第236話 帰還者の事情
「あんたも、異世界帰り……
俺の部屋には、俺と開田のじじいがいる。
「うむ。そうじゃ」
「……なるほど。あんたが尋常ならざる権力と金を持ってるのは、異世界で得た恩恵のおかげってことだな」
「そういうことじゃな。わしは向こうの世界で、特別な【目】を、最高神さまから賜ったのじゃ」
「最高神……?」
神……あのくそったれ女神のことだろうか。
「わしの目は、山で暮らしてる最高神さまからったのじゃ。その御方もまた、わしらと同じ、元は異世界転移者だったそうじゃ」
「は……? なんだそりゃ、人間が……神……?」
意味がわからん……。
「わしらと同様、地球からあちらに招かれた後、厳しい修行を経て、最高神の座に上り詰めた、と眷属の御方がおっしゃっておった」
あ、じゃああのくそったれ女神とは別の神ってことだな。
にしても……。
「あの世界って、俺たち召還勇者にも、転移者がいたんだな」
目の前のじいさんと良い、山で暮らしてる最高神といい。
「うむ。あの世界は、定期的に、こっちの世界から人を呼ぶそうじゃ。しかも、わしらと違う時間軸、世界線から、人を呼ぶと」
「違う時間軸と、世界線……?」
「そう。あの世界とこちらの世界は、時間の流れが異なるのじゃ。そして、あらゆる世界線から人を呼ぶ。
現に女神さまは、わしのいた時代から見て、未来の世界から来たとおっしゃっておった」
「……あんた……いつ頃向こうに行ってたの?」
「もうだいぶ昔のことじゃ。戦前のことじゃ」
めちゃくちゃ昔に、このじいさんは異世界いっていたらしい。
でもじいさんの会った女神は、未来、つまり現代に近いところから、異世界に招かれたという。
「わしは戦前、ラバウルに飛ばされての」
ラバウル……聞いたこと無い。
ただ、戦争中に海外に飛ばされたってことだろう。
「戦地で傷を負ったわしは、死にかけておった。しかし気けば、わしは楽園におった」
「楽園ねえ」
「うむ。そこで山暮らしの最高神さまに拾われ、傷を癒やし、チカラを貰って、こちらの世界に送り返してもらったのじゃ」
「んで、こっちに戻って、異世界のチカラを使って、財を築き上げたと?」
「そういうことじゃな」
俺がその優しい女神とやらにあえなかったのは、女神がいた時間じゃ無い時代に飛ばされたってこと……?
……なんだか頭が痛くなってきた。
「ようするに、あちらとこちらは、違う世界だし、時間の流れも異なる。こちらの人間が、向こうの過去に飛ばれることもあるし、未来に飛ばされることもある」
したり顔でまとめられたが、正直よくわからんってことしかわからなかった。
ただ……一つの懸念点が浮かび上がった。
……俺、エリスたちの居た時間軸の、異世界に……戻れるだろうか。
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