世ヨーロッパ的な異世界転生でも起こったのか、ならもう少し穏やかに着地させてほしいモンだが。
・・・ちょっとだけ。
こっそり「ステータスオープン」と呟いてみた。
当然、何も起こらない。
次は大声で「ステータスオープン」!
「オープンウィィンドゥ」「ストェェイトゥアスッ」「スキールはつどー」「マジーックせんしーんぐ」「開けーゴマッ」「呼ばれて飛び出てジャジャーン」
思いつく限り試したものの、川のせせらぎしか返事はない。
ああ恥ずかしい、人のいないところで良かった・・・
――――――――――
いい加減血糊が乾いて身じろぎするたびにゴワゴワするので全身洗いたい。目の前川だし。
痛む身体を少しづつ動かし、流れの緩やかな川面の辺りへ向かう。
関節や骨はヤラレてなさそうだが、とにかく各パーツがデカい。
知り合いで2mクラスの野郎もちらほらいたが、それを上回る勢いだ。
その割にはすいすい動ける。
目線は明らかに高いので、脊椎接続の大型ロボットでも乗ったらこんな感じだろうか。
まだ首が痛いので全身見渡したりできないが、ちゃんとぶら下がってる感覚はあるのでオトコのこ確定。
残念。
歯を食いしばって浅瀬から膝上あたりまで水の流れる辺りへたどり着く。
傷口に引っかからないよう簡単なつくりの貫頭衣を点検し、ヘソのあたりで紐を結ぶ式のこれまた簡単な7分丈のズボンと共にサンダル履いたまま腰まで入水。
まずは下半身をまさぐる。もちろん、こびりついた血を拭うため。
ゴツい。
なんとなく違和感。
あれ?そういやスネ毛ない?陰毛も生えてない?
あっちもこっちも毛がない?怪我だらけなのに??
ハッ、もしや!!
痛みも構わず頭に手をやるとそこには・・・
・・・髪の毛が、なかった。
ションボリ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます